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『キーワードを解け!?』 

 『大いなる日輪亭』。
 リューンの片隅にひっそりと建つこの宿は、冒険者の宿であると同時に酒場でもある。
 平均的な冒険者の宿としては狭い方であり、比例して一階の酒場スペースも広くはない。
 現在は早朝という事もあって、朝食を摂りに来た客がちらほらいる。

(……うーん、やっぱり朝は暇ですねぇ)

 そんな事を思いながらカウンターの内側で皿を拭いているのは、聖北のシスターさんであるルナだ。
 今のルナはいつもの修道服ではなく、白のブラウスと緑のスカートというとても地味な格好をしている。
 更にはエプロンは赤、頭を覆うスカーフは白地に緑で何だか良く分からない模様で染めてある。
 皿を洗うのに邪魔になるのか、ブラウスの袖は肘の辺りまで捲くってあった。

 実は敬虔な聖北教徒であるルナは、普段なら休日だろうが修道服を着ている。
 しかし宿の手伝いとなれば、修道服は多少動きにくい。
 そこでルナは宿の娘さんに適当に服を借りる事にした。

 娘さんはルナの地味すぎるファッションセンスに愕然としていた。
 『素材は良いのにもったいない』と娘さんは嘆いていたが、ルナには何の事か良く理解できていない。
 ルナとしては派手なものでなければ、どんな服でも構わなかった。

 ただ、最初に受け取ったシャツは少しサイズがきつかった。
 特に胸の部分が窮屈で、かといってブラウスのボタンを開けると胸元が露出してしまう。
 その事実を伝えると、割とゆったりした男物のシャツを渡された。
 娘さん曰く、親父さんのものではないらしい。
 ルナとしてもほとんど新品同様だったため、特に気にしなかった。

 それよりも、娘さんがルナの胸元をじろりと睨みつけつつ黒いオーラを纏って舌打ちしていたが、あれは何だったのだろうか。

「ルナ、少し休憩して良いぞ。
 後は昼時までに片付けてくれりゃいいからな」

 親父さんは厨房から出てくるなり、そう言った。

「お前さんも病み上がりなんだからな、あまり無茶はするな」

「む、大丈夫ですよ。
 もう傷跡すら残っちゃいませんから」

 ほらほら、とルナはくるくる回ってみせる。

「分かった、分かったからそんなところで激しく動くな」

 えへへ、とルナは笑みを浮かべつつ手近な椅子へ腰を下ろした。

 ルナは一ヶ月前に背中に大怪我を負った。
 とある依頼で、物言わぬ騎士に斬りつけられた傷だ。
 数週間は寝込み、知り合いの聖北教徒に【癒身の法】で癒してもらう日々が続いたが、つい数日前に傷跡も分からないくらいに快復したのだった。

 今はその間お世話になった宿への恩返しの最中である。
 具体的に言えば、宿の仕事のお手伝いといったところだ。

「あいつらが出て行ってから、もう三週間になるか……」

 ふと、親父さんが呟く。
 あいつら、とはコヨーテたちの事だろう。

「全く、ルナ一人だけ置いて行くとは薄情なヤツらだ」

 ほとんど独り言のような、親父さんの言葉。
 本心ではそう思っていないのだろう。
 親父さんも心配なのだ、『月歌を紡ぐ者たち』がこのまま折れてしまわないか、が。

「薄情だなんて思った事はないですよ。
 彼らには彼らのやるべき事があったから、それぞれ出かけて行っただけ。
 私のやるべき事は怪我の治療だったから、残されただけです。

 それに、忘れられませんよ。
 コヨーテの、あんな表情」

「………………」

 親父さんも理解したとばかりに沈黙で返す。
 泣き出してしまいたい、放り出してしまいたいという感情を極限まで溜め込んだような、そんな表情。
 それが、コヨーテが旅立つ間際に見せた表情である。

 ルナは怖かった。
 ともすれば、コヨーテが帰ってこなくなるような気がして。
 かといってルナに出来る事はなかった。
 だから、彼女に出来る事は皆の帰りを待つ事だけである。

(でも、本当は一緒に行きたかった)

 不安を感じるなら、自分が傍にいてあげたかった。
 無力を感じるなら、一緒に乗り越えたかった。

 そんなルナの懊悩もお構いなしに、突然宿の扉が勢い良く開かれた。
 ドバーン! という無茶な動作をしたせいで悲鳴をあげる扉の向こうから、体躯の良い三人組が顔を出す。

