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リプレイ記:月歌を紡ぐ者たちの記事一覧

第三九話:『緋桜悲伝』 3 

 ハマオ村での三回目の朝、出遅れて起きだしたルナは神妙な面持ちで仲間たちに告げた。

「……この村に来て三度、夢を見ました。初めは親しい者が殺される夢。次は親しい者に殺される夢。そして昨日は……」

 ルナは夢の中で繰り広げられた王国騎士と妖魔の話を、要点を逃さずに話した。
 緋桜姫と呼ばれる妖魔が王国騎士に討伐された事、妖魔を退治した騎士は捨て身ではなく数で圧倒していた事、最初に派遣された騎士の名はアルフレッドといい、緋桜姫を愛していた事、

「――そして、アルフレッドという騎士はアーノルドにそっくりでした。瓜二つと言っても過言ではありません」

「……、」

「これが私の頭の中で作られた妄想の物語である事は否定しません。しかし、あまりにも現実的リアルで、これまで集めてきた情報やバリーの出した推論に近すぎるのではないかと……」

「逆に。集めた情報と俺の推論を聞いたからこそ、そういう夢を見た可能性もある」

「分かっています。だから否定はしません。もし、何か解決の糸口になりそうな情報であれば使ってください」

 顎に手を当てて、バリーは考え込んだ。
 以前にも悪魔に魅入られた母を救いたいと願う少女の霊に頼られ、五月祭では吸血鬼連中に目をつけられ、とある屋敷の人間を祟りつづけたバンシーを叱咤し、魂を鎮めたのは他ならぬルナだ。
 もしかしたらそういった手合いに絡まれやすい体質になっているのかもしれない。

「どちらにせよ、アーノルドとは話をつけなくちゃならない」

 心配ではあるが、不確定すぎる議論で時間を浪費するわけにもいかない。
 コヨーテたちは身支度を整えて村長宅へ向かった。
 わずかもせず村長宅に辿りついたが、

「もういい! あんたたちは何も分かっちゃいないんだ!!」

 唐突に扉を開けて駆け出していったのはアーノルドだった。
 走り去っていく彼を目で追いかけ、深くため息をつく村長の姿もある。

「やれやれ……アーノルドには困ったもんじゃ。何度言い聞かせれば分かるのか……」

「何かあったのか?」

「いえ、大した事ではないのですよ。先ほど飛び出していった若者……アーノルドといいますがな。彼が水源地に行きたいと申しまして。あそこは古来より聖地として崇められているので、おいそれと入らせるわけにはいかないと言って聞かせているのですが、聞く耳を持ちませんで」

「……それはもしや、緋桜姫という妖魔が封印されている場所ですか?」

 ルナの問いに、村長は片眉を上げて反応した。

「おや、村の者にでも聞きましたか? その通りです。かつてこの地を支配した邪悪な妖魔を封じている祠です。特殊な結界が張られておりましてな、魔物などの類はまったく近寄れない。ゆえに聖地と呼ばれておるのです。わしの家は代々あそこを管理しておりますが『何人たりとも近づけてはならぬ。破りし時は妖魔の封印が解け、災いが降りかかるであろう』と言われているのです」

「……本当にそうかな」

「何ですと?」

 聞き捨てならない、と村長はコヨーテを睨む。
 どうやら村長としての責務を果たす事に関してはそれなりのプライドを持ち合わせているようだ。

「ひとつ聞きたい。アーノルドの先祖は騎士の家柄か?」

「……ええ、確かにアーノルドは妖魔討伐の騎士アルフレッドの家柄です」

「やはりか」

 コヨーテはバリーを見て、彼も察した様子で頷いた。
 アーノルドが知っている『何か』とは有益だとか無益だとか、そういった次元のものではない。
 彼は核心に迫る情報を持っている。

「おそらくアーノルドは水源に向かうはずだ。オレたちも行くぞ」

「なっ――冗談じゃない! 下手に聖地に行って、もし封印が解けでもしたらどうするつもりなのです! 伝説通りならわしらは妖魔に皆殺しの目に遭うかもしれん……!」

「今この村に起こっている霧の発生と原因不明の病の流行。これが妖魔復活の前兆だとは考えられないのか?」

「……馬鹿な。有り得ん。わしの家は代々あの地を護ってきているのです。復活など有り得ない」

「昨日、オレたちは妖魔の群れを退治したが、霧は晴れたか? 病は癒えたか? 他に原因があるのは理解できるだろう?」

 言葉を詰まらせた村長に、後を引き継いでバリーが付け足す。

「あんたの一族が代々護ってきたあの水源地が最も霧が深く、そして伝承の通りであれば魔素を含んだ霧を発生させ、村人に病を振り撒くほどの呪いを流し続けられる存在があの地に眠ってるはずなんだ。あんた自身が言ったように他の魔物はあそこにゃ這入れねぇんだろ? だったら考えられるのはひとつしか残っちゃいねぇよ」

「ぐぐ……!」

 もはや唸るしかなくなった村長は、

「とにかく聖地に行く事は絶対に許さん! 村を滅びさせるつもりはわしらにはないのですからな!!」

 その一点張りで喚くだけだった。
 代々勤勉に護り続けていた祠の封印が何の落ち度もなく壊れそうになっている。
 その事実を認めたくないだけで、村人に降りかかる危険に対処しようともしない。

 これ以上話しても時間の無駄だ。
 村長の罵声を背中に浴びつつ、コヨーテたちはその場を後にした。

「よっしゃ、とっとと水源地に向かおう」

「その前にアーノルドに話を聞きてぇ。あいつの家に向かおうぜ」

「なんで? すれ違っちゃわない?」

「あいつが水源地に向かった確証はねぇだろ。仮に決意したとして、妖魔が復活しかけている場所に手ぶらで行く馬鹿はいねぇよ。身支度くらいはするぜ」

 納得した『月歌を紡ぐ者たち』はすぐさまアーノルドの家を訪ねた。
 出入り口に近づくと、家の中から慌しく何かを探しているような騒音が聞こえてくる。
 ノックしてみると苛立った様子のアーノルドが露骨に嫌な顔で出迎えてくれた。

「またあんたたちか! こんな時に!!」

 帰ってくれ、と叫ぶとすぐにドアを閉めようとするが、隙間に差し込まれたコヨーテの足が阻んだ。

「水源の祠に行くつもりだろう? そこに緋桜姫がいる。違うか?」

「知らん! 何の事だ!」

「落ち着いてください、私は真実を知っています。姫は邪悪な妖魔なんかじゃない。それは時の王によって捏造された事実……そうでしょう?」

「……っ、」

 明確な反応があった。

「姫は愛した人に裏切られたと思い、人間を恨みながら封じられた……、凄まじい怨念を残しているはずです」

「……、そうだ。村を覆う霧も、広がっている病も全て姫の怨念がもたらしたものだ」

 信じられない、といった風に困惑しながらも、アーノルドは気を落ち着けたようだ。
 村長をはじめとした村人のほとんどは伝承をそのまま信じている様子だったため、これまで彼の主張は相手にもされなかったのだろう。

「君たちが言う通り、村に伝わる妖魔伝説は嘘だ。あれは時の王が捏造し、人々に強制した偽りの事実にすぎない」

 アーノルドはそう切り出して、妖魔伝説の真実を語った。
 大まかな流れはルナが夢の中で見た内容とほとんど同じだった。

「騎士アルフレッドが死んだ後、兄へ弔いと遺品の整理のために彼の弟がこの村を訪れた。その時、死ぬ直前にアルフレッドが密かに残した手紙を発見して彼は真実を知った。しかし、もはやどうする事もできず、彼は残された思い出の品と共に口伝で子孫に伝説の事実を伝え続けたんだ。後の世に蘇るかもしれない緋桜姫の怒りを静め、真実を伝え、そして兄の真の愛を告げるために……それが俺の先祖、アーネストというわけだ」

「なるほどな。だから最初から河辺の妖魔を倒しても無駄だと知っていたわけか」

「そうだ。だから俺はどうしても緋桜姫を救わなければならない……だが、村の連中はそれをカケラも信じようとしない!」

「それでお前はその怨念をどうにかしようと思っているのか?」

「いいや、怨念をどうこうするつもりはない。俺は姫に真実を伝えるだけだ……アルフレッドは姫を裏切ったんじゃない。最期まで彼女を愛していたんだ。それを伝えなければ彼女が哀れすぎる」

 アーノルドの手の中でカチャリと音が鳴った。
 その掌には古びたアミュレットが淡く光を反射している。

「これは緋桜姫が騎士アルフレッドに贈った護りの品だ。騎士の地位を捨て狩人となった彼が森で危険な目に遭わぬようにと……」

 それは現代にまで残る緋桜姫と騎士アルフレッドの愛の証だった。
 妖魔伝説の真実がその通りであれば、緋桜姫の恨みは正当なものだ。
 怨念を静められるものはもはや残っていない可能性もある。
 であれば彼の言う通り、せめて姫の哀しい誤解を解くくらいはしなければ哀れすぎる。

「協力しよう。剣は多いほうがいいだろう?」

 コヨーテが告げると、『月歌を紡ぐ者たち』は皆一様に頷いた。



 森へ踏み込んだ『月歌を紡ぐ者たち』は水源地への道を塞ぐ柵まで一直線にたどり着いた。
 が、その前には武器を持った村人たちが立ちふさがっている。
 どうやら村長の命令で防衛しているらしい。

「《眠りをもたらす白雲よ、抱いて沈め<微睡まどろ>みの底に》……」

 手荒な真似はしたくない『月歌を紡ぐ者たち』は、バリーの魔術で眠らせる方法を選択した。
 昨日の妖魔のように霧に混じらせた【眠りの雲】は回避不可能なほどの威力を発揮する。
 眠り込んだ村人たちを道の脇に除け、一向は先を急ぐ。

「ここは……」

 しばらく道を進むと、少し開けた場所に出た。
 これまでの道中でもっとも霧の深い場所だけに、その景色はほとんど見えない。

「ここが水源だ。滝の裏に封印の祠があるはず……姫はそこにいる!」

 アーノルドもこの場所には足を踏み入れた事はないようだ。
 霧が深く、探索も容易ではなかったが、レンツォを先頭に滝を目指して進んでいく。
 少しも進まない内に、レンツォは古びた石碑を見つけて立ち止まった。

「なんて書いてあるのかな……バリー!」

 任せろ、とバリーは【識者の杖】を手に石碑と向き合った。
 【識者の杖】には解読術式が刻まれていて、その先端を文献に押し当てる事で起動できる。

「『魔なるもの、ここに封印す。何人たりともこれを起こすことなかれ』」

「……っ、何が『魔なるもの』だ!」

 激昂したアーノルドは石碑を蹴りつけた。
 経年劣化だったのだろうか。
 石碑は根元からぐらりと揺れ、後ろへ倒れてしまった。

「あらら、壊しちゃってまぁ……」

「いいじゃねぇか、手間が省けた」

 バリーの言う通り、石碑の向こうには洞窟と思われる穴が広がっていた。
 あの石碑はその文面から見ても、水源へ繋がる封印だったのだろうか。

「っ、うわ……何かすごい嫌な予感するね……」

「魔力に鈍いってのは時として羨ましいモンだぜ」

 洞窟内から強大な魔力が威圧感を伴って溢れ出ている。
 バリーは緊張した面持ちで【識者の杖】を握り締め、コヨーテとミリアも既に得物を抜いている。
 ここから先は何が起こっても不思議じゃない。

 封印の地ではあるが罠の可能性は否定できず、レンツォとミリアを先頭として洞窟内を進んでいく。
 ランタンの頼りない薄明かりで照らし出された洞窟をしばらく進むと、淡く光る泉のほとりにたどり着いた。
 そこには枯れ果てた樹木がひとつあるだけだった。

 そして、その傍らには、

「姫……!!」

 艶のある黒の長髪と、ゆったりとした民族風の衣装を重ね着している女性が佇んでいる。
 彼女が緋桜姫なのだろう。
 霊体ゆえか、その姿はうっすらと透けている。

『アル! 貴様!! よくもおめおめと我の前に……!!』

 緋桜姫は闖入者の姿を見とめると、表情を激変させた。
 アルフレッドに瓜二つのアーノルドの姿を見て怨念が爆発したのか。
 敵意をむき出しにして、周囲が歪むほどの魔力を漂わせている。

「姫! 俺の話を聞いてくれ!!」

『人間! おのれ心醜き人間どもが……! あの時、人間などに心を許さなければ!!』

「待ってください、緋桜姫! 私たちは伝説の真実を知っています!」

『真実だと!? 貴様ら人間が我を裏切った事実より他に何がある!!』

「アルフレッドは貴方を裏切ってなどいないんだ!!」

 アーノルドは必死に呼びかけるが、憎悪で真っ黒に染まった緋桜姫は聞く耳を持たない。
 詠唱も掌相もなく周囲の魔力が術式を虚空に浮かべ、『魔術』が始まっている。

『許さん! 許さん!! 決して忘れぬ!! 八つ裂きにしても足りぬ!!!』

 怨念の塊となった妖魔・緋桜姫は凄まじい負の魔力を束ね、一気に解放した。
 始まっていた術式とは別の、単に魔力を凝縮して破裂させただけの魔術以前の『暴発』が『月歌を紡ぐ者たち』を襲う。
 指向性を持たせていないとはいえ、それを集団の真ん中に放られてはひとたまりもない。
 爆風にあおられ、『月歌を紡ぐ者たち』は散り散りになってしまった。

「くっ……!」

「待て! 危険だ、アーノルド!!」

 爆発の直前にミリアに庇われていたアーノルドは何とか立ち上がり、アミュレットを片手に緋桜姫に向かって駆け出した。

「姫! 信じてくれ! アルフレッドは裏切ってなどいない! 貴方を最期の時まで愛していた!!」

『――黙れぇぇぇええええええええ!!』

 まるで羽虫を振り払うような動作で、緋桜姫は魔力を爆発させた。
 アーノルドは吹き飛ばされ、地面に背中を強く打ち付けた。

「ぐっ……う……」

『……おのれ! おのれ!! アル、一度ならず二度までも我を騙そうというのか……っ!!』

「――緋桜姫ッ!!」

 コヨーテは【レーヴァティン】を振りかざし、緋桜姫へと迫る。
 だが、

「た、頼む……! 姫を、姫を傷つけないでくれ……!」

 呼吸が乱され、声も張り上げられないアーノルドの悲痛な叫びがコヨーテの耳に届く。
 彼と彼の祖先の思いを無碍にはできず、コヨーテは思わず立ち止まる。
 振りかざした【レーヴァティン】が行き場をなくしているところに、緋桜姫の放った『魔術』が白い網状となって絡め取った。

