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大空に輝く光 闘技都市-ECOMA- 

「何の……つもりだ?」

 コヨーテの頬を、一筋の汗が伝う。

 つい一瞬前の喧騒が嘘のように静かになっていた。
 しかし、聞こえなくなったのではない。
 聞かなくなったのだ、聞くほどの余裕がなくなったのだ。

 理由は目の前に立つ、ヴァンドールでの最後の対戦相手。
 煌々と輝いていた太陽が山の端に沈み、代わりに焚かれた乏しい灯りによって照らされたは異形の者だった。

「何って? そりゃあ――」

 異形の者が言葉を発するも、その表情は読み取れない。
 なぜなら、そいつの顔面は人間のそれではなかったからだ。
 突き出た鼻、尖った耳、灰色の体毛にべろりと垂れた舌が特徴的なをしているからだ。

 そいつを何かに例えるなら『狼』が一番近いだろう。
 今日まで何度か試合を行ったが、ここまでふざけた格好の相手はいなかった。

 違う。
 この程度の悪戯でこんなにも冷たい汗が流れるものか。
 こいつは圧倒的に違いすぎた。

?」

 こいつは、人間じゃない。
 においで分かってしまうものだ。

 それに気づけない観客や闘技場の関係者は暢気に盛り上がっている。
 無理もない。
 こんな都市のど真ん中で、それも衆人環視の目が一斉に集まるこの場に、よもや吸血鬼が紛れ込んでいるなんて誰が想像できるだろう。

「ま、そうピリピリせずに。
 気軽にやりましょうよ、どうせ模擬戦おあそびなんだし。
 ほら、始まったッスよ」

 カーン、という白々しい鐘の音が響く。
 開始の合図だが、コヨーテはまだ動けない。

「……何が目的だ。『組合』の追っ手にしてはあまりにも堂々としすぎちゃいないか?」

「うーわ、説明がめんどくさそーッスね。
 追っ手なんかじゃないって言っても信じてもらえないッスか?」

「信じられるか。お前たちは――」

「じゃあ信じなくてもいいッスよ」

 ゾン! と、コヨーテの頬を何かが通り抜ける。
 彼の髪を数本跳ね飛ばし通り過ぎたそれは、銀色に輝く細身の刃だった。

「……!!」

「どうあれ、あっしと戦ってくれりゃあ何でもいいんスよねぇ」

 不気味なほど平坦な声と共に、細い剣先が目前に迫る。
 刃をかち合せるのは不可能と判断したコヨーテはとっさに柄で軌道を逸らした。
 どうにか大きな傷は避けたものの、掌の腹に鋭い痛みを感じる。
 それほど強く弾いたわけではないが、吸血鬼は細剣に振り回されるように大きく身体を逸らしている。

 いいや、そんな単調なものじゃない。
 吸血鬼の狙いに気づいたコヨーテは背筋が凍る感触を覚え、反射的に身体を捻る。

 次の瞬間には回転によって勢いを得た吸血鬼の細剣が、ほとんど同じ道を通って目前に迫っていた。
 どうにか回避が間に合い、頬が浅く裂けただけで済んだが、もしわずかでも反応が遅れていれば眉間の風通しが良くなっていた事だろう。
 自分で模擬戦と言っておきながら、欠片ほども容赦のない急所狙いだ。

「こ、のッ!」

 コヨーテは身体を捻った勢いをそのままに、引いた方と逆の肘を吸血鬼に叩き込む。
 二度の吸血鬼との激闘とそれを踏まえた闘技場での立ち回りの研究によって鍛えられたおかげで、もはややられっぱなしで終わるコヨーテではない。
 カウンター気味にヒットしたはずの一撃にも吸血鬼は怯まない。
 攻撃を放ったはずのコヨーテの方が苦い表情で距離を取った。

「――くはっ」

 思わず、といった感じの声が吸血鬼の喉から発せられる。
 それはどこかしら狂ったような笑い声に聞こえた。

「いいーいッスねぇぇぇぇぇ、素ん晴らしいぃぃぃぃぃぃ!!」

「くそっ、何なんだよお前はッ!?」

「ただの戦闘狂ですよぉ!? ホラホラホラァ!!」

 やたらと軽快な口調で連続突きが繰り出される。
 細剣特有の素早い攻撃ではあるが、広刃の【レーヴァティン】を盾代わりにして防ぐ。
 予想よりも軽い攻撃を捌きつつ、コヨーテは考える。

 この刃の嵐を潜り抜けて相手に一撃を加えるにはどうすればいい?

 攻撃が軽いということは恐らく、あの細剣は見た目通り脆いのだろう。
 相手が吸血鬼の怪力で思い切り突いてくれば、その勢いを利用して武器を叩き折る事も出来るのだろうが、手練はそういうミスを犯さない。
 それでも、この一撃一撃には最大限の威力を持たせているはずだ。

 そこから逆算すれば細剣の大まかな耐久力は見える。
 恐らくコヨーテが八割程度の力で柄近くを思い切り殴れば、刀身はポッキリと折れてしまうだろう。
 闘技場での武器破壊は暗黙の了解として行ってはいけない事になっているが、今はそんな事を言っていられる状況じゃない。
 一見簡単そうに見えるものの、高速で繰り出される突きを武器を使わずに凌ぎつつ更に攻撃を加えなければ武器破壊が成功しないのでは、成功確率は驚くほど低い。

 そもそも『試合』を終了させても相手が大人しく止まってくれるとは限らない。
 目的が戦いだと言うのなら、何をもって満足するのかがいまいち想像しにくい。
 無理やりにでも追い払う方策もないに等しく、【天狼突破】を使わずに無力化する方法は皆無だ。
 このまま降参を宣言しても相手は満足しないだろう。

(どうする?)

 突破口を開く以前に、吸血鬼の突きはどんどん速くなっていく。
 ついさっきまでは捌きつつ考える余裕すらあったというのに、今では攻撃を防ぐだけで精一杯だ。
 このままでは遅かれ早かれ捌ききれなくなるだろう。

(どうする!?)

 コヨーテの思考が加速する。


To Be Continued...  Next→
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周摩

Author:周摩
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