「うぉーす、親父」

「おい三馬鹿共、宿の扉は大事に扱えっていつも言っているだろう」

「細かい事は気にするな! 余計に!」

 禁句タブーである。
 みしり、と親父さんの拭いていた皿が嫌な音を立てる。
 ルナはどうしていいか分からず、ただ慌てるだけである。

「親父、頭の切れるヤツはいないか?
 こっちはようやく宝の在り処を『掃除』したところだが、どうにも罠があるらしい。
 それもとびっきり難解な暗号方式でな、頭の切れるヤツに協力して欲しいんだよ」

「ふん、スカウトなら勝手にしろ。
 だがな、生憎ウチの冒険者は全員出払っているんだよ。
 仮にいたとしても、お前らみたいなヤツらに振り回される側が首を縦に振らないだろうがな」

 なんだろう、親父さんがいつもより辛辣だ。

「あん? そこにいるのは『月歌を紡ぐ者たち』のシスターさんじゃないのか」

 急に指を差されたので、ルナは若干身を引いた。
 いつもの修道服を着ていないのに、良く気が付いたものである。
 実は『美人というより可愛い系のシスターさん』としてそこそこ顔を覚えられていたりするのだが、ルナはその事実を知らない。

「ダメだ、こいつは病み上がりなんだ。
 まだ体力も万全じゃない。
 お前たちと一緒に行動させてちゃ、下手すりゃぶり返しちまうだろうが」

「えっと、親父さん、私なら大丈夫ですけど……」

「ほら見ろ親父、お嬢さんは良いって言ってるぜ。
 なぁに心配すんなよ。
 例の遺跡はとっくに『掃除』済みだって言っただろ。
 罠さえどうにかなりゃ全く危険はないわけだし、その罠だって頭脳労働でどうにかなる」

「だがな……」

 ちらり、と親父さんはルナの方を見る。
 ちなみに時たまレンツォに小馬鹿されたりするが、ルナはそんなに馬鹿じゃない。
 いつもはバリーの影に隠れているだけで、頭の回転はバリーに次いで速かったりする。
 その事実を知っているのは極少数なため、親父さんはそこが心配なのだろう。

「親父さん、午後のお仕事はお休みします。ごめんなさい」

 言うなり、ルナはエプロンを脱いだ。



 財宝が眠る、と噂される古代遺跡。
 よく吟遊詩人が英雄譚の舞台として選び、数多の英雄が挑戦する場所でもある。
 今じゃ滅多に、というか九割九分有り得ない幻想のような遺跡が、ルナの眼前に存在している――

「……で、あなたたちは信じたと?」

 ――
 ここは大昔に発掘され、以来誰も近寄らなくなって錆付いた遺跡だ。
 そんな与太話を信じてしまうなど馬鹿らしいにも程がある。

「まぁな。可能性がありゃあどこにでも行くぜ、俺たちは」

 呆れたようなルナの言葉に、がっしりとした体躯の男が答える。
 『蹴りのジミー』という渾名を持つ彼は、非常に強烈な蹴りを繰り出す事で有名な冒険者だ。
 現に、周囲に散らばる機甲の兵士たちの残骸には、靴跡の形に鎧が凹んでいる。

「さぁて、これが問題の石碑ですぜルナ先生」

 しばらく遺跡を進むと、通路のど真ん中に石碑が建っている。
 とはいえ、石碑が通路を圧迫しているという事はなく、脇を通れば進める程の広さはある。
 ジミーの話では、一筋縄ではいかない罠が仕掛けられているのだという。

「期待してますぜ、ルナ先生。
 なんてったって、『月歌を紡ぐ者たち』って言やぁ今を時めく新鋭パーティだ。
 『風を纏う者』までとはいかねぇが、結構噂されたりしてるんだぜ」

「え、そうなんですか?
 取り立てて目立ったような事をした覚えはないんですけどね」

 自分たちが噂になっているなど露程も知らなかったルナは、素直に驚いた。
 その様子を見た『赤き鎧のトーマス』がやれやれと頭を振る。

「謙遜しなくても良い。
 あんたたちは噂される程の実力を持っているという事だからな。
 今回もあんただから依頼した、ってのもあるんだよルナ先生」

「せ、先生は止してください」

 先生、という接尾辞に妙なむず痒さを感じ、話を適当に流す。
 実力があると言われても、ルナには全く実感がない。
 現にパーティで活躍するのは戦闘能力の高いコヨーテやミリア、知識ではバリーだろう。
 ルナとしては足を引っ張っているという負い目しかない。