「【蜘蛛の糸】……!?」

 リューンの魔術に酷似したそれはコヨーテをその場に縛り付けた。
 そして緋桜姫の魔力が直近で炸裂する。
 咄嗟に身を伏せて【レーヴァティン】を盾にしたコヨーテは奇跡的に軽傷で済んだようだった。

「ぐっ……傷つけるなって言ってもこのままじゃジリ貧だぞ」

「すまない、だが必ず何とかする! だから時間を稼いでくれないか!」

「無茶言ってくれるな……、本当にまずいと思ったら構っていられないからな!」

 魔力の爆発で脆くなった【蜘蛛の糸】を強引に引きちぎって、コヨーテは【レーヴァティン】を構えた。
 攻撃のためではなく、直撃を避けるための盾としての構えだ。

「姫! これを……!」

 アーノルドが掲げたのは、かつて緋桜姫からアルフレッドに贈られたアミュレットだ。

『それは……! 我がアルに渡した品……』

「そうです! あなたの事を裏切った人間が、こんなものを大切に後世に残しますか!? これは彼の家で大切に保管されていたものです、それでもまだ信じられませんか!?」

『……、信じぬ! 信じぬ!! そんな戯言などっ!!』

 魔力の爆発がアーノルドを襲う。
 が、その攻撃はコヨーテと【レーヴァティン】が放った火炎が盾となって阻まれた。

『ぬうう!』

「姫……!」

『やめろ! 我を惑わすな! その声で我の名を呼ぶな……!』

 ミリアとレンツォはフェイントを駆使して緋桜姫の攻撃を誘う。
 チコとバリーも彼らのサポートのため、当てないように牽制の攻撃を放っている。

「あなたの恋人は、最後まであなたを護ろうとしていた! でも捕らえられて……そして彼の名を騙った騎士たちがあなたを誘き出したんです!」

『……あの時、確かにアルが呼んでいると言われて……でも待っていたのは大勢の剣を持った人間たちで……そう、アルの……アルと同じ鎧の……』

「それは偽情報だったんです! 人間は……、狡猾ですから! あなたたち妖魔よりも、ずっと!」

 アーノルドとルナの必死な叫びからか、次第に緋桜姫の攻撃の手が緩んでいった。

『そんな……そんな馬鹿な事があるわけない……』

 緋桜姫は弱々しく頭を振る。

「姫! 緋桜姫!! 俺の言う事を信じてくれ!!」

『あ、あああ……!』

 やがては魔力の歪みすらなくなり、重々しかった空気はわずかずつ澄んでいった。

『そんな、そんな……嘘だ。信じない……』

「……もう一度だけでいい。信じてみたらどうだ? そんなに疑っていたら安らかになるものもならないぞ」

『アル……アル……』

 緋桜姫は膝を折り、呆然と自身の半透明になった掌を見つめる。

『ああ、そんな……我はずっとアルを誤解していたというのか……?』

「誤解してしまうのは仕方がない。だが、確かにここに真実があっただろう?」

 嗚咽のような声をあげ、緋桜姫は肩を震わせた。
 妖魔ゆえか涙を流せないが、その哀しみは十二分に緋桜姫の心を揺らしていた。

『それでは……アルは、アルはどうなったのじゃ!?』

「あなたを護ろうとした彼は、残念ですが……」

 改めてその事実を突きつけられ、緋桜姫はがくりと項垂れた。
 もはや先ほどまでの怨念はまったく見られない。

『……すまなかった。我の愚かさのせいで、関係のない者に多大な迷惑をかけたようだ』

「いいえ、本当に愚かなのは時の権力者や人間たちです。姫は何も悪くなんてありません」

 ルナは緋桜姫に近づき、膝をついてその半透明の手を握る。

「人間を、どうぞ恨んでください。でも、あなたの好きな人だけは大事にしてあげてください。きっと、それでいいのではないですか……?」

『………………』

 緋桜姫は頷き、決意したように唇を引き結んだ。
 音もなく立ち上がると、改めてアーノルドへ向き直る。

『人々に掛かった呪いは解こう。そして我はアルの元へ……』

「良かったな。これでもう恨む事も泣く事もせず、またアーノルドと一緒になれる」

「再会できたらちゃんと謝って、それから、一番の笑顔を見せてあげてください……!」

 長年の恨みから解放された安堵からか緋桜姫の表情は穏やかだった。
 光に溶けるように消えていく緋桜姫は、最後の最後まで、確かに微笑んでいた。



 村に戻った『月歌を紡ぐ者たち』は即座に若い男性の村人に囲まれた。
 その中には村長の姿もある。
 禁を破った事を糾弾されるものと思っていたが、どうにも違うらしい。

「確かに結果的にはあんたたちが正しかったわけだが……」

 そう言って、村長は複雑な表情のまま踵を返していった。
 どうやら緋桜姫が消え去った時点で病は嘘のように癒えたようだった。
 村長としては禁を破り、防衛に向かわせた村人が眠らされた事を快く思っていないようだが、それでも村が救われた事に恩を感じていないわけではないらしい。
 追い出されないだけでもありがたいものだが、どちらにせよ長居するつもりはなかった。

 すぐに村を発つと告げると、村人は次々に感謝の言葉を述べ、別れを惜しんだ。
 そんな中、ぱたぱたと走り寄ってきたのは今回の事件の解決をお願いしてきた少年だった。

「村の周りを覆っていた霧、すっかり晴れました! 少しすればお酒造りも再開できると思うし……お姫様を救ってくれて、村を守ってくれてありがとう!」

「あぁ、確かに約束は果たしたよ」

「えっと、それで僕からの報酬なんですけど……」

 そう言って少年は袋に詰めた石くれを差し出した。

「え? いや、気にしなくていいんだぞ?」

「でも、もしかしたら何かの役に立つかもしれないから……」

 少年は受け取ってもらえるまで引くつもりはないらしい。
 口約束程度ではあったが、確かに約束は交わしていたのだ。
 あまり断るのは少年の気持ちを無碍にする事になる。

「では、ありがたくいただくよ」

「はいっ!」

 少年はぱあっと表情を明るくする。
 背後でミリアが悶えているようだったが、コヨーテは軽く無視した。

「あの子が言っていて思い出したんですけど。霊酒『緋桜』の事、すっかり忘れていましたね……」

「ほら、受け取ってくれ」

 いつの間にか姿を消していたアーノルドが酒瓶を手に戻ってきていた。
 澄み切った透明な液体が詰められた酒瓶で、ともすれば単なる水のようにも見える。

「何です、これ?」

「何って『緋桜』だよ。元はと言えばそれを探しに来たんだろう?」

 そういえば宿で試飲した『緋桜』も限りなく水に近い透明だった気がする。

「……色々と悪かったな。姫が妖魔だと知ったらきっと倒しに向かうと思っていたんだ。何しろ村の誰も姫と騎士の事実を信じなかったんだからな」

「もういいですって。姫を思っての事だったんですから」

 『緋桜』に頬ずりするほど喜んでいるルナであった。
 何だかとても説得力がない。
 険悪な雰囲気で出会った彼らだったが、最後にはお互い笑顔で別れを惜しむ事ができた。

 幾百年もの時を越えて、ようやくハマオ村の妖魔伝説の真相が明らかとなった。
 その事実を知った村人たちは混乱するだろうが、わずかもせず受け入れる事になるだろう。
 もはや濃霧と流行病の脅威は去ったのだ。

 村人たちの変わらない日常は続いていく。
 冒険者たちもまたいつもの日常へ戻っていくのだろう。
 だが、彼らは知っている。

 妖魔の姫と王国騎士の間にあったものはどれだけ踏みにじられようとも崩れ去ってしまわない、『真実の愛』だった事を。



【あとがき】
今回のシナリオはF太さんの「緋桜悲伝」です。
親父さんからの簡単な依頼のはずが、実は……という半巻き込まれ型の中編シナリオでした。
村の周囲を多い尽くす濃霧、原因不明の病、村に伝わる妖魔伝説、そしてPCが見た夢……謎を解かれるにつれて明らかになっていく真実は、王道ながらもとても熱くなれるものだったかと思います。
特に周摩が作る宿にはほとんど人外いますので、妖魔伝説なんて一発でツボでしたね……クリティカル!

そして何といっても『緋桜』!
CardWirth界でも珍しい(と思う)日本酒がモデルのお酒ですね。
シナリオクリア後にシナリオに再突入すると後日談と共に2つもらえますのでお忘れなきよう。
ちなみにリプレイ中では時間が経つと不都合が起こるので即座にもらった事にしました。
そのせいか宿に仕入れる分を独り占めした感じになった気がしますが……

今回、貴重な【識者の杖】の活躍シーンもありましたね。
ほぼ【理知の剣】をレギウスに渡すための交換だっただけに、こういった活躍が描けるのは喜ばしい事です。
解読キーコード自体が非公式なものであるためか、それがないとクリア不可能な状況にはほぼならないので、影が薄いほうですがこれからもがんばってくれたらな、と……

さて、次回は節目の第四〇話です。
乞うご期待!

【着々と鉱石とおみやげが整いつつありますぞ……】


☆今回の功労者☆
バリー。【眠りの雲】ってほんっと便利ですよね

報酬・支出:
宿の亭主からの報酬:400sp
妖魔退治の報酬:500sp
村での宿泊費:-60sp(3泊)

戦利品:
【碧曜石】
【緋桜】×2


銀貨袋の中身→10517sp

≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『緋桜悲伝』(F太様)

今回使用させて頂いた固有名詞
『ブレッゼン』(出典:『魔剣工房』(Djinn様))
『紅し夜』(出典:『紅し夜に踊りて』 作者:ほしみ様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。


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第三九話:『緋桜悲伝』 2 

 翌日、コヨーテたちは予定通りハマオ村の村長宅を訪ねた。

「……と、いうわけで、こちらとしても『緋桜』の製造が中止になったままというのは好ましくない」

「なるほど……」

 村長はうんうんと頷きながらコヨーテの話を聞いている。
 始めに濃霧と流行病の原因究明に助力する旨を伝えると、願ったりとばかりに表情を綻ばせた。
 どうやら近いうちに最寄の街の冒険者に依頼を出そうと考えていたらしい。

「ヤーヌ河ほとりに棲みついた魔物がすべての災いの原因であると我々はみております。そこで、その魔物の退治を依頼致します。報酬は銀貨にして五〇〇枚ほどを考えております」

「どんな種類の魔物なんだ? 数は?」

「名前は存じ上げませんが、紅い皮膚と深い体毛が特徴的な魔物です。どうにも集団で行動するようで、これまで十数体は確認していますが、正確な数は分かりません」

 魔物の種類も数も分からないとなると、面倒な仕事になるのは間違いなかった。
 遭遇するまで相手に合わせた準備をする事もできず、どれだけの数を倒せばいいのかすら見えないのだから。

「そうそう。水源のほうには近寄らないでいただきたい。あそこはわしの家が代々護る封印の地じゃて」

「そこに妖魔がいないとも限らないのでは?」

「強い結界が張られておって、魔物は近寄れんから問題はないじゃろう」

「……さいで」

 この非常時に結界があるから大丈夫、とはよく言えたものだ。
 村長が代々護ってきた場所であるのならいの一番に確認すべき場所だと思うのだが。
 やはりコヨーテたちが余所者である事に変わりはない、という事だろう。

 コヨーテたちは話を切り上げて宿で遅めの昼食を摂る事にした。
 依頼を引き受けはしたものの不安材料が多すぎるため、今日は情報収集に宛てるつもりである。
 日の沈む時刻が遅くなってきているとはいえ、霧中で夜を迎えるのは危険すぎる。

「実物を見てねぇからどォとも言えねぇんだが……それにしたって短絡的すぎるだろ。魔物が全ての元凶だなんてよォ」

「確かにな。霧の発生、病の流行、どちらにしても単なる魔物が引き起こせる事態とは思えない」

「村人からすれば魔物を倒せば霧も収まって病も癒えると考えたいだけでしょ。立て続けに異常事態が起こって原因も分からないとくれば、そうでも思わないと心が持たないんじゃない?」

 このまま霧と病が続けば村の存続も危ぶまれる。
 村長としては気が気でないのだろう。

「だが、まぁ依頼だからな。仮に魔物を退治して霧が晴れなくてもオレたちに非はない。あくまで村長の、村の総意として魔物を除く選択を採ったわけだからな」

「ま、悪化する事はねぇだろ。こっちはこっちで独自に調査させてもらえりゃそれでいい」

「あれ? どしたのバリー。やけに意欲的じゃない?」

「気になる事があンだよ」

 それだけ言って、バリーは茶をすする。
 コヨーテもカップを口に運ぼうとしたが、中身がない事に気づいて紅茶をポットで注文した。

 ややあってポットが運ばれてきた頃、宿の扉に備え付けられてある鈴が軽快な音を鳴らした。
 コヨーテは視線だけをそちらに向けると、片手を挙げて微笑んだ。

「急に呼び立ててすまない」

「気にしないでください。僕でお役に立てるのなら嬉しいですから」

 にこにこ笑顔で駆け寄ってきたのは昨日コヨーテらに異変の解決を頼んだ少年だった。
 村長宅から戻る際、情報収集のためにと密かに声をかけていたのだ。

「でも、どうして僕なんですか? 村長さんのほうが詳しいと思いますけど……」

「色々と理由があるのさ」

 ひとつ、この村で友好的に話ができそうな人物が数えるほどしかいない。
 ふたつ、アーノルドをはじめとする村の人間はコヨーテたちをよく思っておらず、村長ですらそのきらいがあったため、魔物退治に関わりのない情報に関しては口を閉ざしてしまう可能性がある。
 以上の理由があったのだが、さすがに少年の前で公言していい事ではない。

