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2011年06月の記事一覧

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PC4:チコ 

 そこは交易都市リューン。時は昼前。
 『大いなる日輪亭』は早朝の慌しい時間を、何事も無く終えていた。

「驚いたぜ、聖北の僧侶だったとはな……」

 ルナと顔を合わせたバリーは、開口一番こう言った。

「そう言うあなたは魔術師でしょう? お互い様じゃないですか」

 ルナはむっとして、そう言い返す。
 値踏みするような目で、じろじろ見られたことが気に障ったらしい。

「貴重の度合いが違うんだよ。
 魔術師を探すより、僧侶を探す方がよっぽど難しい。
 自分から冒険者になろうとする僧侶は少ないからな。

 だが、仲間にできればそれほど心強いものもない。
 それだけ教会の影響力は強いし、癒しの秘蹟は冒険者にとって生命線なんだ」

「……物知りですね」

 ルナは何も言い返せなくなった。
 そもそも世間知らずのお嬢様であるルナが、知識でバリーと口論などできるはずがない。

「ともかく、貴重な魔術師と僧侶がパーティにいるんだ。
 仲間集めはそう難しくないかもなァ」

 冒険者は基本的に五人か六人で一組のパーティを組む。
 中でも必須の役職が『戦士』『魔術師』『僧侶』『盗賊』である。
 バリーらは既にその内の二つを手にしているため、残るは『戦士』と『盗賊』が必要だった。
 中でも『戦士』は前線で戦うため、できれば複数名が望ましい。

「バリー、実はそのことで相談があるんだが……」

 親父さんが二人分の紅茶をカウンターに置いた。

「……何だよ、また推薦か?」

「不満があるのか?」

「いんやァ、別に。
 ただ、あまりにも世話を焼きすぎじゃないかと思ってな」

「……相変わらず鋭い奴だ」

 親父さんは苦虫を噛み潰したような表情を見せた。
 図星か、とバリー内心で呟いた。

「コヨーテを仲間に加えてやって欲しい。
 あいつは、こんな小さな冒険者の宿の下男で終わるような男じゃない。

 今の俺ではもう力になれない。
 これからのあいつには、共に成長する仲間が必要なんだ」

 親父さんの表情は真剣そのものである。
 我が子かわいさの頼みではないのだろう。

「……俺は構わねぇけどよ」

 バリーはコヨーテの実力を知らない。
 チンピラ数人を一人で打ち倒した、といった噂はよく耳にしていたが、真実は知らなかった。

 とはいえ、火のないところに煙は立たないものだ。
 親父さんが薦めるほどの実力は持ち合わせているのだろう。

「だが、本人はどう思ってんだよ。
 あいつにだって仲間を選ぶ権利はあるだろうが。
 仲間にして欲しいってんなら、当の本人と話がしてぇんだがな」

「あ、あぁ……悪い」

 親父さんは頭を下げ、あまりにせっかちな自分を恥じた。
 すぐさま、コヨーテのいる厨房へと向かって声を掛ける。

「何だ?」

 厨房から顔を出したコヨーテは、昨日と同様可愛いエプロンを身に着けている。
 バリーは既に見慣れていたが、ルナはそのギャップにがっくりと脱力する。

「俺達と組むつもりはないか?」

 親父さんが口を開くよりも早く、バリーが問いかけた。

「え? え? コヨーテさんって、冒険者だったんですか?」

 ルナが素っ頓狂な声を出す。
 どうやら親父さんは、ルナにもコヨーテの紹介をしていないらしい。

「悪い、紹介を忘れていたな。
 こいつはコヨーテ。俺の養子だ。
 今でこそ宿の手伝いをしているが、一応冒険者として登録してある」

「……そうだったんですね」

「ハ、びっくりするだろ?
 こんな格好した奴が冒険者なんだからな」

 バリーはコヨーテのエプロンを指して笑った。
 確かに、そのエプロンは世間一般の冒険者ならば絶対に着用しないだろう。

「いいえ、それなら納得できるんです。
 むしろ宿のお手伝いさんって言われた方が驚きました」

 ルナはそう言って微笑んだ。

「どういうことだ?」

 不思議に思ったバリーは、疑問を投げかける。

「実は昨夜、ここへ来る前に一度会っているんです
 うっかり裏路地に迷い込んだ私を、暴漢から救って下さったんですよ。
 正直、何が起こったかはよく分かりませんでしたが、助けて頂いたことは事実です。