「それよりも、石碑の解読に移りましょう。
 日が暮れる前には帰りたいですから」

 そうだ、今日はパーティのお荷物という汚名を返上するためにここに来た。
 一人でも仕事を完遂できるのだと、せめて自信をつけたかったから。

「この石碑には三つのヒントが書いてあるんですわ。
 ヒントを元にキーワードを入力すれば、先に進めるとあるんだが……」

「もし罠を解除せずに進むと、左右の壁から【魔法の矢】が飛んでくる。
 無理に進もうとしても、途中で倒れちまうだろうな」

 見れば、彼らの身体のあちこちに包帯が巻いてある。
 一度は無理に進もうとしたのだろう。

「なるほど……、ところで何故ブロンザさんは石碑にしがみ付いているんです?」

 筋骨隆々の格闘家、ブロンザは石碑にがっしりとしがみ付いている。
 これでは石碑の文字を読む事が出来ない。

「面白くないからだ」

「……、はい?」

「いや、ちょっと思いついたんだ。
 どうだ。ヒントを小出しにして、その数で報酬を決めるというのは?」

 意図が読めず、ルナは首を傾げる。

「石碑のヒントは三つある。
 これを小出しにして、少ないヒントでキーワードを解けたら報酬に色をつけよう。
 反対に、全てのヒントを得てキーワードを解いたら報酬は少なめにする、という事だ」

 具体的には、ヒント一つで銀貨三〇〇枚。
 ヒントを増やす毎に一〇〇枚ずつ減らすらしい。

 ルナとしては報酬にはあまり興味はなかった。
 元々ノーリスクの仕事だ。
 リターンが多かろうが少なかろうが、ルナは損をしない。

「それでは最初のヒント。
 『持ったり見たりするもの』とありますぜ」

「……ふむ、全く分かりません。
 というよりヒントが大雑把過ぎて、答えが絞れません。
 次のヒントを教えてください」

「二つ目は『目を閉じても見えるもの』ですな」

 目を、とルナは呟くと、実際に目を閉じてみた。
 そこに見えるものは『闇』もしくは『瞼の裏』だが、これでは一つ目のヒントと噛み合わない。

(という事は『目を閉じる』という行為には意味はありません。
 キーワードは視覚に頼らない方法でも見えるもの、そして持てるもの。
 同時に、物理的なものでもない。

 ……それは、つまり!)

「キーワードは『夢』です。
 『夢を見る』『夢を持つ』、そして夢は目を閉じていても見る事が出来ます」

 おおっ、という感心した声を上げ、ジミーが石碑にキーワードを入力する。
 すると奥へ続く道から何かが動く音がした。
 どうやら正解らしい。

「さすがはルナ先生、全てのヒントを得ずとも正解するとは!
 この調子で次も頼んますわ」

 ジミーはヒント二つ分の報酬、銀貨二〇〇枚を手渡してくる。

「それでは、次へ行きましょう」



 更にしばらく歩いた場所に、さっきと同じ石碑が建っている。
 ヒントは『焼いたり切ったりする』だ。
 当然、漠然としすぎているため続いてのヒントを要求する。

「ヒントは『焼いたり切ったりする』と『貸したり結んだりする』……
 料理関係かと思いきや、ちょっと考えがバラけてしまいましたか」

 ルナは口元に手を当て、思考する。

(キーワードは『切ったりする』のに『結んだりする』……?
 紐やリボンだとしたら、まぁ貸すかもしれませんが焼きはしませんね。
 一つ目のヒントから『木材』の可能性もあったんですが、『結ぶ』という言葉は不適切でしょう。

 ……となれば、最初のキーワードと同じく物理的なものではない、例えの類でしょうか?)

「分からんのなら三つ目のヒントを聞いた方がいいんじゃないか?
 こっちが言うのもなんだが、あんまりゲームに固執しすぎるのも悪いからな、この辺で

 うんうんと唸るルナに、トーマスが忠告する。
 ルナはその言葉に対して、頷いて口を開く。

「……なるほど、ありがとうございますトーマスさん」

「じゃあ聞くか? 三つ目のヒント」

「その必要はありません。
 ずばりキーワードは『手』です。
 『手を焼く』『手を切る』『手を貸す』『手を結ぶ』と、『手』はさまざまな例えに使われますからね。

 先ほどのトーマスさんの『手を打つ』という言葉、ナイスでしたよ」

 キーワードは正解だったらしく、さっきと同じ音が響き渡った。
 当のトーマスは照れたように頭を掻いている。

 次の石碑も、問題はそう難しくはなかった。
 ここでもルナはヒントを二つ得て、回答に臨む。
 『それは偽物。そこに見えるのは本物じゃない』『ほとんど完璧に真似をする。しかし一部だけ違う。また手本の事でもある』というヒントから、見事に『鏡』という答えを導き出した。