「村長からは魔物を退治するよう依頼があった。どうやら魔物の出現が霧と病を呼んだと考えているらしい」

「はい」

「君もそう思っているのか?」

「? だって、霧が出た時期と病気が流行り出した頃に魔物が出るようになったんですよ」

「それだ。霧と病と魔物、結局のところどの順番で起こり始めたんだ?」

「えっと……」

「要は霧と魔物はどっちが先か知りてぇんだ。最初に魔物が発見された時、霧は出ていたか?」

「バリー、落ち着け」

 おそらくバリーは興奮していたわけではないだろうが、元々顔が怖い彼に詰め寄られて少年は怯えきってしまっていた。
 それに気づいたらしいバリーはわざとらしく咳払いして紅茶に口をつける。

「えっと、霧は出ていたはずです。猟師のおじさんが霧の中から現れたように見えた、って言ってましたから……」

「魔物が現れるのはヤーヌ河付近だけか? 村に近づいた事はねぇのか?」

「現れる場所は、よく分かりませんが……魔物が村に入ったって話は聞いた事がありません」

 だろうな、とコヨーテは頷いた。
 もし魔物に村が襲われる事態が発生しているのなら、もっと早くに討伐の依頼が出ているはずだ。

「なるほどな、よく分かった」

「お役に立てましたか?」

「あぁ、ついでにもうひとつ聞きてぇ。『タタリ』って知ってるか?」

「タタリ……それは妖魔のタタリの事ですか?」

「そう、それだ。仲間が耳に挟んだんだが、どうにも眉唾な話らしい。参考までに教えてくれねぇか」

「はい!」

 元気に返事した少年は、咳払いして話し始めた。

「むかし、このあたりに強い力を持つ妖魔がいて、近くの人たちを苦しめていたそうです。その頃の王様が妖魔から人々を守るために妖魔討伐を派遣しました。そして村にやって来たのは一人の騎士さまでした。騎士さまはとても強かったけれど、妖魔もとても強くて……それで騎士さまは妖魔と相打ちになってしまったんです」

 話の大筋はコヨーテが村の老夫婦から聞いたものと同じだった。

「そうして妖魔は死んだんですけど、でも完全には力がなくなってはいなくて……それでヤーヌ河水源地にある洞窟の奥に祠を建てて封印をしたという話があるんです」

「………………」

 コヨーテは考え込んだ。
 確かに伝承の通りに妖魔が強大な力を持っていたとすれば怨霊化しても不思議ではない。
 自らを殺した騎士を、人間そのものを恨んだはずだ。
 だが、やはりここ二ヶ月間で急に発生した理由は何なのだろうか。

 ちらりとバリーを見てみると、得心いった様子で腕を組んでいる。
 どうやら何らかの答えか可能性かに辿りついた様子だ。

「ちなみに、えっと……騎士さまの名前はアルフレッド。妖魔の名前は緋桜姫といいます」

「緋桜?」

「妖魔の魔力が水に溶け込んでいるからヤーヌ河の水は霊水なんですよ。その水で造られるから『緋桜』って名前がつけられたんだと思います」

「妖魔の魔力って……そ、それって大丈夫なのでしょうか」

「大丈夫ですよ。お姉さんだって、ほら。今も飲んでいるでしょう」

 そう言って、少年は紅茶が注がれたカップを指した。
 彼の言いたい事を理解したルナは思わずと固まってしまった。

 酒造に使う水という事は、当然ながら村人の飲料水でもある。
 それどころかこれまで『緋桜』として大量に流通しているのだ。
 問題があればもっと早い段階で発見されているだろう。

「……あ、あまり気分のいいものではないです」

「そうか? 結構悪くねぇモンだぜ」

 よほど気に入ったのか、バリーは二度目の紅茶のおかわりを注文していた。



 そしてまた、目の前にこの世でもっとも愛しい人物が現れた。

『――……』

 『彼』が自分を呼んだ、気がした。

(……また、夢ですか)

 そう、夢だ。
 昨晩見たものと同じ夢。

『――……』

 『彼』が再び自分を呼ぶ。
 と同時に、ルナは杖を手に駆け出した。
 『彼』に向かって飛来する刃物、それを全て杖を振り回して叩き落す。
 夢の中でなければ到底できない芸当だった。

「させない……! 指一本触れさせはしません! もう、二度と!!」

 攻撃が向かってきた方向へ、そう宣言した。
 次なる攻撃に備えて杖を構えなおしたその瞬間、

「え……?」

 トン、と。
 拍子抜けするほど軽く、ルナの身体が貫かれた。
 『彼』が手にする剣によって。

 夢の中だと理解しているのに、身体を貫く剣の感触が不気味だった。
 そして最も愛しい人物から刺されたのだという事実がルナの喉を震わせる。
 『彼』の嘲笑がやたらと耳を叩く中、ルナのまぶたが降り、視界が黒く塗りつぶされた。



 ハマオ村での二回目の朝を迎えた『月歌を紡ぐ者たち』は朝早くから村を出てヤーヌ河へと向かった。
 わずかも歩かない内に辺りは濃霧によって真っ白になってしまう。
 一行は再び縦列となって互いの荷物や服の裾を掴み、はぐれないように注意して移動する。

「静かだね」

 先頭を行くレンツォの声。
 まだ村に近いからか、レンツォの姿はぼんやりと見える。
 しかし村から離れていくにつれて輪郭は薄ぼけていき、やがて完全に白く覆われてしまった。

「お陰で接近者の音は拾いやすいけど、薄気味悪いよ」

「………………」

 口には出さないが、誰もが同じ意見だった。
 まるでこの世ならざる場所へ足を踏み入れたような感覚すらおぼえ、どんどん視界が狭まっていくのに前に進まなくてはならないというのはひどく精神が削られる。
 もはや魔物でも何でもいいから出てきてほしい、などと考える始末である。

「あっ」

 どれだけ歩いたか時間の感覚も狂いはじめた頃、再びレンツォが声をあげた。

「ごめん、道を間違えた」

 何事かと構えていた他のメンバーは一斉に肩透かしを食らって息を吐いた。
 しかしレンツォを咎める者は誰もいない。
 こんな霧の中で初見の道を迷わず踏破できる者は少ないだろうし、それ以上に道に変化があった事で無限と思われた霧中行軍にも終わりはあるのだと安心できた。

「みんな、ゆっくり前に進んで。そうしたら柵があるからそこで折り返そう」

 彼の言う通りに歩みを進めると、木製の粗末な柵が霧の中から現れた。
 粗末な割にはしっかりと道を塞いでいる。

「これ、まさか水源への道か?」

「だと思うよ。村長が管理しているって話だし、村人が近づけないようにしてるんだろうね」

「……もしかしてだけど、これが村長の言ってた『封印』ってわけじゃないわよね?」

「ンなわけねぇだろ。どっからどォ見てもただの棒切れだぜ」

 よくよく見れば柵はここ最近の霧ですっかり湿気ってしまい、ところどころ腐りかけている箇所もあった。
 ちょっと力を入れて蹴れば根元から折れてしまいそうである。

「ほら、いいから行くよ。君らが動かないと僕も前に進めないんだ」

 遅れを取り戻そうとしているのか、レンツォが一行を急かした。
 その後、わずかも歩かない内にヤーヌ河に突き当たっているあたりはさすがといったところか。
 どうにも河の周辺には霧は薄くなっていて、コヨーテらは村を出てから初めて目視で互いの無事を確認できた。

「何かの生物の痕跡がある。っていうか分かりやすいね」

 渡河した際にできたであろう足跡が泥濘にくっきりと、しかも大量に残されていた。
 足跡と歩幅を鑑みるに、おそらくはゴブリンに似た二足歩行型の魔物だろう。
 問題はその足跡が明らかにゴブリンやコボルトのような一般的な妖魔のそれとは明らかに違う、という点だ。

「この足跡だと、おそらく小型……そして明らかに自然物じゃない紅い毛。たぶん紅い体毛をしてる。あと、足跡の数からみるとどうにも集団で行動する習性があるらしいよ」

「……もう少し早くその情報がほしかったな」

「え?」

「周りを見てみろよ」

 地面ばかりを見ていたレンツォが顔を上げると、その表情から笑みを消した。
 木々に紛れ、十数体の魔物がぐるりと『月歌を紡ぐ者たち』を取り囲んでいる。
 レンツォの推測どおりゴブリンと同程度の小型の魔物で、全身が紅い体毛で覆われている。

「あちゃあ、気配は感じなかったはずなのになぁ」

「待ち伏せする知恵くらいは持ち合わせてるって事ね。上等じゃない」

 好戦的な笑みを浮かべ、ミリアは双剣をくるくると回した。
 囲まれた時にはすでに音もなく抜いていたらしい。

「一旦退くって手もあったんだが……」

「別にいいでしょ、このままで。わざわざ倒されに来てくれたんだからさっさと終わらせましょ」

「……まぁ、いいか」

 確かに彼女の言うとおり索敵対象が目の前にいるのだから退く道理はないし、数の上では負けてはいるが取り囲まれている以上、一転突破による撤退は難しくない。
 何より、ここで退いても敵方の情報はほとんど手に入らない。
 未知の相手とはいえ一合も打ち合わずに引き返すのも面白くなかった。

「ここを本陣として戦う。あまり離れすぎて霧の中に入るなよ。奴らにとってはホームなんだから何があるか分からないからな」

「分ぁかってるって!」

 ミリアが動いたのと同時に、魔物の数体が『月歌を紡ぐ者たち』を襲う。
 どうやら彼らの知性は思っていた以上に高いらしい。
 あくまで包囲を崩さず、コヨーテたちと同等の戦力を投入していた。

 だが、

「――、――――――!!」

 ミリアの双剣が閃き、コヨーテの【レーヴァティン】が唸りを上げ、チコの速射が降り注ぐ。
 たった一度の攻撃で瞬く間に三体の魔物が地に伏した。
 あまり戦闘能力は高くないようだが、体格から鑑みればそれが普通である。
 だからこそ群れで行動しているわけであり、縄張りを荒らされていなければ人間六名を相手に狩りをする事もなかったのだろう。

 しかし相手は『月歌を紡ぐ者たち』である。
 伊達にミノタウロスやオーガ、トロールの連合『群』を相手に勝利を収めていない。

「……オレが言うのも何だが、確かに退く理由なかったかもな」

 先発の残りをさくっと斬り捨てて、コヨーテは呟いた。
 未だに魔物の群れに囲まれているのだが、それでも負ける気がしない。

「そのとおりだけど、なんだかコヨーテらしくない言葉だね。どしたのさ?」

「どうしたも何も、やけにバリーが静かだと思ったんだよ」

 コヨーテは魔物の包囲の一部を指差した。
 彼らは木々の隙間からこちらを窺っていたはずだが、今はどれもこれも茂みに突っ伏している。

「あ……、【眠りの雲】か」

「ご名答ォ、せっかく霧が出てンだ。利用しない手はねぇだろ」

 バリーはおそらく開戦前から【眠りの雲】を唱え、包囲の一部に対して発動させていたのだろう。
 【眠りの雲】は完全に霧に紛れてしまい、いくら魔物が霧の中での行動に慣れているとはいえ見破る事は不可能に近い。

 眠ってしまった魔物は即座に命を刈り取られ、残った魔物はじりじりと後ずさる。
 これにより数の上での有利不利は完全に入れ替わった。

 堪えきれずに駆け出した魔物から、チコの射撃によって打ち抜かれて絶命する。
 意を決して向かってきてもコヨーテとミリアの剣撃の前では無力に等しい。
 『月歌を紡ぐ者たち』は大した消耗もなく、ヤーヌ河の魔物退治の仕事を終えた。



「これでそのうち霧も晴れ、村人の病も治る事でしょう……はぁぁ、ありがたや。ありがたや」

 村に戻った『月歌を紡ぐ者たち』は村長へ魔物退治の首尾を報告すると、いたく感激した様子で迎えられた。
 すでに日も傾きかけていたが、小さな村だけに噂は瞬く間に広まった。
 同時に、全ての厄介事が片付いたのだという弛緩した空気も同様に広まっているように感じられる。

「村長はああ言ってたけど、ほんとにこれで終わりだと思う?」

「そんなわけがない」

 コヨーテは即否定した。
 同感だな、とバリーも後に続く。

「ヤーヌ河のほとりには確かに魔物が現れたが、あの辺の霧は比較的薄かった。もし魔物が霧を作り出してるってぇんなら普通、霧の
発生源にこそ奴らは存在するべきじゃねぇのか?」

「偶然離れてたって可能性はないの?」

「そりゃ否定できねぇな。だが、あの魔物が霧をどうこうできたとも到底思えねぇんだよ」

 戦いの熱が引いた今思い返してみてもゴブリンより少し強い程度の魔物である。
 低くない知性があるのはいいとして、それでも霧や病を振り撒くような性質の悪さがあるようには思えない。

「霧から魔力を感じるってのは往路で話したと思うが、覚えてるか? あの魔物どもはただ魔素に惹かれて集まってきただけなんじゃねぇの?」

 強い魔素に惹かれて魔物が集まってくるケースは『紅し夜』という前例もある。
 魔術師であるバリーが肌で感じられるほどの魔力を秘めた霧であれば条件も見合う。

「だから霧と魔物はどちらが先に現れたのか聞いていたのか。というより、昨日の時点でほとんど推測できていた事じゃないのか?」

「実物を見るまで答えは出せねぇだろ。ま、結局はほぼ予想通りだったがな」

「じゃあもう大体目星ついてんでしょ。黒幕は誰よ?」

「そっちはまだ確信が得られねぇなァ。いや、ほとんど答えは出てンだが、最後の一押しが足りねぇ感じだ……、あン?」

 バリーは宿屋の近くに佇むアーノルドの姿を見て取った。
 どうにもコヨーテたちを待っていたような様子である。

「……魔物を倒したって?」

「耳が早いな」

 アーノルドは嘲笑うように鼻を鳴らし、

「いい気なもんだな。そんなんじゃ霧は晴れない……」

「その口ぶり、何か知っているのか?」

「ふん、いいからお前らはさっさと街に帰ってくれ!」

 ただそれだけを伝えてアーノルドは踵を返した。
 否定もしなかったが、やはり彼は何かを知っている。
 
「……どうやって聞き出すかな」

「面倒だから少し痛い目を見てもらうって事でいいんじゃない?」

「おい」

「ふざけてるわけじゃないわ。これ以上に手がかりを探るのに手っ取り早い方法はないわよ」

「だからといって手荒な真似はしたくない。なぁバリー、何か手はないか?」

 肩をすくめて、バリーは首を横に振った。

「ま、手荒じゃねぇが強引な方法ならあるぜ。あのアーノルドとかいう村人が今回の妖魔事件に何らかの関わりがあったと村長に報告するんだ。明日になっても霧が晴れなきゃ余計に都合がいいがな」

