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大空に輝く光 裏路地-ERIC- 

「ああああああああああもう冗談じゃないよカイル!」

「はあああ!? それはこっちの台詞だよレンツォ!」

 ぎゃーぎゃーと暴れながらリューンの裏路地を疾走する盗賊二人組は『大いなる日輪亭』の冒険者、レンツォとカイルだった。
 どうして必死に走り続けているのかというと、二人は賭場で手持ち以上の負け分を背負い込んだまま逃げ出し、逃がすまいとする賭場側の人間に追われているからだ。
 それが可愛い女の子だったのなら胸もときめこうが、髭面禿頭のむさいチンピラ五人ではそれだけで泣きそうになる。

「おらあああああ! 止まれや小僧共おおおおおおお!!」

「とっ捕まえろ! 身包み剥がしてでも負け分払わせろやああああああああああ!!」

 ついでとばかりに罵詈雑言を散々浴びせかけてくるというのだから慟哭しても文句は言われない気がする。
 むしろすでに二人はちょっと涙目になっているのだった。

「あー! ちくしょう、一時は一〇〇〇枚越えしたのに!」

「まったく、欲を張りすぎなんだよ君は!」

「何をぅ! カイルが余計な助言するから!!」

「ノリノリだったのはどこの誰だよっ!!」

 お互いを罵倒しつつ、二人は直走る。
 捕まれば即袋叩き&身包み剥がされ棄てられるという究極のコンボが成立してしまう。
 それはつまり親父におつかいを頼まれたレンツォは、ブチギレた親父という第二の脅威に怯えなければならないという事だ。

「もういいじゃん! 隠し持ってるソレ出しなよ! 身包み剥がれる前に!!」

「だめっ! それだけはだめっ! この三〇〇枚おつかいひようは死守しなきゃ親父に身包み剥がれる!」

「あっ、それスゲェいいじゃん! 僕は全然痛くないし苦しまない!」

 ふざけんな! という声は、言い争いでの叫びと走り回った疲れで掠れてしまった。

「――のわあっ!」

 不意にカイルは何かに蹴躓いて体勢を崩す。
 裏路地特有のごちゃごちゃした地面が足元に絡み付いてきたのだ。

「ナイスだカイル! 後は任せた!」

「ちょ、それでも年上かよ!」

「――お、お前っ! 足を離しなさいお馬鹿っ!!」

 文字通り足を引っ張り合いながら、二人は汚い路地裏のゴミと戯れる。
 そんな事をしているものだからチンピラ五人組に追いつかれてしまった。
 薄汚い笑みを浮かべて指を鳴らすチンピラたちには平和的な解決法なんて求められるはずもない。

 絶体絶命のピンチ。
 いくら二人が幾度も修羅場を潜り抜けてきた冒険者といえど、この状況は如何ともし難い。
 ズタズタのボロ雑巾化を避け得ぬ未来だと覚悟した(レンツォは加えて親父の鉄拳制裁も)二人は、それでもなお相手を盾にしようとぐだぐだとやっている。

 その時だった。

「待ってぇい!」

 凛とした声が路地裏に響き渡る。
 その場にいる誰もが己の耳を疑った。

「寄って集って弱者をなぶるなど言語道断!!」

 まず声の出所がチンピラの誰のものでもなく冒険者二人のものでもない事に驚く。
 そして放たれた言葉の意味が理解できた時、――否、とてもまともな神経をしていたら理解できなかった。
 何しろ、その声の主はレンツォとカイルをしているのだから。

 レンツォとカイルも、混乱の余りチンピラたちが隙だらけだという現実を前にしても動けなかった。
 女の子が襲われているならともかく、とてもではないがこんな若造二人組にこんな状況で助けが来るなんて理解しがたい。

「な、何だぁ?」

 チンピラの一人はどうにかそれだけ口に出せた。
 しかし前後の道には人影はなく、左右は石壁しかない。
 現実味が薄すぎて幻聴かと思い直すが、

「とぉぉぉう!!」

「ぐえっ!?」

 レンツォらの退路を塞いでいたチンピラの一人が、カエルが潰れたような声を出した。
 そちらを見ると、汚い地面に顔面を押し付けられながら気絶しているチンピラと、その上に妙なポーズで突っ立っている青年の姿があった。
 どうやらあの青年、建物の屋根から飛び降りてきたらしい。