 ……あの時は、本当にありがとうございました」

「オレは通りすがっただけだ。
 礼ならあの場にオレの足を向けさせた、君の神にするといい」

 コヨーテは恩を売る男ではない。
 その謙虚な態度は、嫌味と受け取られることのない清々しさがある。

「それで、コヨーテ。答えは?」

 バリーが先の問いに対する答えを促す。
 暴漢程度なら撃退できる実力があることは分かった。
 ならば少しでも知った者がいた方が、パーティとしてはやりやすい。
 冒険者に必要なのは、個々の能力よりも結束力だからだ。

「そうだな、オレは――」

「お父さん、あの子が目を覚ましたわよ」

 階段を下りてきた娘さんが、コヨーテの答えを遮ってしまった。
 全員の目が、階段へ向けられる。
 先ほどバリーが拾ってきた少女が、手を引かれながら階段を下りていた。

「あー、助けてくれた人だ!」

 少女はバリーの姿を見つけると、笑顔で駆け寄ってくる。
 だが、途中で足がもつれて転んでしまった。

「おい、大丈夫かよ?」

 見兼ねてバリーが手を貸す。

「……そういえば、お前腹減ってるんだっけか?」

「うん、ぺっこぺこ」

 その会話にやれやれと頭を振ったコヨーテは、厨房へと入っていった。
 ルナと親父さんは、突然の展開に目をぱちくりさせて呆けてしまっている。



「んー、おいひい!」

 少女は口一杯に、パンを頬張った。

「落ち着いて食えよ、誰も取りゃしねぇから」

 バリーは呆れ顔で紅茶を啜っている。
 相当腹が減っていたらしく、食い方が汚い。
 ソースやらがほっぺに付くと、『女の子なんだから』とルナは献身的に拭いてあげていた。
 厨房からは、コヨーテがスープのおかわりを持ってくる。

「……で、どうしてあんなところで倒れてたんだ?」

「んーとね、リューンには冒険者になりたくて来たの。
 だけど、途中で野犬の群れに襲われちゃって……」

「怪我してるんですか?」

 ルナが心配そうに聞く。

「怪我はないよー。
 二、三頭射抜いたら大人しく逃げてったから」

 少女は腰に下げた弓を軽く叩いて言う。
 その弓も手製らしく、かなり無骨な作りになっている。

「だけどさ。あの野犬達、私の食料を奪って逃げちゃってねー。
 食べるものもなくなって、お金も持ってなかったからどうしようもなくって」

「ちょっと待て、本当に無一文なのか?」

「うん、村を出るときからお金は持ってなかったよ」

 飄々と言ってのける少女に、バリーは絶句した。
 この少女は銀貨も持たずに交易都市たるリューンに赴いたのだ。
 今彼女が飲み食いしている食事にも代金が必要だということを分かっているのだろうか。

「……君の村は、どこにあるんだ?」

 新たに追加のミートパイを運んできたコヨーテが訊ねた。
 チコは次々と料理を運んでくるコヨーテに感謝の言葉を述べつつ答えた。

「えとね、ロスウェルって知ってる?
 その街の少し南に下ったところにある、ちっぽけな村だよ」

「深緑都市ロスウェルか、結構な距離だな。
 それで、君はそこからどうやってリューンまで辿りついたんだ?
 路銀も持たないのなら、どこかに泊まることもできなかっただろう?」

 コヨーテは興味津々、といった様子で問いを続ける。
 少女はミートパイを頬張り、咀嚼しながらこめかみに指をやった。
 どうやら今までを思い出しているらしく、彼女の癖のようなものだろうとバリーは考えていた。