「つまり村長に尋問させるって事か? それはまた……」

「少なくとも、アーノルドは今回の件について最初から何かを知ってる風だった。もし黒幕じゃねぇってんならそれが得になるかどうかはさておき、情報の共有くらいしてもらってもいいだろ? ……ま、それはほとんど建前なんだが」

「?」

「俺の狙いは全ての情報源を潰す事だ。アーノルドがどんな情報を持っていようが構わねぇ。有益だろうが無益だろうが、結局は『ヤーヌ河の水源地へ向かうしかない』という流れに持ち込めりゃあそれでいい」

 バリーは水源地が怪しいと言っている。
 元よりヤーヌ河の水源地は妖魔が封印された伝承が残るほどに曰くつきの場所だ。
 怪しいと感じていても不思議ではないが、バリーの言葉には確信めいた何かがある。

「まず魔素を含んだ霧ってモンはゼロから作れるよォな代物じゃねぇ、必ず基となる液体が必要だ。単純な理論だが、魔力を蓄えた液体を霧状に変化させりゃあ魔素を含んだ霧は出来上がる。今回の霧はおそらくそういった『単純な理論』で作られたモンだろうぜ。そもそも――」

 思わず『単純な理論』の中身まで講義しそうになったバリーは咳払いして気を取り直した。

「言うまでもねぇが霧の媒体はヤーヌ河の水だ。それも水源から湧き出る水に限る。柵に阻まれた水源に向かう道はやたらと霧が深く、水の流れに沿って次第に霧が薄くなっていたからな。……ま、大元の根拠となる情報は『妖魔のタタリ』だ。大昔に騎士と相打ちになった妖魔の力は、未だ消えずに封印によって抑え込まれている……相打ちになったが力が残っている、ってのは死んではいなかったとも捉えられるからなァ」

「という事は、妖魔がその黒幕?」

「そこは断言できねェ。が、限りなく妖魔かそれに近い何かが元凶だろうぜ。あるいは口酸っぱく水源地に近づくなと警告していた村長がその力を利用していた可能性もなくはねぇが……これは飛躍しすぎだろォな」

 あくまで客観的に情報をまとめるとそういうぶっ飛んだ仮説も出てくるものだ。
 裏を返せば仮説を仮説として除けてしまえるほどに推論がまとまっているという事でもある。

「明日、霧が晴れてねぇンならまず間違いねぇ。俺たちが向かう先はヤーヌ河水源地だ」

 情報をすり合わせて頭脳を働かせ、バリーは誰もが納得する形で行動方針を決定付けた。



 その男は騎士だった。
 王国に忠誠を誓い、王命であればどんなに手を汚しても厭わない覚悟があった。

『かの地に住まうおぞましい妖魔を退治せよ』

 今回の任務にも変わらぬ覚悟で臨み、即座に遂行してみせるつもりだった。
 しかし、妖魔の住まう村へ訪れた騎士は違和感をおぼえた。
 村の誰に聞いても妖魔は村人に友好的だという。

「お、お前が緋桜姫……?」

「いかにも。我の名は緋桜姫。そなたの名は? 我にいかなる用じゃ?」

 実際にその目で見ても、とても王から聞いていた極悪非道の妖魔とは思えない。

 騎士は大いに悩んだ。
 妖魔といえど何の罪もない相手を一方的に倒してしまってもよいものか。
 自身の正義と王の命令、どちらを優先するべきか。

 やがて決断した騎士は、王国へ妖魔の討伐成功の旨を報告した。
 だが、自身は王国へ戻らず村へ留まった。
 緋桜姫の元へ足しげく通っていくうちに、己の芽生えた感情に気づいていたからだ。

「緋桜姫が何をした!? 村人とも静かに友好的に暮らしていたのに!」

 およそ一ヵ月後、村は王国から討伐隊を差し向けられた。
 数十人の騎士に取り囲まれた騎士は最後まで抵抗する。

「討伐だと!? それはただ、王が緋桜姫の魔力を恐れたからじゃないか!!」

 騎士の叫びは空しくも誰の耳にも入らずに封殺された。
 取り押さえられて牢に叩き込まれるまで、騎士は緋桜姫の名を呼び、その身を案じていた。

「妖魔・緋桜姫! 貴様の命、我ら王国騎士団がもらいうける!」

 一方で緋桜姫も討伐隊に追い詰められていた。
 騎士団が施した結界によって思うように力がふるえず、体ひとつでこの場を切り抜けるのは不可能に近い。

「……しょせん、人間にとって我ら妖魔は害及ぼすものでしかないというのか? 我らが何をした!?」

 緋桜姫は心の底から信じていたはずの騎士を呪った。
 人間に対して少しでも心を許してしまった自分を恥じた。

「おのれ人間どもめ! おぬしらが我に仇なした事、我は決して忘れぬぞ!!」

 討伐隊の白刃が心臓を貫くその瞬間まで、緋桜姫は呪いの言葉を叫び続けた。

「決して、決して忘れぬぞ……! アルフレッド……!!」


To Be Continued...  Next→

第三九話:『緋桜悲伝』 1 

 六月のある日、『月歌を紡ぐ者たち』は毎朝恒例の依頼の貼り紙争奪戦から除外された。
 宿の亭主エイブラハム直々に呼び出されたからだ。
 先日の仕事で大きな報酬を得ていなければ文句のひとつも言ったかもしれない。

「ハマオ村から届くはずの酒がここ数ヶ月まったく入ってこないんだ」

 すすいだグラスの水気を拭き取りながら亭主エイブラハムは言った。

「現地の様子見をしてきてほしい。もちろん、できれば酒の仕入れも頼みたい」

「またお使いか?」

「皆まで言うな」

 亭主エイブラハムがこういった形で依頼をしてくる事はこれが初めてではない。
 およそ半月前にも同じようにお使い同然の仕事を持ちかけられた事があり、休養も兼ねた軽い仕事を、という亭主なりの気遣いだった。
 とはいえ仕事は仕事、やるべき事はきっちりやらねばならない。

「報酬は?」

「前金で銀貨一〇〇枚、依頼達成後に三〇〇枚だ」

「ずいぶんと安くないか?」

 その言葉を待っていたとばかりに、亭主エイブラハムはグラスをカウンターに置き、そこへ透明な液体を注ぎ込む。

「飲んでみろ」

 コヨーテはすぐに察してルナを呼んだ。
 彼女は両手でグラスを持って香りを確かめると、表情を変えた。
 液体をゆっくりと口に含み、舌の上で転がして味をみる。

「……ッ!!」

「どうだ?」

 ルナは興奮した様子でコヨーテの肩をバシバシと叩いた。
 どうやら相当に気に入った様子だ。

「それが届かなくなっている秘蔵の酒だ。請けてくれればお前らにもいくらか分けてやろうじゃないか」

「本当ですか!? コ、コヨーテ! これは是非やるべきですっ!!」

「わ、分かったから叩くのをやめてくれ。地味に痛い」

 ルナの酒好きにも困ったものだ、とコヨーテは苦笑する。
 とはいえコヨーテも元々は宿で働いていた身であり、あの秘蔵の酒の正体を知っていた。

 『緋桜』。
 穀物を発酵させて造る端麗辛口の酒で、ハマオ村のみで作られている、その筋では有名な霊酒だ。
 ちなみに普通に購入しようとするとまともな依頼二回分ほどの銀貨がすっ飛んでいく。

「と、いうわけで引き受けさせてもらう」

「そうこなくちゃな。それじゃあ依頼書と前金を渡しておくぞ」

 カウンターに置かれた羊皮紙と小さめの皮袋を受け取り、『月歌を紡ぐ者たち』は動き出した。



 目的のハマオ村があるというデルロイ山までの道程は快適かつ何事もなく退屈に終わった。
 ところが山の中ほどに差し掛かったところで季節外れの霧にまかれた。
 霧は登るほどに濃くなってゆくようだ。

「もうわずかで着くって本当かよ?」

「そのはず、なんだけどねぇ」

 先導のレンツォも辟易した様子で息を吐いた。
 行けども行けども変わり映えのない山道が続く。
 霧は相変わらず深い。

 やがて霧は三歩先も見えないほどに視界を白く塗りつぶした。
 自然とレンツォの安全確認も慎重にならざるを得なくなる。
 縦列となった『月歌を紡ぐ者たち』は互いに荷物や服の裾を掴んではぐれないように移動を続けた。

「……この霧、少し妙だ」

 やがて疑問が噴出した。

「季節外れの霧って事がすでに不自然だとは感じていたが……どうにも魔力を帯びているような感覚だぜ」

「何らかの魔術が発動しているのか?」

「そこまでは読み取れねぇが、あまりにも広範囲すぎる。少なくとも俺たちを狙ったものではなさそうだ」

「しかし、これは……」

 先ほどから声だけは通るものの、相手の姿はほとんど見えていなかった。
 コヨーテはレンツォのバックパックから伸びる紐を掴んでいるのだが、よほど引き寄せなければその手元すらもはや見えない。

 真っ白な霧が奪ったのは視界だけではない。
 足元が抜けていくような感覚に囚われ、そして方向感覚すら失われた。
 もはやまともに進む事すら困難になってきたその時、

「――ちょっと待って! 何かある!」

 先頭を進むレンツォの眼が何かを捉えたらしい。
 相変わらず慎重な歩みで方向を変えて進むと、そこには古ぼけた道標がひっそりと立っていた。
 この道標を見落としていたら延々と霧の中を彷徨わなければならなかったかもしれない。

「お手柄よレンツォ」

 湿気で額に纏わりつく髪をかき上げつつ、ミリアは言う。
 気がつけば全身じっとりとした湿気を帯びており、ひどく肌寒い。
 霧がひどく小休止もままならなかった『月歌を紡ぐ者たち』は足早にハマオ村を目指した。

 しばらく進むと集落の影が見えてきて、次第にその様子が鮮明になっていった。
 ハマオ村に入った途端、嘘のように霧が晴れ、方向感覚が戻る。

「なんだったんだよ、あの霧は……」

「放っておきなさいよ。さっきの道しるべまでは一本道なんだから復路は霧で方向が分からなくなる事はないでしょうし」

「まぁ、頭の片隅においておくくらいでいいんじゃねぇか。何だったら村の人間に聞いてみりゃいいだろ?」

 それもそうだ、とコヨーテも頭を切り替える。
 ここに来たのは霧の調査のためじゃないのだ。

 ハマオ村は小さな山村という感じで、ところどころに酒を造る施設や酒を保存する倉庫のような建物が建っている。
 ぱっと見ても外に人気はなくひっそりとした雰囲気だ。

「もうすぐ日が暮れそうですが、どうします?」

「まずは今晩の宿だな。あとは酒場でも見つければ『緋桜』の事も聞けるだろう」

 予想よりも大幅に到着が遅れた上、湿気で身体が冷え切っている。
 今回のおつかい、もとい依頼に期限は存在しないのだから今日は早くに休んでしまいたかった。

 聞き込みを経て辿りついた宿屋は他の建物より一回り大きい二階建ての建物で、酒場を兼ねている造りだという。
 よくある造りではあるが、拠点となる宿に目的の酒場があるのはありがたい。
 早速宿屋に向かってみると、もう夜も近いというのに一階の酒場はひっそりとしていた。
 カウンターの向こう座っていた初老の女性が気だるそうに「いらっしゃい」と声をかけてくる。

「これは珍しい、旅人さんね。お泊りかい?」

「ああ、空いているか?」

「ごらんのとおりさ」

 宿の女将は自嘲気味に笑って肩を竦めた。
 村の外に広がる濃霧によって外からの人間が訪れる機会が減っているのだろうか。
 部屋が空いているのならありがたい限りだ。

「ところで『緋桜』について聞きたいんだが、在庫はあるか?」

「……残念だね。今この村のどこにも『緋桜』はないんだよ」

「ない? この村でしか生産されていないんだろう?」

「一、二ヶ月前から妙な事が起こり始めてね。酒造りがストップしている状態なのよ」

「もしかして霧の事か?」

 自身らも経験したあの濃霧を思い出す。
 だが女将は表情を暗くして「それもあるけど」と続けた。

「霧の発生と同時に何人かの村人が原因不明の病に倒れてね。死ぬほどじゃあないけど、微熱が続いてうなされっぱなしよ。しかも霧のおかげで外界から遮断されて、ただでさえ少ない訪問者がぱったり」

「そんなぁ。ただの一本もないんですか?」

 軽く絶望気味のルナが食い下がる。
 依頼が達成できない事よりも『緋桜』を味わえない事のほうを残念がっている気がする。

「少なくともうちにはないねぇ。村の誰かがまだ残してるかもしれないけど、望み薄だよ」

「……コヨーテ、行きましょう」

「行くって、今からか?」

「もちろんです! もし今夜飲まれちゃったらどうするんですか」

「あー……」

 指先で眉間を抑えてコヨーテは脱力した。
 確かに一刻を争う状況ではあるが、彼女の元気はどこから沸いてくるのか。
 そんなにお試しで飲んだ『緋桜』が気に入ったのだろうか。