 ツンツンした赤い髪に緑の瞳、白いファーのついた紅白のジャケット。
 どうにも自信に満ち溢れた顔はチンピラたちにも冒険者たちにも見覚えがある。

「お、おい見ろ! あいつのツラ……最近噂の――」

「その通り! おれは……」

「「「「――正義の味方気取りの変態野郎じゃねえか!!」」」」

 残ったチンピラ四名の重なった声に、何かを言いかけた正義の味方気取りの変態さんは盛大にズッコケた。
 不屈の闘志で立ち上がった正義の変態さんはぶるぶると怒りに震え、

「ふっざけんな! おれは変態じゃねえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「ごあっ!」

 容赦なくチンピラの顔面にドロップキックが炸裂する。
 ゴロゴロとゴミを巻き込みながら吹っ飛ぶチンピラは塀にぶつかってそのままのびてしまった。

「正義の味方、ここに見ッ参ッ!!」

「い、いいぞエリック! やっちまえ!」

「エリックさんステキー! カッコいいぞー!」

「ふっ、君たちはそこで見ているといい……」

 『大いなる日輪亭』の専属冒険者エリックは救うべき子羊たちからの声援を受け、右手を顔の前にかざすお気に入りのポーズをとる。
 どうにも彼はこれを最高にカッコいいポーズと思っているらしい。

「ナ、ナメやがってテメェら!」

「ブッ殺すぞオラァ!」

 少々場違い続きなその光景に呑まれかけていたチンピラはようやく我に返ったらしい。
 危うく忘れるところだったが相手はリューンでも相当治安の悪い路地裏のチンピラである。
 まさか丸腰でチンピラ的行為を行うわけもなく、それぞれは大型のナイフを所持していた。

「面白い、やはり悪人はそうでなければ! ――変ッ身ッ!」

 エリックは不敵な笑みを浮かべると、首にネックレス状に提げた七色の七つの石を撫ぜる。
 すると、そこから虹色の光が瞬いた。
 光の奔流に目を眩ませたチンピラが再び目を開けた時、そこにはさっきまでのエリックの姿はなかった。

「さぁさぁ、矯正の時間だ!」

 暗色系の下地に赤いラインが走った要所に金属のガードが付いた鎧のような衣服に、アーメットに近いが黄色い触角(?)のついたデザイン性の高い兜は、とても一瞬前のエリックの格好とは似ても似つかなかった。
 これを単なる早着替えで片付ける事は到底出来ない。
 
 あの一瞬でどこかに隠していた鎧と兜に着替えるなどできるはずもなく、考えられるとすれば魔術的な何かの行使だろう。
 つまりは魔具アーティファクトの存在。
 それを悠々と使いこなすエリックの姿はまるでに見えた。

「おい、や、やべぇぞ……」

「あ、頭の方もイカれてそうだが洒落にならねえヤツだぜ……」

「何言ってやがる、囲い込んじまえば楽勝だろうが!」

 チンピラの一人は未だにやる気十分の様子だが、他の二名はすでに心が折れていた。
 その隙を突くようにレンツォとカイルが逃走してしまったのだから、ここでエリックから退いてしまえばそれこそ骨折り損のくたびれ儲けである。
 退かないのでなく退けないのだろう。
 ちなみにこの時、カイルによって一人のチンピラは財布をスられているのだが、あんまりな状況なので誰もその事に気づかなかった。

「ほぉーう!? 素直に逃げ出せば拳固の一発せいぎのてっけんで許してやろうと思っていたものを……」

 くつくつと笑みをこぼすエリックはどこかうきうきとした様子で頭を抱えた。
 そして再びあの決めポーズを取り、高らかに宣言する。

「ならば仕方がない! とっくりとその身体に教え込んでやらねばなぁぁぁぁぁ!!」

 バチバチバチィ! という弾ける音がしたかと思うと、エリックの兜の辺りから紫電が迸る。
 それを見たチンピラたちの全身から血の気が引いた。

 その日、ボロ雑巾の未来を引き当てたのはチンピラたちの方だった。


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周摩

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