「よっしゃあ! さすがはルナ先生だぜ!」

「ふっ、これでようやく先に進めるな。礼を言うぞ」

 ブロンザとトーマスが口々に褒めるものだから、ルナは含羞むように笑みを作る。
 四人は、もはや何も邪魔するもののない通路をひたすら歩く。
 やがて、通路の果てに大広間が見えた。

「おお! あったぜ宝箱だ!」

(一応、形だけは宝箱なんて置いてあるんですね)

 ルナは冷めた目でそれらを見る。
 というより、ルナはこの遺跡の噂を信じていない。
 リューンから少し離れた位置にあるこの遺跡が未だ手付かずという事は有り得ないからだ。

「開いた……こりゃすげえ! 宝石の山だ!!」

「ええっ……! 嘘っ……!?」

 ブロンザの歓喜の声に、ルナは身を乗り出して箱の中を覗いてみる。
 言葉通りに、大小様々に色鮮やかな宝石がごろごろと保管されている。

(う、う、う、嘘でしょう!?
 こんな、吟遊詩人の歌じゃあるまいし、非現実的すぎますよ!?)

 与太話だと思っていた噂が、現実だった。
 到底受け入れがたい事実に、ルナの頭は混乱を極めている。

 反対に、心の底から信じきっていた脳筋トリオは『た、大量じゃあ! うひゃはははは!!』『これでルナに払った金の元も取れるぜひゃっはー!!』と喜びまくっている。
 ちょっとトリップしすぎな三人組に引きつつ、ルナはぺたりと地面に座り込む。

(ど、どうなってるんですか世の中……?
 なんでここだけ物凄いイージーになっちゃってるんですかぁぁぁ!?)

「ルナ先生! これはほんの気持ちだ、受け取ってくれ」

 頭を抱えるルナに、ジミーが袋に詰めた宝石を渡してくれた。
 どうやら目の前の宝石が欲しくなったんだろう、とか思われたみたいだが、非常に失敬な話だ。
 ルナは奥ゆかしい系のオンナノコなので、というかそれ以前に敬虔なシスターさんなのでそんな浅ましい考えは起こさない。

「よし、全部詰めたな!?」

「勿論、欠片も残しちゃいねぇよ!
 さぁさぁ早く帰ろうぜぇ! この金で早速酒盛りだぁ!!」

 はーっはははは! という山賊のような笑い声が、古びた遺跡に響き渡った。



 その夜、『大いなる日輪亭』にて。

「乾杯! かんぱァァーい! 本日五度目の乾杯だぁぁぁ!!」

 例の脳筋トリオが宿の酒という酒を飲み干そうとしていた。
 一度目の乾杯の前に『今日は宿中の酒を飲みつくしてやる!』と宣言したのを実行しようとしているのが恐ろしい。

「飲んでるかルナせんせぇー!?」

「えぇ、頂いていますよ」

 ルナは彼らに奢ってもらった葡萄酒をちびちびと飲んでいる。
 敬虔なシスターさんであるルナは普段こそ酒は慎むのだが、実は相当の酒好きである。
 そんな彼女が一気に杯を空けないのは、脳筋トリオが次々に注ごうとするからだ。

 周囲に目がなければ喜んで受けていただろうが、今は宿中の注目の的だ。
 彼らと一緒に馬鹿騒ぎしてしまうと、真面目なシスターさんのイメージが崩壊してしまう。

「っとと、何だこの騒ぎは」

 誰かが来店してきたらしく、馬鹿騒ぎに引いているらしい。

(ん、どこかで聞いたような声……って! この声は!)

、遅くなって悪かった。身体は大丈夫か?」

 紛れもなく、コヨーテの声である。

「こっ、コヨ――ッ、ぶはっ!?」

 後半が変な声になったのは、驚きのあまり飲んでいた葡萄酒が気管に入り込んだからである。
 ゲホゴホと咳き込むルナを見兼ねて、コヨーテが慌てて背中を擦ってくれた。

「酒を飲める程には快復したみたいだな」

「あぅ、これは……」

 何だか怪我の療養していたはずのルナが堕落して飲酒をしていたと思われるのが恥ずかしいので、軽く経緯を伝えた。
 コヨーテはうんうん、と頷きながら聞いてくれている。

「……というわけで、こんな宝石が沢山あったんです。
 信じられますか?
 私は主の起こされた数多の奇跡に劣りはしますが、相当に貴重な場面を見れたと思っています」

 ルナは例の宝石をテーブルに置いた。
 コヨーテはそれを手に取り、まじまじと眺める。

「おう、あんたは『月歌を紡ぐ者たち』のリーダーじゃなかったか!?」

 ぐでんぐでんに酔っ払ったブロンザが絡んできた。

「見ろよほら、こーんなに宝石が転がってたんだぜ!?」

 どうやらただ単に自慢したいだけらしい。
 じゃらじゃらと鳴る袋をテーブルへ置くと、勢いでいくつかの宝石が口から飛び出ていた。
 コヨーテはそれらを手に取り、再びまじまじと眺める。