「……みんなはもう休んでいいぞ。オレはルナに付き合うから」

「そう? だったら後は頼むわ」

「ミリア、お前って時々すごく冷たいよな」

「女々しいこと言ってんじゃないわよ」

 すっぱりと一蹴されて、コヨーテは諦めたように息を吐いた。
 急かされながら荷物だけを宿に置いて、コヨーテはルナの後を追うように村へ繰り出した。



 行動を開始したコヨーテとルナは日暮れまで時間がない事もあって片っ端から家を訪ねることにした。
 最初に訪ねた民家をノックすると、白髪の老婆が顔を出した。
 老婆はまず訪問者が外の人間だということに驚いたあと、すぐに我に返って穏やかな笑顔を見せる。

「こんばんは、『緋桜』ありませ――むぐっ!?」

「……失礼。オレたちはリューンから来た冒険者だ。少し話を聞かせてもらえないか?」

 やや暴走気味のルナの口をコヨーテの手が強引に塞いだ。

「『緋桜』を探してやって来たんだが、酒場では取り扱っていないと聞いた。もし残っているようなら譲ってもらいたい」

「すまないねぇ、うちも切らしててね。なにぶん、妖魔のタタリのせいで酒造りが止まってるからねぇ」

「妖魔のタタリ?」

 聞きなれない言葉だった。
 ハマオ村独特の言い回しだろうかと考えていると、見かねたらしい白髭の老人が老婆をたしなめた。

「すいませんね外の方。『タタリ』はバァさんの最近の口癖でして」

「タタリとは初耳だが……」

「あぁ、この村にはその昔おっそろしい妖魔がいたそうで。それをとある騎士さまが捨て身で倒したという話だぁよ。バァさんはその妖魔のタタリだっていうんだ」

「騎士さまに倒されてなお、妖魔はこの地に災いを振りまいたんだ。封印されてからもきっとその怨念は消えていないんだよ」

「だからそんな突拍子もない話を旅の人に話しても困るだろぉ?」

 どうやらタタリとは呪いのようなものらしい。
 二ヶ月内で発生した異変に老人が語り継ぐほどの昔話が関係しているとは思えないが、多少は気になる話ではあった。
 が、ルナがコヨーテの外套の裾を引っ張って急かしてくるので、老夫婦との会話はほどほどにして切り上げた。

 他の民家を訪ねてみるも、やはりどこにも『緋桜』の持ち合わせはないという。
 中には家族の看病に付きっきりでそれどころではない家もあり、他の村人からは苦言を呈される事もあった。
 これにはルナも正気に戻った様子で、以後は粛々とコヨーテの情報収集に付き従っている。

 どうにも村人の大半はコヨーテら冒険者に対して警戒している様子で、特に若者にその傾向が見られた。
 最後に訪ねた若い村人からは村外の人間は関わるな、と厳しい口調で釘を刺されてもいる。
 彼からは特に強い拒絶の意思が見て取れたからかルナはすっかり気を落としている。

「……へこみますね」

「そう気を落とすな。聖北の奇跡も万能じゃないって君も分かっているんだろう?」

「お酒に心を奪われてしまってこの村の苦しみから目を逸らしていた自分が恥ずかしくって……慎まなければなりません、慎まなければ……!」

「そっちもあまり気にしすぎるなよ?」

「でも、コヨーテがいなかったら私……」

「確かに危なかったけど、何とか踏みとどまっただろう。そのためにオレが付いてきたんだから」

「……はい」

 ルナであれコヨーテであれ、完璧な人間なんて存在しない。
 間違いは正せばいいし、可能ならば他人が注意してやればいい。
 重要なのは間違いから何を学ぶか、なのだ。

「ともあれ、この村の問題は難しいな。明らかに異変が起こっているが、村人は『タタリ』を恐れているのか根本的な解決を望んでいない様子だ。その力を持っていないから考え付かない、といったほうが正しそうだが」

「例の病が命に関わるほどひどくないというのも遠因なのでしょう」

「仮に解決できたとしても即座に酒が出来上がるわけでもない。現存しないのであれば今回は諦めるしかなさそうだな」

「そうですね……残念ですが仕方ありません」

 そう言ってルナは静かに宿に戻るべく歩き出した。
 かと思ったらすぐに立ち止まってコヨーテに向き直る。

「それで、どうします?」

「……何が?」

「異変ですよ。調査してみますか?」

「その必要はないだろう。ついさっき村人から関わるなと忠告されたばかりだ」

 親父の依頼はあくまで現地の様子見で、酒の仕入れは可能であればという話だった。
 村で手に入らなくても多少割高になるがあるところにはある。
 しかしそれを仕入れるかを判断するのはコヨーテらではない。

「それこそ村人から依頼があれば別だが……」

「――ちょっと待ってぇ~!!」

 唐突に後ろから甲高い声が聞こえてきた。
 振り向いてみれば、一〇歳そこらの少年がこちらに向かって走ってきている。
 何事かと立ち止まってやると、少年は息せき切りながらも言葉を紡ごうと必死な様子だった。

「落ち着いて呼吸を整えろ。逃げやしないから」

 コヨーテは水袋を差し出して言う。
 荒い呼吸を繰り返していた少年は水を口に含むと、ようやく落ち着いた様子で息を吐いた。

「ごめんなさい、もう大丈夫です」

「そんなに急いでどうしたんです? 私たちに何かご用ですか?」

「……はい。実は僕、皆さんにお願いがあるんです。皆さんは冒険者でしょう?」

 コヨーテは短く「あぁ」とだけ答えた。
 次に出てくるであろう言葉がなんとなく予測できた。

「この村の病気と霧の原因、どうか突き止めて……そして解決してくれないでしょうか?」

「……、」

 コヨーテは困ったような表情を浮かべて考え込んだ。

「おや、コヨーテにしては珍しいですね」

「……何が?」

「こんな状況だったら二つ返事で引き受けるものかと」

「茶化すなよ。エリックじゃあるまいし」

 それに、とコヨーテは一層声を潜め、

「こればっかりはオレの一存で決められるものじゃない。何しろ報酬に期待ができないからな」

「……それも珍しい発言ですね」

「だから茶化さないでくれよ。オレだって『月歌』のリーダーなんだ」

 優しいだけの冒険者に価値はなく、甘いだけの冒険者は永くない。
 冒険者パーティのリーダーとは決定権を持つ代わりに他のメンバーが食いっぱぐれないように請ける仕事に気を配らなければならない。

 無論、利益だけを求めて仕事を吟味するのではない。
 自分たちが請けたい依頼でどこまで利益を上げられるか、それも冒険者のスキルのひとつだ。

「少年、それは冒険者に対する依頼か?」

「そ、そうですけど……あっ、村が救われればきっと村長さんからお金がもらえると思うんです。お酒もまた造れるようになるし……」

「あぁ、それなら村長に話してみよう」

 コヨーテが欲しかったのは村人が異変解決を願っているという大義名分だ。
 当然ながらこの少年だけを後ろ盾に村の調査をするわけもなく、村人から要望がある事だけを村長なり有力者なりに伝えて引き入れようとしていた。
 特産品である『緋桜』の製造が再開できるのであれば、村長を説得する材料になり得るだろう。

「おい、何やってるんだ!?」

「……え?」

 唐突に、三人の間に村人が割り込んだ。
 少年を遠ざけるようにコヨーテらと対峙するのは、先ほどひときわ厳しい口調で冒険者の介入を拒絶した村人だった。
 拒絶どころか敵意すら垣間見える瞳がコヨーテを睨めつける。

「ただ話をしていただけだ」

「何の話だ」

「守秘義務だ。悪いが教えられない」

 埒が明かないと感じたのか、村人は少年に向き直り、

「こんなヤツらに関わるんじゃない。いいな?」

 そう言うだけ言って、足早にその場を後にした。

「ど、どうしちゃったんだろうアーノルド兄さん……」

「随分と嫌われてしまったみたいだな」

「ちょっと思い込み激しいところがあるけど、とっても優しくていい人なんです……でも、あんなに怒るなんて何があったんだろう?」

「………………」

 少年の独白にコヨーテは口をつぐんだ。
 アーノルドと呼ばれた青年の言動に、一種の違和感を覚えたからだ。

 余所者が疎まれ、排他的な扱いを受けるのは閉鎖的な村ではよくある事だ。
 まして、村の現状を鑑みれば原因不明の流行病と濃霧に頭を痛めているところに、突如現れた余所者なのだ。
 彼もそういった類の理由から刺々しい態度なのではないか、とコヨーテも思っていた。

(なんとなく、そんな雰囲気じゃない気がするんだよな)

 あくまで可能性でしかないが、もしかしたらあの青年も今回の事件に何らかの関わりを持っているのかもしれない。

(まぁ、主犯って事はなさそうだが……)

 コヨーテの直感は外れる事の方が少ない、というのは『大いなる日輪亭』では有名だ。
 しかしただそれだけの理由で事を前に進めていいはずもなく、コヨーテとルナは少年と別れて宿へと戻った。



 気がつくと、ルナは草木生い茂る『何処か』に立っていた。
 目の前にはこの世でもっとも愛しい人物がこちらを見つめている。

『――……』

 『彼』が自分を呼んだ、気がした。
 一秒、二秒と時が過ぎるにつれて、『彼』が本当にルナの名前を呼んだのか不明瞭に思えてくる。
 この感覚はルナにも覚えがあった。

(……これは、夢?)

 そう、夢だ。
 なぜならルナはハマオ村の宿屋で眠ったはずであり、夢遊病の気もない。
 何よりも、目の前の『彼』は『この世でもっとも愛しい人物』であるはずなのに、その面貌がまったく認識できないのだから。

『――……』

 『彼』が再び自分を呼ぶ。
 と同時に、猛烈な嫌な予感がルナの背筋を凍らせた。

「危な……っ!!」

 『彼』の胸から棒のようなものが生えてきた。
 棒のようなものは真っ赤に濡れた剣であり、間髪入れずに何本も何本も、全身から突き出てきた。
 ごぼ、と『彼』は血反吐を吐いて、まっすぐルナを見つめて口を開く。

『――……、なぜ……なぜ、護ってくれなかっ……』

 言葉を言い切る前に、『彼』は崩れ落ちた。
 夢の中での事象だ。
 『彼』が絶命した事は身体を調べなくても頭が認識した。

「あ……あぁ……!!」

 目の前で、この世でもっとも愛しい人物が血を流し冷たくなっていく。
 二度と光を映さぬ虚ろな瞳が、真っ赤な双眸が、じっとルナを見つめた。

「うわぁぁぁぁあああああああああ――!!!」



「――あああああぁぁぁ!!!」

 ルナの悲鳴でコヨーテは目を覚ました。
 即座に抱えていた【レーヴァティン】をすぐ抜けるよう持ち替えて、ルナのベッドへ駆け寄った。
 その途中、室内を見渡してみたが何かが起こった形跡はない。

「ルナ、どうした?」

 ルナは衣服を冷や汗でびっしょりと濡らし、荒い呼吸を繰り返していた。
 上半身を起こしているものの、俯いて顔は両手で覆っている。

「ルナ――!?」

 ルナの肩に手を置くと、まるで怯えるようにその身を震わせた。
 彼女は恐る恐るといった風に顔を上げると、細い腕でコヨーテの胸に触れ、腹に触れる。

「お、おい……?」

 流されるままにコヨーテのシャツは捲り上げられていた。
 冷え切ったルナの手が素肌に触れているが、何が何だか分からずにコヨーテは困惑するばかりだ。
 あまりにも必死な様子だったため止めるのも憚られた。

「……、ない。きずは、ない、ですよね……」

 そう呟いて、ルナは深く息を吐いた。
 ようやく落ち着いてきたようだ。
 呼吸も次第に戻ってきているが、しかし依然顔色は悪い。

「夢でも見ていたのか?」

「……夢、……そう、夢を見ていた気がします」

「どんな夢だった? ……まさか、この間のような?」

 夢、という言葉にコヨーテは眉根を寄せた。
 ルナ本人は気がついていないが、彼女は数日前に夢魔に魅入られていた事がある。
 その夢魔はコヨーテが跡形もなく倒したが、もしかしたら別種の夢魔が彼女を襲ったのかもしれない。

「いえ……、あの時とは違う感じでした」

 そう言って、ルナは自分の膝を抱いた。
 あまり踏み入ってほしくないような内容の夢だった様子だ。
 なぜ身体を弄られたのか、とても理由が知りたかったがコヨーテは潔く諦める事にした。

「あの、コヨーテ……またあのおまじないを――」

「……ちょっとあんたらさぁ」

「んひゃっ!?」

 ルナは顔を真っ赤にして素っ頓狂な声を上げた。
 他の面々も彼女の悲鳴で起こされていたが、ルナは気づいていなかったようだ。

「別に他人の趣味嗜好をどうこう言うつもりはないけどね、やるならもっと人目につかないところでやりなさいね? というかヤりなさいね?」

「え……はっ!? ちがっ、違います! 誤解です!!」

「……やるって何を?」

「え、マジで言ってんのコヨーテ……ちょっと引くわ」

「無学で悪かったな」

「親父さんどういう教育してんのよ……」

「コ、コヨーテは知らなくていいものです!」

「――お前らうるせぇんだよ! とっとと寝ろ! 今何時だと思ってやがンだ!!」

「ひゃあごめんなさいっ!」

 バリーに怒られて、『月歌を紡ぐ者たち』のハマオ村での夜は更けていく。


To Be Continued...  Next→

第三八話:『正義の精霊』  

 事の発端はレンツォが見つけた一枚の貼り紙だった。
 それは依頼ではなく治安隊からの手配書で、とある連続失踪事件についての情報提供を求める内容が書かれている。
 その中でももっとも目を引くのはやはり謝礼金だろう。
 情報を提供し、失踪者が発見された場合はなんと銀貨二〇〇〇枚という大金が支払われるのだ。

「確かに謝礼は魅力的だが、治安隊では解決できない難事件という事だろう。当てがあるならともかく、ゼロから調査するくらいなら地道に他の依頼を探すべきだと思うぞ」

 宿の亭主エイブラハムの言葉である。
 至極その通りであるし、そもそも近頃の『月歌を紡ぐ者たち』はさほど金銭に困っていない。
 稼げる内に稼ぐ事も大事だが、確実性に著しく欠ける場合は話が別だ。