「この時期、山に入れば多少の食料は確保できるよ。
 村を出るときにある程度の保存食は持ってたし、無ければ獣を狩れば良いし。

 野犬にボロボロにされちゃったから街に入る前に捨てちゃったけれど、野営用具も持ってたからそう辛くはなかったかなー」

 市外を良く知らないルナ以外、全員が驚愕した。
 この少女はその小さな身体で、片道一〇日の道のりを一人で歩いてきたというのだ。
 その上、路銀は持たずに自らの力のみでここまでやってきたと言うのだから、驚くべき生存能力である。

「……さっき君は冒険者になりにきた、と言ったな?」

「うん、もう村に居られなくなったから……自分で食べていかなくちゃいけないの」

 ふと、少女は憂いの表情を見せた。
 年齢に相応しくないその表情には、辛い過去があるのだろうか。

「なぁ、バリー。彼女も仲間に加えたらどうだ?
 どうやら相当の野外活動能力を持っているようだ」

「……若干の不安はあるがね」

「私も反対はしません」

 バリーもルナも、異論は無いようだ。
 その様子を、ミートパイを平らげた少女が首を傾げながら見ている。

「君はどうだい?
 こちらも仲間を募っているところなんだ」

「いーよ」

「いいんかい……随分と軽く決める奴だな」

「だって第一印象なんてアテにならないじゃん。
 体裁を取り繕うくらいなら誰でもできるしさー。
 それなら一目見て命を預けてもいい、なんて思う方がおかしくない?」

 あまりにも堂々とした意見なため、バリーは言い返さなかった。
 内心では一理ある、とさえ思えるほどの意見ではある。

 少女とは反対に、ルナは複雑な表情を浮かべていた。
 ルナのコヨーテに対する第一印象は、命を預けるに足るものだったらしい。

「そういえば名前も聞いていなかったな。
 オレはコヨーテ、君は?」

「私はチコ。アルタロ村のチコだよ」

 アルタロ村、というのはどうやら出身地のようだ。
 バリーとルナも、それぞれ自己紹介を済ます。

「よろしく、チコ。
 野外活動に慣れているなら、『オレたち』としても心強い」

「ん? コヨーテ、お前……!」

 コヨーテは『オレたち』と言った。
 それはつまり、バリーの誘いに乗ったということだ。

「第一印象はアテにならないらしいんでね」

(……この野郎)

 コヨーテの言葉に、バリーは口には出さずに悪態をついた。
 どうやらコヨーテとしてはバリーの第一印象は悪かったらしい。

 言葉の意味が飲み込めないチコは、疑問符を浮かべながら食後の紅茶を啜っていた。



【あとがき】
PCその4、チコの登場です。
元気ハツラツな田舎娘といったところです。
かなりの行動派で、少女なのに相当の体力があります。
あと、実質的にコヨーテの加入もここでやってます。

以下、設定時の覚書。
・ロスウェル近郊の村の薬草採りの娘で、薬剤調合は得意。
・オッドアイである。
・バリバリのアウトドア系で、サバイバルの達人。
・獣を捌いたり、薬草の識別などお茶の子さいさいの頼れる存在。
・実は結構味にうるさい。コヨーテの作る料理は気に入ったらしい。
・弓の技術は高い。命中精度が自慢。
・ところどころで「○○ー」と延ばす癖がある。
・あまり文字を読むのは得意でない。

○設定上の持ち物
・弓矢(矢は二〇本程度)
・やや大振りのナイフ(鉈に近い)
・薬草袋(香辛料含む)
・その他、現地で矢を作るための材料

◆チコ(♀・子供) 標準型
(画像は自作です)
チコ

田舎育ち   貧乏     貪欲
秩序派    進取派    楽観的
遊び人    陽気     地味
繊細

実はコヨーテに次ぐ酷い経歴の持ち主。
サバイバルの知識も薬草の知識も、全ては生き抜くために得たもの。
自分がオッドアイなため、外見の違いなんかで差別は絶対にしない子。
見ての通りアホの子なので心情描写は難しく、あんまりない。


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周摩

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