「……凄いな、これだけの量は滅多にお目にかかれない」

 コヨーテは抑揚のない声でそれだけ言うと、宝石を袋に詰めなおして返した。
 望み通りの答えが得られたからか、ブロンザは元の席へ戻っていった。
 その背中に、コヨーテは小さな声で『程ほどにしておけよ』と呟く。

「ルナは運がいいな。
 

「……、はいぃ?」

「遺跡の中じゃ薄暗いから分かりづらかったんだろうな。
 大半が精巧なガラス玉だった。
 幾つかは本物が混じっていたがどれも小振りで価値は低いだろう。

 下手すれば、こんな馬鹿騒ぎを一晩中やってしまったら赤字になるんじゃないかってくらいには」

 コヨーテの言葉に、ルナの顔が引きつった。
 脳筋トリオはかれこれ二時間くらいは飲み続けている。
 もしその言葉が本当なら、彼らの懐が若干心配になってくる。

 実はコヨーテはラクスマンという知り合いが趣味で集めているアクセサリーや宝石類について、一週間近くそれこそ暇があれば講釈を聞かされていたので、真贋を見極められるくらいには詳しくなっていたのだ。
 最も、あの脳筋トリオでは明るい場所で見ても本物かどうかは分からなかったかもしれないが。

(な、なんだか一人だけ得してて申し訳ない……)

 本物の、しかも割と大振りの宝石を手の中で転がしつつ、

(後で、私のお酒代は払っておこう)

 哀れみの視線を、幸せそうに何度目かの乾杯をしている脳筋トリオへ向けた。



【あとがき】
今回は二二二さんの「キーワードを解け!?」です。
プレイヤーは頭脳役、リドルを解くだけのシンプル設計のシナリオでした。
遺跡や石碑に至るまでの過程を全てすっ飛ばしているので、かなり短めです。
そもそも『リドルを解かせる』というシナリオの目的を生かすために、意図的に削られているのだと感じました。
ヒントは二つ目で大体解ける程度で、三つ目でほとんど答えに辿り付ける仕様でした。

ジミーさん、トーマスさん、ブロンザさん、あんまりな役回りでごめんなさい!
シナリオのオチをそのままにしておいたら大変な事になると思ったので大きく変更してしまいました。
その影響で、上記の三人が不幸せな事に……謝罪の言葉しかありません。

脳筋トリオがPCをえらくプッシュしてくるのが見ていて微笑ましかったです。
ああ、彼らも頭の良い人に憧れているのかなぁ、と。

ルナ初の一人仕事でした。
一時解散状態のパーティで唯一、スタートダッシュに遅れたキャラでもあります。
怪我等の理由もあって、リューンの外には出せない状況である程度動けるシナリオを探すのは大変でした。
分類としてはコメディが出来るキャラなので、コヨーテメインの回に比べて明るい仕上がりになっています。

途中に出てた『風を纏う者』は勿論シグルトさんたちの事です。
折角リプレイクロスさせていただいたので、こうやって所々に名前を出して行きたいなと思います。

それはそうと三週間ほどゴタゴタで執筆が滞り、ストックを消費し続けてたら、なんと……
ストック消★滅!!!
最低だ……なんだこれ、半年くらいは十日ペースで連載できるだろうと思ってたのに。
現時点で次回分も書き終えてないです。まだ途中です。
運悪く次回がオリジナル回なので筆が遅い遅い。

んー……どうしても間に合わなかったら、没になったコヨーテの過去話でもやりましょうかね。


☆今回の功労者☆
ルナ。知力は結構高いのです。

報酬:
一問目ヒント二つ→200sp
二問目ヒント二つ→200sp
三問目ヒント二つ→200sp

戦利品:
宝玉

銀貨袋の中身→1150sp(総計:4477sp)


≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『キーワードを解け!?』(二二二様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。


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周摩

Author:周摩
しがないリプレイ書きのブログです。

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