 そう、逆を返せば確実な何かがあれば事情は変わるのだ。

「実は私、犯人を目撃したんです。失踪者たちの居所も知っています」

 そう言ってのけた、燃えるような赤い髪と瞳をもつ少女は柔らかな笑みを湛えて礼儀正しく座っている。
 自分で治安隊に通報するべきではないか、と問いただしてみても事情があってできないのだという。

「その理由は依頼を請けてくれたら話します。本来ならこちらが情報料を頂ける話だと思いますが、依頼を請けてくれるなら一切要りません。それに事件解決の暁に治安隊から支払われる謝礼も全て差し上げます」

 一言で表すなら美味すぎる。
 綺麗な薔薇には棘があるように、美味い話には裏があるものだ。
 『月歌を紡ぐ者たち』はお互いに顔を見合わせて眉をしかめた。

「でも見返りは大きいよ?」

 謝礼に目がくらむレンツォはなおも食い下がる。
 どの道、信用に値するものか否かは話を聞いてみなければ判断のしようがない。

「そもそも、君は何者なんだ?」

「私は街灯に宿る火の精霊、名はフィルと言います」

「……精霊?」

 フィルと名乗った女性はにっこりと笑って、燭台に灯されている蝋燭の火に手をかざした。
 彼女を除く全員が息を呑むが彼女は笑顔を絶やさない。
 手を焼かれているにも関わらず、だ。

「これで火の精霊である事の証明になれば良いんだけど」

 おもむろに引き戻したその手には火傷の痕は一切見られない。
 彼女ははにかむように微笑んでいるが、説得力は十二分にあった。

「私は防犯も務める街灯の精霊として悪を成敗したいだけ。この依頼、引き受けてもらえませんか?」

「その心意気は立派だが……」

 コヨーテはちらとバリーの様子を伺う。
 彼は何も言わずに肩を竦めた。
 少なくともさっきの芸当は魔術や奇術の類ではない、判断は任せると言ったところだろうか。

「分かった。その依頼、オレたちが請けよう」

「ありがとうございます! それじゃ、早速犯人の情報を教えますね」

「あぁ、そう畏まらなくていいぞ。ところで場所は変えなくてもいいのか?」

「構いませ……構わないわ。だってこれから向かうんだもの」

 口ぶりから、どうもその場所はそう遠くないらしい。
 どちらにせよこの場には『月歌を紡ぐ者たち』と宿の亭主しかいない。
 宿の出入り口に注意しつつ、ひとまず話してもらう事にした。

「犯人の名はバルムス。リューン治安隊のエリート仕官よ」

「治安隊員が犯人だと?」

 だからこそ治安隊には通報できなかった、とフィルは続ける。

「彼は職務質問を装って近づき、精神魔法を掛けて人をさらっているのよ」

「……魔法使えンのかそいつ」

「そうみたい。だけどどれくらいの腕前か、っていうのは私には判断できないかな」

 一般的に魔術の腕前というのは形に表れにくいものだ。
 ある程度の実力を持つ魔術師が観察して初めてその力の一端を測る事ができる。
 いくら火の精霊とはいえ、そこまで求めるのは酷だろう。

「監禁場所はリューン市外にある空き家よ。その場所まで私が案内するから捕まっている人たちを助けてほしいの。いくら犯人が治安隊の有力者でも、私たちが失踪者を見つけて解放すれば言い訳はできないはずよ」

「さらわれた人は無事なのか?」

「確認はできてないけど……」

「無事だとしても証言できない、あるいは記憶を消されている可能性はないの?」

「なくもねぇなァ。そもそもバルムスが人をさらう理由が分からねぇし。何に使ってンだかな」

 だが、とバリーは言葉を続ける。

「仮に最悪の想像が当たったとしても、その監禁場所を調べりゃボロのひとつやふたつは出るだろォよ。野郎の拠点が他にもいくつかあるってならまだ分からねぇが……」

「その可能性は低いと思うわ。バルムスが他の場所へ被害者を移した事なんてないもの」

「だったら問題ねぇな。とっとと行って済ませちまおうぜ」

 場合によってはバルムスと一戦交える可能性がある。
 近場とはいえコヨーテたちは十分に準備を整えてから宿を発った。



 火の精霊フィルに連れられて向かったのはリューン市外の大通りだった。
 人通りの激しいそこから路地に入った場所に目的の空き家がある。
 唯一の出入り口の扉を開き、コヨーテたちは注意深く屋内へ進んだ。

「……静かですね」

 屋内は薄暗く静まり返っていて人の姿はない。
 奥には扉と地下へ続く階段が見える。
 人の気配はしないものの、コヨーテたちは一階から調べる事にした。

「まぁ、鍵も掛かっていない空き家だし。何かあるとは思えないけどさ」

 奥の扉を開くとやはり暗かった。
 明かり取りの窓も塞がれているようだ。

「油断はするなよ。仮にも魔術師の本拠地に乗り込むんだ」

「つってもここが工房アトリエとは到底思えねぇが」

 いくらなんでもお粗末に過ぎる、とバリーは言う。
 どちらかといえば犯罪者の隠れ家に近いのだから当然か。

「――留守番はしっかりいるみたいだけどな」

 暗がりから放たれた剣の一閃を【レーヴァティン】で受け止め、コヨーテは『それ』を蹴飛ばした。

「こいつっ……!」

 壁に叩きつけられてなおコヨーテに向かっていく『それ』の動きを止めたのはレンツォだ。
 先端に鉤爪がついた縄を投げつけてぐるぐる巻きに捕縛している。
 盗賊王バルセルミが得意とした【捕縛の縄】という特殊な製法で編まれた縄だった。

 身動きが取れない間にコヨーテは接近し、『それ』の首を狩り取った。
 吹き飛んだ首は壁にぶつかって跳ね返り、後方のルナの足に当たって動きを止める。
 無理もないが、ルナは短く悲鳴を上げて後ずさりした。

「これは……スケルトン?」

 跳ね飛ばされた首は人間の頭蓋骨に良く似ていた。
 よく見ればレンツォが縛っていた襲撃者の体もボロ布を纏った人骨である。
 その手には申し訳程度の武装として粗末な剣が握られている。

「スケルトンがお出迎えとはね。ただの空き家じゃないのは間違いないけど」

「問題はなぜこんな空き家に存在するのかってほうだな。こんなモン、ゴーストやウィスプと違って自然発生するようなアンデッドじゃねぇ」

「フィル。バルムスは死霊術にも精通しているのか?」

 コヨーテの問いに、フィルは「分からない」と首を横に振った。
 かじった程度でスケルトンの使役ができるものか、バリーにも分からないらしい。
 実際に相手したコヨーテの感想としてはさほど精度は高くないように感じたが、それだけで判断するのは危険だ。

 念のため、とルナは聖句を紡いでミリアの双剣とチコの矢に【聖別の法】を施した。
 武器を聖別することで不浄な相手を討つ手助けをする祈りだ。
 そしてコヨーテのもつ魔剣【レーヴァティン】も同じく不浄なる者にはめっぽう強い。
 対アンデッドへの備えは十二分と言えよう。

 そのほかに一階には何も手がかりも人の姿もなく、次にコヨーテらは階段を下りていった。
 ややあって地下室に辿り着くが、そこでも大したものは発見できずに、ただ最奥と思しき扉があるばかりだった。

「……当たりだね」

 扉を調査していたレンツォが呟いた。
 彼に促されて格子窓を覗くと扉の先は小部屋になっていて、数人の人影が力なくうずくまっている様子が見える。

「たぶん、あれが失踪者なんだろうね。薄暗くて見づらいけど」

 ともかく救助しよう、とレンツォは鍵穴の観察を始めた。
 失踪者たちを閉じ込めているこの扉にだけは当たり前だが鍵が掛かっているようだ。
 彼の腕をもってすれば少しもしない内に開くだろう、と思った矢先だった。

「足音だ。複数だぞ」

 コヨーテの耳が階段のほうから聞こえてくる音を拾った。
 即座に得物を抜き、コヨーテとミリアは階段のほうへ歩を進める。
 地下室に他の出入り口はなく、場合によっては階段で相手を食い止める必要があるからだ。

 数秒もしない内に、足音の主は階段から殺到した。
 白を基調とした揃いの鎧に身を包んだ彼らは見紛う事なきリューン治安隊である。

「どうやら先客がいらっしゃるようですね」

 先陣を切っていた青年は軽く驚いたような素振りを見せた。
 彼の纏う鎧の質は傍目から見ても他の隊員のものより上等だ。
 恐らくは彼が部隊を率いる士官なのだろう。

「最近、リューンで多発している失踪事件の被害者がこの場所に監禁されているという情報を得ましてね。しかしあなた方のほうが発見が早かったようです」

「……、」

「捜査にご協力ありがとうございます。ここから先は我々の仕事ですので、あなた方はお引き取りください。謝礼金は後日、お支払いしますよ」

「謝礼金? いいのかよ、俺たちが受け取っても」

「ええ、もちろん」

「ほう? 自分で言うのも何だが、明らかに堅気じゃねぇ奴らが失踪者が監禁されている場所で武装してたむろってンのに、俺たちが失踪事件の犯人だとは一切疑わねぇんだな?」

 仕官と思しき青年は笑みを消した。

「失言だったな」

 バリーは笑って、答えあわせだと言わんばかりにフィルへ振り返る。
 彼女は一瞬だけ呆気にとられたような表情を見せたが、すぐに気を取り直して治安隊へ向き直った。

「私たちを追い出して隠蔽工作でもするつもりですか、真犯人のバルムスさん?」

「私が真犯人ですと……?」

「何なら、捕まっている人たちに聞いてみましょうか? 皆、あなたが職務質問をしている最中に意識を失ったと証言するはずよ!」

 まるで演劇の名探偵がそうするようにビシッと人差し指で治安隊員の青年を指した。
 実際に犯行の様子を一部始終見ていたフィルだからこそ自信満々に言い切れるのだろう。

「後ほどあなた方を犯人に仕立て上げようかと思ったのですが……」

 バルムスと看破された青年はくつくつと笑い、

「貴様らはこの場で始末したほうが良さそうだな!」

 パチン、と指を鳴らした。
 それを合図に後ろに詰めていた治安隊員が外套を放り投げ、その下の骸骨顔を顕にした。
 バルムスに付き従っていた彼らの正体はスケルトンである。

「やっぱり死霊術にも手を出してやがったか」

 精神魔法を使うらしいが、専門は死霊術だったのだろうか。
 捕らえた人々は術式の生け贄に使う予定だったのかもしれない。
 どちらにせよ略取誘拐罪と死霊術の行使が明るみに出れば彼が治安隊員という立場を考慮しなくても極刑は免れないだろう。

「大人しく法の裁きを受けろ、バルムス」

「言っても無駄だろ」

「まぁ、最後通牒みたいなものだよ」

「貴様ら――!!」

 余裕の態度が気に食わなかったのか、バルムスが激高した瞬間。
 速攻で距離を詰めたミリアの双剣がスケルトンの首を刎ね、チコの速射によってスケルトンの四肢を正確に打ち砕いた。
 一瞬で従者を失ったバルムスは絶句する。

 そもそもバルムス側は数の上で負けている。
 狭い地下室で前衛がスケルトン二体だけで冒険者たち七名を相手する状況は、ハッキリ言って絶望的だ。
 欲をかいてこの場で決着をつけようとせず、逃走に専念していればまだ違う未来があったかもしれない。

 たとえバルムスが一流の魔術師であったとしても、距離が開いている訳でなく頼れる前衛がいる訳でないこの状況で『月歌を紡ぐ者たち』を止められるはずがなかった。



 バルムスを捕縛した後、地下室に監禁されていた人々を助け出して近くの治安隊詰め所へ通報した。
 被害者の証言によってバルムスの犯行は立証され、治安隊から謝礼金として三〇〇〇枚の銀貨を受け取った。
 一〇〇〇枚が上乗せされていたのは内部犯行だった事のお詫びだという。
 口止め料も含まれているのだろう。

「いやぁ、今回はがっぽり稼げたねぇ」

 謝礼金の額に目を奪われていたレンツォは大満足の様子だ。
 ずっしりと重たい銀貨袋に頬ずりまでする始末である。
 恍惚の表情を浮かべるレンツォは放っておいて、コヨーテはフィルへ向き直る。

「ありがとう、フィル。君のお陰だ」

「いいえ、こちらこそ悪を成敗できてよかったわ」

 フィルははにかむように笑った。
 謝礼金を『自分には必要ない』と一切気にかける様子もなく、大きな利益を得たコヨーテたちのほうが恐縮してしまう。

「第一、バルムスを倒したのはあなたたちよ。私も守られていたし……」

「ルナのお陰で大した相手じゃなかった。それに依頼人を守るのは当然だよ」

「街灯の精霊なのに?」

「あんたが何者だろうが関係ない。オレたちはそういうのは気にしないんだ」

 コヨーテは微笑んで肩を竦めた。
 変わり者の集まりなんだよ、と言いたげに。

「……あなたから、若い火の気配を感じるわ」

「え?」

 フィルは掌に小さな火を生み出すと、そっと息を吹いた。
 ゆらゆらと飛ぶ小さな火の玉はコヨーテの周りを何度か回ると、溶けるように消え去った。
 怪訝な表情のコヨーテに、フィルは優しく微笑む。

「あなたに火と光の加護があらん事を」

「……あ、あぁ。ありがとう?」

「それじゃ、私は街に戻るわね。これからも街灯の精霊として、街を見守り続けるわ」

 そう言ってフィルは手を振りながら街に戻っていった。
 リューンを騒がせていた連続失踪事件は終わりを迎えた。
 この件での『月歌を紡ぐ者たち』の活躍は広く知られる事はなかったが、ある意味では治安隊ともパイプが繋がったとも言える。

 新たな繋がりを結んだ『月歌を紡ぐ者たち』は帰るべき場所へと戻っていった。



【あとがき】
今回のシナリオはアレンさんの「正義の精霊」です。
リューンを騒がす連続失踪事件を精霊と共に解決する短編シナリオですね。
非常によくまとまった短編で、サクッとプレイできますので寝る前にも是非!
ちなみに報酬もガッポリもらえます。おいしい!

