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大空に輝く光 交易都市-HEROINES- 

 階段から一階のフロアを覗いてみると、コヨーテの姿がない。
 ルナはそのまま階段を降りて、カウンターに腰掛ける。

 そして、つい落胆のため息をもらしてしまった。

「うう、聖誕祭の時と真逆じゃないですか……」

「何が逆なのよ?」

 どうやら心の中でつぶやいた事が口に出ていたらしい。
 耳聡く聞いていたミリアに話しかけられて、ルナは思わず素っ頓狂な叫び声をあげてしまった。

「び、びっくりしたぁ」

「それはこっちの台詞よ。何なの一体」

「何と聞かれても……良く分かりません」

 ルナは頭を抱えてカウンターに突っ伏し、うんうんと唸りだす。

「悩み事か。よしよし、ミリアねーさんに話してみなさい」

「えっ、いや、すごく個人的な事なので……というか何故悩み事してるって分かるんですか!?」

「アンタは分かりやすいからね。
 つってもコヨーテとかバリーとかオンナゴコロ分かってないような奴らは分かんないでしょうけど。
 まぁそんな事はどうでもいいわ。
 ほらほら、悩みがあるなら力になってあげるわよ」

 と、頼りになる姉御の笑顔を見せるミリア。
 しかし軽々に悩みを打ち明けられない理由がある。
 ミリアが仲間であるからこそ、打ち明けられないのだ。

(コヨーテの事が気になってものすごくモヤモヤしてるんですけどどうしたらいいでしょう、なんて聞けるものですかっ……!)

 ルナは生まれてこの方、他人に恋愛感情など抱いた事がない。
 そもそもの下地が敬虔なシスターであり、恋愛という感情は抱いてはならないものである。
 どうすればそれを捨て去ってしまえるのかなんて分かるはずがない。

 分からない以上、それに対して向き合っていかなければならない。
 既にルナの心の中では、どうしようもないほどコヨーテの存在が大きくなっている事を自覚していた。

 そんなコヨーテの問題だからこそ他人に考えを預けてはいけないと思っている。
 例えミリアがそのつもりでなくとも、ルナは自身が流されやすい性格だという事は理解しているつもりだ。
 万に一つも、彼の事に対しては間違った解答をしてはいけないのだと、そうルナの心が告げている。

「せっかくですが……遠慮しておきます」

「遠慮厳禁! アンタは遠慮しすぎなのよ! ほうら、悩みを打ち明けてくれるまで粘着しちゃうわよー!」

 こうなったミリアは蛇のようにしつこい事を、ルナは承知済みだ。
 伊達に半年以上もパーティを組んでいたわけではない。
 どうやってこの状況を切り抜けようかと頭を悩ませるルナだったが、彼女には救いの手が差し伸べられた。

「あの~」

 背後からあまり聞きなれない少女の声が聞こえてきた。
 振り返ると、そこには金髪ポニーテールの幼い少女が立っている。
 この宿の『星を追う者たち』というパーティの専属冒険者で、ルナとも面識があった。

「えっと……ステラちゃん?」

「レギウスしらない? どっか行ってるみたいなの」

 彼女が言っているのは、彼女と同じ冒険者パーティのリーダーの事だ。
 ルナはレギウスがどこへ行っているかは知らないが、普段は過保護なくらい二人は一緒にいるはずなのに、今日に限って何も言わずにどこかへ行ってしまうとは驚きだった。
 『あれ?』とミリアは小首を傾げて思い出したように、

「あいつならバリーと一緒に出かけてるはずよ。どこだっけ?」

「ううう、レギウスのばか~……おなかすいたのに~」

「何か食べればいいじゃない。親父さんにお願いすれば?」

「だめだよ~」

 その言葉に、ルナとミリアは顔を見合わせる。
 お互いに眉を寄せて頭に『?』を浮かべていた。

「わたしがおなかすいてるって事はレギウスもすいてるんだから~」

「ふーん、レギウスと一緒に食べたいのね」

「そ~だよ、わたしとレギウスは子供の頃からごはんは食べようって約束してるんだよ~」

「「――ッ!!」」

 無邪気な少女ステラの意外と大胆な発言に、ルナとミリアの両名が同時に息を呑んだ。
 しかし胸中で抱いた考えは全く違ったものだった。

(……すげぇ、意外と進んでるのねこの娘)

 と、ミリアは割と一般的な感想を。

(……仲間想いな良い子ですね)

 と、ルナはスッ呆けた感想を抱いた。

「って、コラァァァ! アンタ天然もほどほどにしなさいよォォォ!!」

ひゃあぎゃあ! ひゃにひゅんれすかヒリアなにすんですかミリアー!?」

 唐突に口の端を両手で広げられたルナは手足をバタつかせるが、対するミリアは一向にそれを止めようとしない。

「――っぶはぁ! 何ですか、人の心の中まで読まないでくださいよ!」

「うるさいっ! 分かり易すぎるアンタが悪いんじゃー!」

 ぎゃーぎゃーと騒ぐ二人を横目に、ステラはため息をついて呟いた。

「レギウスはやく帰ってこないかな~……」



「へ?」

 頭上からかけられた声に反応して顔を上げると、女性にしては長身な黒髪美女がステラを見下ろしていた。
 その女は周囲に冷たい印象を与える切れ長の目を大騒ぎしているシスターとエルフに向けると、つり上がり気味な眉の角度を落とす。
 彼女を良く知る者なら、表情の変化の乏しい彼女が見せる『呆れた』表情だと察しただろう。

「向かうなら早くなさい。
 クロエが追っていたから、レギウスは行方を晦ますかもしれないわ」

「そっか、ありがとマリナさん!」

 ぱあっと表情をほころばせたステラはそのまま宿を飛び出していった。
 その様子に口元をわずかに綻ばせたマリナはカウンターに座り、紅茶を注文する。
 優雅に香り立つロスウェル産の紅茶を一口すすり、

(あの子といいクロエといい、レギウスって幼女と関わりが深いわよね。
 まさか少女愛者ロリコンの気があるのかしら……?)

 と、冷血美女マリナは真顔でブッ飛んだ事を考えていた。


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周摩

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