登場する精霊さんはNPCとして連れ込みも可能なのですが、月歌では連れ込みませんでした。
『組合』とかと因縁もって好き放題やっている宿に連れ込んでも迷惑だよなぁ……という感じです。
これからも街を見守っていてください……!

そしてついにといいますか、レンツォが盗賊王の技術に手を出しました!
まだ初期スキルの【盗賊の眼】と【盗賊の手】は装備していますが、少しずつ入れ替えていけたらなと思います。
お金余ってるからね、買っていいよレンツォ!

さて、次回は第三九話です。
少し長くなるかな、とは思いますがこちらも結成時からやりたかったシナリオなので書くのが楽しみです!
乞うご期待!

【地下で魔術師と相対するって以前も似たようなシチュエーションあったような】

☆今回の功労者☆
レンツォ。よくぞ請けるまで粘ってくれたな!

報酬:
情報提供の謝礼金:3000sp(お詫び込み)

購入:
【捕縛の縄】-2400sp(風たちがもたらすもの)

銀貨袋の中身→9677sp

≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『正義の精霊』(アレン様)
『風たちがもたらすもの』(Y2つ様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。

第三七話:『解放祭パランティア』 

 先日の依頼を終えた日、リューン近郊は急激に天候が崩れた。
 雨風吹きすさぶ中を好き好んで外出しようとする者は少ない。
 だがそれよりも先日の依頼の最中にルナが病魔に侵された事もあって『月歌を紡ぐ者たち』には休息が必要だった。
 六月に入るまで依頼を請けないと取り決め、それぞれが自由な休日を送っていた。

「で、進展あった?」

 ミリアとルナ、チコの三人はリューン蒲公英通りに存在する『サボテンと黄色い花』というオープンテラスのカフェで朝食を摂っていた。
 たまには女子だけで、という理由で誘われたのだが本当の目的はそちらだったか。

「……何の話です?」

 一応すっとぼけてみたが、ミリアはじっとりとした視線で睨んでくる。

「看病イベント的なものはなかったの?」

「ないですよ、もう……」

「ん? 何で元気なさげなのよ。何かあったの?」

「何もなかったんですよ」

 察したようにミリアは引き下がった。
 ルナにしてみれば熱にうなされてただ夢を見ていただけで、実際には手を繋いだだけであって。
 その後も仕事でドタバタしていてコヨーテともあまり話ができていない。

「じゃあさー、もう今日動かないとダメじゃん? 明日からまた仕事するんでしょー」

 黙々とフレンチトーストを胃袋に収めていたチコが口元を拭きながら言う。
 ちなみに彼女はホットサンドをすでに二皿も平らげている。
 食べ盛りとはいえさすがにちょっと食べすぎじゃないかと心配になってくる。

「でも、どうすればいいのか……」

「それよね。いつもいつも女子のほうが相手をどう誘うか考えなくちゃいけないなんてありえないでしょ」

「だってそうしなきゃ……」

「だーかーらー、次からはコヨーテから誘ってもらえるように今回がんばれってことだよー」

 この仲間たちは平然と無茶を言う。
 というか他人事だからと楽しんでいる節さえある。

「いい、ルナ? あんたは今でしか使えない最強の切り札を持っているのよ。」

 ミリアが言っているのは以前の請けた依頼の最中にコヨーテと取り交わした約束の事だ。
 多少ミリアの中で話が膨らんでいる気がするが、一応は確かに約束はある。

「この期におねだりしておかないと次のチャンスがいつ来るか分かったものじゃないわ」

「うーん……わ、分かりましたよ」

 確かにミリアの言うとおり休日なんて次にいつ訪れるか分からない。
 それ以前に冒険者という職業で明日の命があると保障できる術は何もない。

「でもさー、休日なのはみんな一緒だし、コヨーテって今日あいてるのかなー?」

「……あ、」

 当たり前の事がすっぽりと頭から抜け落ちていたルナは、急いで会計を済ませて『大いなる日輪亭』へ向かった。
 表通りは昨日の雨が嘘のように水が捌けている。
 これなら急いで走っても裾を汚す心配がない。

 宿に辿りつくまでそう時間は掛からなかった。
 やや乱暴に扉を開け放ち、一階の酒場に視線を巡らせる。
 驚いた様子で宿の娘さんがこちらを見て目を瞬かせているのが視界に入った。

「ルナさん? どうしたんです?」

「コ、コヨーテは……?」

「コヨーテさんなら少し前に出かけましたけど」

「えー!!」

 ルナはがっくりと膝から崩れ落ちた。
 まさかの戦う前から試合終了である。

「でも、ルナさん宛てに伝言預かっていますけど」

「え!?」

「『パランティアに先に行っているから後から追いついてほしい』って」

「パランティア?」

 宿の娘さんはボードから貼り紙を取ると、それをルナに示して見せる。
 それは依頼の貼り紙ではなかった。

「木漏れ日通りで一日限りのバザー……ですか?」

「そう、年に一度しか開かれないすっごい大きなバザーなんですけど……知りませんか?」

「……お恥ずかしながら」

 ルナは一年前まで修道院で生活していた身だ。
 あまりそういったイベントには関わりがなかった。

「かなり大きな催し物で、色んな国から掘り出し物が集まる一種のお祭りみたいなものですよ。うちの宿の冒険者さんたちも結構な人数がパランティアに出かけるそうですよ」

「だから今朝はがらんとしているんですね」

「まぁ、お祭りですからね。朝食もそちらで摂ろうとする人が多いんですよ。私も行きたいのにお父さんが許してくれなくて……ガッデム」

 ものすごい黒いオーラを纏う娘さんがそこにはいた。
 あまり関わるとものすごいとばっちりを受けそうで、ルナはそっとその場を後にしようとする。
 しかしルナは知らなかった。

「バザーに行くならちょっと頼まれてくれません?」

 宿の娘からは逃げられない!

「ひっ……、え、えっと……何をです?」

「新しい髪飾りが欲しいんですよー! お願いします、すっごい感謝するから買ってきて?」

 宿の娘の一見裏表のなさそうな純真無垢な笑顔攻撃が炸裂。
 ルナは一切逆らえない。
 窮したルナの首を縦に振る攻撃によって全てが決着した。

「じゃ、頼みましたよ。おみやげ楽しみにしてるから! いってらっしゃい!」

「は、はぁ……」

 半ば放り出される形で、ルナは宿を出た。
 コヨーテの呼び出しとあっては断る理由なんかない。
 それに初めて見るバザーというものがどんなお祭りなのかにも興味がない訳ではなし。

「……でも、追いつけと言われてもコヨーテはどこにいるのでしょう?」

 事態は早くも前途多難な様相を呈している。

 そんなルナが会場についた頃にはすでにバザーが始まっていた。
 リューンの街でも有数の大きな広場ではあるが、それを埋め尽くすほど大勢の人が歩いている。

「これは……、下手すれば迷子になって一日が終わってしまいますね……」

 などと早々に途方に暮れていると、

「おう、どうしたお嬢ちゃん。どうやらどこに行ったらいいか分からねえって顔してるな?」

 やたらとチャラチャラした若い男がそう話しかけてきた。

「あんた、運がいいぜぇ。この会場で一番の情報通のこの俺様に出会えたんだからな」

「は、はぁ……? つまり物知りさんという事ですか?」

「おうよ。知りたい事があったら聞いてくれ。ま、情報によっちゃ代価を頂く事もあるがな」

 胡散臭い感じもするが、ルナはその言葉に甘える事にした。
 正真正銘、右も左も分からない状態だ。
 せめてコヨーテが立ち寄りそうな場所を聞いておかないとどうしようもない。

 若い男は親切にも丁寧にバザーについて教えてくれた。
 売り場は大まかに分類して武具区、道具区、書物区の三つに分かれているらしい。
 また時間帯によって地区ごとに安売りの時間が訪れるとの事で、これもコヨーテを探すのに一役買ってくれるかもしれない。

 若い男と別れ、ルナは売り場へ向かって歩き出した。

「そういえばうちの冒険者も来ているんでしたっけ……誰かに会えるといいな」



 ルナがまず訪れたのは武具区だった。
 というのも、三つの地区の内もっとも彼が興味を示しそうな場所がここだっただけだ。
 武具区という事もあってか、一般人より冒険者や傭兵のほうが多い印象である。

「こんなに人が多いなんて……」

 世界中の荒くれ者が集まってきたような光景にルナは軽く眩暈を覚えた。
 長身で筋肉質な男性が多いせいか、ルナの視界はほとんど塞がれている。
 『大いなる日輪亭』の中でもルナの身長はかなり低いほうだ。

 そしてコヨーテもそれほど身長が高いほうではない。
 どこかで誰かが「大きなお世話だ」と言ったような気がしたが、気のせいだろう。

「おや? これはこれはルナちゃんじゃあないか」

 呼ばれた気がして振り返ると、そこには同じ『大いなる日輪亭』の冒険者マーガレット・ヤンガーがいた。
 相変わらず白いというより蒼白な顔色ながらも笑みだけは絶やしていない。
 本人としては親しみやすいつもりでやっているらしいが、正直ちょっと怖い。

「一人かい? 珍しいねぇ」

「マーガレットさんもお買い物ですか?」

「うん。レギウスと出かけようとしたら置いてかれたんだよ」

 何もかも諦めたように乾いた笑いを漏らすマーガレットはなんだか黒いオーラを纏っていて非常に不気味だった。
 あんまり触れないほうがいいと感じたルナは愛想笑いするしかなかった。

「ま、冗談だけどね。本当はちょっとした戦力強化さ」

「戦力強化?」

「またいつどこであの吸血鬼どもと刃を交える事になるか分からないからね。冷やかしがてら使えそうなものでも探そうかと思ったんだよ」

 ロスウェル五月祭に起きた吸血鬼による大規模テロ、通称『紅蓮の夜』。
 マーガレットはそこで『吸血鬼の組合』の吸血鬼メアリー・スポットライトと死闘を繰り広げていた。
 彼女ほどの使い手が決着をつけられなかった相手が、更にこちらを狙っているとあれば対策を練るのは当たり前か。

「……何か、目に付くものはありました?」

「いーや全然。さすがに大鎌まで扱ってるところは少ないよ」

 肩を竦めてマーガレットは笑う。
 彼女が扱う大鎌はいわゆる特注品らしく、彼女に合わせて造られているらしい。
 それを越える品となればそうそう見つかるものではないだろう。

「まぁいいのさ。それより君のほうはどうなんだい?」

「いえ、実はまるっきり買い物に来たという訳では……あの、コヨーテを見ませんでしたか?」

「コヨーテ君なら泥棒の少年を捕まえたとか何とか、また妙な事に巻き込まれていたようだったけど」

「うっ、いつものコヨーテ……! ど、どちらへ言ったか分かります?」

「それもだいぶ前の話だしねぇ。今頃は別の地区かもだよ」

 とはいえコヨーテが辿った道筋を知っていたほうが会える可能性がある。
 大雑把に方向を教えてもらったルナは律儀に礼を述べて駆け出した。

「……会えるといいねぇ、せっかくのお祭りなんだしさ」



 ややあってルナは道具区を訪れていた。
 マーガレットから聞いた方向へ彷徨ってはみたもののやはり収穫はなく、仕方なしに流れてきた按配である。
 武具区とは違って、こちらは一般人も多く見られた。

 だからといってコヨーテを探しやすいという訳ではない。
 むしろ様々な背格好の老若男女が入り混じっていて余計に分かりにくい気がする。

「あっ、そういえば娘さんから髪飾りを頼まれていましたね」

 とはいえルナは自分のセンスなど微妙もいいところだと思っている。
 ゆえにアクセサリーを専門に扱う店にあっても特に目を引くそれを手にしてもしばらく悩む羽目になった。

(……似合うとは思うのですが、派手すぎでしょうか)

 天使の羽をイメージしたような髪飾りは、高慢そうな美人の女性店主曰く「冒険者の男からの貢ぎ物だけど地味だからいらないわ」だそうだ。
 それを聞いて色々と思うところはあったのだが結局は娘さんに似合うはず、というインスピレーションに従って購入を決意した。
 散々言われている髪飾りではあるが銀貨二〇〇枚と結構なお値段だったが、いつもお世話になっているお礼と思えばそう高い買い物でもない。

「ほら、やっぱりルナだよ!」

「おー、ほんとだ。目ぇいいねレンツォ!」

「……はい?」

 人混みのずっと向こうから聞こえてきたのはやたらと聞きなれた声だった。
 というより片方が名前を喋っていたが、いくらなんでもこんな人混みの中で大声を出さないでほしい。

 『大いなる日輪亭』の冒険者レンツォ・ディ・ピントとカイル・ヘイウッド。
 どちらも盗賊の役職を専門とする冒険者で、別パーティではあるがやたらと仲のいい二人である。
 この二人が絡んでいると大体は軽い悪事に手を染めていたりもするが、今回がそうでない事を切に願うばかりだ。

「へぇー、ふーん。ルナさんでもこんなところに来るんだ?」

「カイル君……私を何者だと思っているんですか」

「箱入りのお嬢様でしょ?」

「そりゃ昔の話だよ。今じゃ立派に僕らと同レベルさ」

「……その通りですけどなぜかレンツォに言われるとちょっぴり腹が立ちますね?」

 テンション高めに笑って、レンツォは冗談だよと言葉を濁した。

「でもまぁ、意外に思ったのは一人でいる事なんだけどね。ミリアたちは一緒じゃないのかい?」

「朝食後にはみんなバラバラに別れまして」

「ふぅん?」

 レンツォは明らかに訝しがっている様子だ。
 確かにルナは一人で外を出歩く事は多くない。
 とはいえ、まったくない訳ではないのだ。
 何か別の思惑があると思われるのは少し心外である。

(いや、別の思惑というか理由があるのは間違いないのですけれど)

 しかしそれを明かす事はできない。
 コヨーテへの想いは大っぴらにしていいものではないだろう。
 それがあちらからの誘いだとしても、妙な誤解を与えそうな言動は慎むべきだ。

 ルナは手に持った紙袋を掲げた。
 それには先ほど購入した髪飾りが入っている。

「宿に戻ったら娘さんからお土産をねだられたのです」

「うわぁ、マジか。よかった、こっそり出て……」

「レンツォも日頃のお礼を兼ねて買ってあげたらいいのでは?」

 と言うと、レンツォは露骨に嫌そうな顔をした。
 何もそこまで嫌がらなくても。

「ルナさんは自分のは何か買ったりしなかったの?」

「ええ、目的あって来た訳ではありませんし」

「まぁ、雰囲気を楽しむだけでもいいかもね。ぶっちゃけハズレも多いからね」

 彼らは盗賊の鑑定眼を用いて品定めをしているらしい。
 だからなのか、彼らの背負う荷物袋のはいつもより膨らんでいるように見える。

「どうせだし、ルナさんが買ったそれも鑑定したげよっか?」

「結構です。贈り物ですし、こういうのは気持ちが大事なのですから」

「そう? タダでいいのに」

 カイルは早速取り出していたルーペを仕舞いつつ言った。
 お金にがめつい彼が無料で鑑定しようとするとは、よほどの収穫があったのだろうか。

「ところでコヨーテを見ませんでしたか?」

「少し前に見たけど、あいつ昼食を摂るって言ってたからもうこの辺にはいないと思うけど」

「もうそんな時間でしたか……ちなみにどちらへ行ったか分かります? 私もお昼にします」

 何だか言い訳じみた言葉を付け足してしまったが、とにかくコヨーテの足取りは掴めた。
 それが無駄骨に終ってしまう前に動くべきだ。
 ルナはやや急ぎ足でレンツォの指した方向へ向かった。

「……あんなに急ぐなんて、そんなにお腹減ってたのかな」



 書物区を歩くルナは元々少ない口数が完全になくなっていた。
 とにかくコヨーテに会おうと必死に足を動かし続けていたが、どうあっても見つからない。
 そうこうしている内に、完全に食事のタイミングを見失った。

「………………」

 お昼時を過ぎた辺りから撤収していく人々が増え始めていた。
 人の入れ替わりが激しくなって余計に区別が付きづらくなっている。

 とはいえ書物区だ。
 商っている品は古書が多く、中でも魔術書と思われる書物がところ狭しと並んでいる。
 そのせいか、客層は魔術師のみならず冒険者たちも多い。
 中にはローブを目深に被ったいかにもな人物や、魔女然とした老婆まで、怪しさはこれまでの区の比ではない。

「はぁ、」

 思わずため息がこぼれた。
 朝からコヨーテを探してずっと歩き詰めなのだ。
 さすがに辟易してしまう。

「……コヨーテの、ばか」

 周りは嫌になるほど騒がしく、その言葉は誰の耳にも入らない。

(あんな伝言を残しておくなら、待ち合わせ場所も決めていてくれたらいいのに)

 そうすればこんなに歩き回らなくても済んだのに。
 考えれば考えるほど気分が落ち込んでくる。

 どれもこれも、全部コヨーテのせいだ。

(こんなに疲れているのも、こんなに空腹なのも、……こんなに会いたいのも、全部)

 結局、ルナはあの伝言がなくてもここに足を運んでいただろう。
 同じように会場を巡りながら彼の後を追って、同じように辟易していただろう。

 何も変わりはしなかった。
 ただひとつ、コヨーテの伝言があった事でルナの心に光が差した事以外は。

「……だったら、諦められませんよね」

 俯き気味だった顔を上げ、さぁ一歩を踏み出すぞ、といったところでルナは固まった。
 目の前にピンクのドレスを纏い、頭の大きなリボンが特徴的な女の子がこちらを見ていたからだ。
 『大いなる日輪亭』の冒険者、クロエ・キャンベルである。

「ルナさんはずいぶんと大きなひとりごとをされるですのね? わたくしおぼえましたわ!」

「いやいやいや! 忘れてください今すぐにっ!!」

 ぎゃー! と叫んでルナは必死に否定した。
 そんな純粋な瞳で他人を独り言の多いカワイソウな人だと思わないでほしい。
 割と切実に。

「……こほん。ええと、クロエちゃんもお買い物ですか?」

「はいですの。ししょーはまだ出歩くにははやいですし、わたくしが代わりに呪文書をあさってるですの」

 クロエの言う『ししょー』とは『大いなる日輪亭』の冒険者レギウス・エスメラルダの事だ。
 彼は『紅蓮の夜』においてロスウェルの街と人を守るために、自ら左眼を犠牲にしていた。
 治療は十分に行い、現在は休養とリハビリに専念しているが、未だに失った左眼が疼くらしい。

「ごめんなさい。聖北の奇跡も万能ではないから……」

「いえいえ、ししょーが生きていられるだけでもありがたいですの。それに、あのうしなった左眼はししょーがロスウェルを救った証明ですの。いうなら名誉のキズですの!」

「クロエちゃんは強いですね」

「それほどでもないですの!」

 真剣な表情をしていたかと思うと、一気に表情が綻んだ。
 ころころと変わる表情が愛らしく思える。

「さて、わたくしはそろそろ宿にもどりますわ。コヨーテさんからおみやげもいただきましたし、はやく帰らなきゃですの」

「――はい? え? コヨーテに会ったんですか? いつ? どこで? どこへ行きました?」

「ちょ、ルナさんこわいですの! ちょっとはなれてですの!」

 聞き捨てならない言葉につい力が入ってしまった。
 クロエの肩をがっしと掴んでいた手を解いて、深呼吸して心を落ち着かせる。

「ついさっき、会場外でみかけたからごあいさつしたですの。そうしたらおみやげにってお肉の串焼きをいただいたですの。ちょっとさめちゃってるですの」

「さっき? という事は、まだそこにいるんですか?」

「さぁ、そこまでは……でも、どこか元気がなさそうでしたしつかれて休憩しているかもですの」

 ここにきて一気にコヨーテに近づく情報が得られるとは思わなかった。
 クロエから件の場所を聞き出すと、疲れと空腹も忘れたルナは足早にその場所へ向かった。

「……はっ、なにやらお役にたてた予感がいたしますの!」



 会場から少し離れたところにある小さな公園には立派な広葉樹が聳え立っていた。
 その幹に背中を預けて座り込んでいるのは、銀髪赤眼の少年だ。

「探しましたよ」

 半日ぶりに見たその顔は、ルナの記憶の中と一切変わらない。
 だのに、何だかいつもと違う雰囲気を纏っているように感じられた。
 どこか緊張している様子だ。

「ああ……来てしまったか」

「? あなたが呼んだのでは?」

「いや、こっちの話だよ」

 コヨーテ・エイムズは視線を逸らして黙ってしまった。
 まるで出すべき言葉を探しているように、彼の視線は彷徨っている。
 やがて彼が選んだ言葉は、

「座りなよ」

 という、引き伸ばしだった。
 コヨーテは外套の裾を広げて「どうぞ」と促すので、ルナは素直にそこへ腰を下ろす。
 しばしの沈黙が流れる。

「迷っていたんだ」

 ややあって彼が口を開いた。

「迷子ですか?」

 茶化すつもりはなかったが、コヨーテは少しだけ微笑んで否定する。
 コヨーテを探して右往左往していたルナこそが迷子気味だったのでつい口に出てしまっただけだ。

「怒らないでほしい。……オレは、君に会うのを迷っていた」

「それって、どういう……?」

 これは単なる世間話ではない、と感じた。
 何か重要な、それもルナの想いに影響の出るような何かの話だ。
 そう感じた瞬間、ルナの心臓が早鐘を打ち始めた。

「一方的に呼び出しておいて不躾だとは思う。だけど、なかなか踏ん切りがつかなかった」

「……、」

「ルナ」

 コヨーテはまっすぐにルナの瞳を見つめた。
 このまま破裂してしまうんじゃないか、というくらいに心臓が伸縮を繰り返す。

「オレは……、」

 心臓の音がやたらと大きく感じるのに、コヨーテの声だけはクリアに聞こえた。
 周囲の雑音、少し遠くには未だ大盛況のバザー会場があるというのに。

 コヨーテは意を決したように、

「――オレは君の事が知りたい」

「っ……!」

 ろくに言葉も出なかった。
 もしかして、という妄想が頭の中を駆け巡っていく。
 ルナはひたすら荒くなりつつある呼吸を繰り返すだけで、コヨーテの言葉をただ待つしかない。

「何が好きなのか、何が嫌いなのか、何が嬉しいのか、何が悲しいのか、……君の過去に何があったのか。聞かせてほしい」

「っ、どうして……」

 ようやく出せた言葉は、未だに現実を疑っていた。
 つくづく臆病すぎる自分が嫌になる。

「どうしてだろうな……いや、きっとオレは後悔したくないんだ。何も知らないまま、不変のまま生きていくなんてオレにはできない」

 その答えはルナが聞きたかった事とは少し違った。
 だとしても嬉しかった。
 想い人が自分に興味を持ってくれただけでも、飛び上がるほど嬉しい。

「もちろん、話したくないなら無理にとは言わない。誰にだって話したくない過去はあるからな」

「いっ、いいえ! 嫌じゃないですっ!!」

「……何か無理してないか?」

「そんな事ないですから! ……あっ、でも条件があります」

 ふとした思い付きだが、それはとても魅力的な条件に思えた。
 コヨーテはきょとんとした表情で次の言葉を待っている。

「その、……私もコヨーテの事が知りたいのです」

「オレも話せ、と?」

 コヨーテは驚いた表情で目を瞬かせている。
 そんなに予想外の言葉だったのだろうか。

「……あまり人に話しても面白い話はないと思うぞ」

「構いませんよ。私も似たようなものですし……」

「分かった。その条件を呑もう」

 そう言って、コヨーテは微笑んだ。
 心なしかその表情はいくらか和らいでいる気がする。
 この場で会った時に見せていた緊張したような雰囲気はどこかへ消え去っていた。

「……コヨーテ、覚えていますか? 少し前に交わした約束」

「あぁ、あったな。むしろそちらが忘れているかと思っていたよ」

 優柔不断ですみません。

「あ、あのですね。現在はともかく、過去の事を話すのはあまり聞かれたくない事もありますから……できれば、二人きりがいいのです」

「……そんな事でいいのか?」

 いいに決まっていた。
 あんなに軽い口約束だったし、それで悩みっぱなしになるくらいならいっそ流れに任せたほうがずっといい。

「もう少しわがままを言ってもいいのなら、誘うのはコヨーテからにしてください」

「いいのか? オレだけ一方的に……」

「言い出したのはあなたですよ?」

 うぐ、とコヨーテは言葉を詰まらせた。
 そんなに頑なにフェアにしようとしなくてもいいのに。
 しかしそんな彼だからこそ、ルナは一緒にいて心地よいと感じるのだろう。

「あはは、安心したらお腹が空きました。そういえばお昼抜きになっちゃったんですよね」

「オレも結局食べられなかったんだよな……」

「あれ? クロエちゃんにお肉の串焼きを渡したって聞きましたけど」

「……喉を通らなかったんだ」

 そう言って、コヨーテは鼻の頭を掻いた。
 照れている時、彼はそういった仕草をする癖があるのは知っている。

「それじゃ、少し遅いですけどお昼ご飯、行きましょうか」

「オレの奢りで?」

「もちろん!」

 だってコヨーテのせいだから。
 こんなに嬉しいのも、こんなに楽しいのも、こんなに満たされているのも、全部コヨーテのせいだから。

 その代わり、コヨーテのおかげで今日も笑って生きていけたんだ。



【あとがき】
今回のシナリオはチーム ニルヴァーナ(Djinnさん、Y2つさん)さんの「解放祭パランティア」です。
アイテムやスキルを購入するのに目に見える情報は圧倒的に少ないという一風変わった店シナリオです。
しかも一回こっきり、まわる順番によって変動する商品……などなど、イベント感あふれる作品ですね。
盗賊PCが輝きますよ!

今回は単純にPCを強化したかったのと、コヨーテとルナの関係を少し進めたかったのです。
お互いに気にしていながらも一切動きませんでしたからね……それも第三六話の出来事がきっかけとなりました。
そして数話前から残っていたルナのおねだりも消化しました。

ちなみに結構な数のPCが舞台裏で動いていました。
月歌の外からはカイル、ターニャ、マーガレット、エリック、クロエ、ガイア……
それぞれが同時にシナリオに突入したていで進行したので、パーティ間での品物移動は行っていません。
結果は下のほうに記載しています。

冒頭に出てきた『サボテンと黄色い花』は某小説に出てきた某所です。
詳細な説明は作中時間で一ヵ月後くらいに……桜林さんありがとうございます!!(唐突)

さて、次回は第三八話です。
大雑把にしか方向性を決めていないのでどう転ぶか分かりません。
乞うご期待!?

【地味に月歌はプラマイゼロ】


☆今回の功労者☆
レンツォ。さすがの鑑定眼で大儲け!

購入:
・月歌(収支:±0sp)
【黙示録の剣】-600sp
【ナブラの竪琴】-500sp → 2000sp
【金鉱石】-200sp
【巨大な赤石】-500sp → 【金鉱石】
【抗魔の髪飾り】-200sp → 【刹那の閃き】、【高潔の光】

・星追(収支:-3300sp)
【逆刺の十字架】-300sp → 【悪意のナイフ】 → 【マンドラコラ】 → 【エア・ウォーカー】 → 【聖・ジュエル】 → 【疾風】 → 【「無」の法】
【魔法薬】-500sp
【盗賊王の地図】-100sp → 100sp
【聖絶対退魔光】-1500sp(セール中) → 【シャイ・リング】
【曙光の法】-1000sp(セール中) → 【ミューズの涙】

・陽光(収支:-2200sp)
【白銀の麗刀】-1500sp → 【還魂の法】
【還魂の法】-700sp(セール中) → 【寡黙の戦士】


銀貨袋の中身→9077sp

≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『解放祭パランティア』(チーム ニルヴァーナ様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。

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周摩

Author:周摩
しがないリプレイ書きのブログです。

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当ブログはリンクフリーです。報告は不要ですが、あれば相互リンクさせていただきたいと思います。

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