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『冬に咲く花』(3/3) 

「……貴女たちでしたのね」

 人間の色が落っこちた眼をこちらに向け、シスター・セリアは嫌悪の表情を作った。

「ここはあの子が眠る神聖な場所。
 私の断りもなく入るのはお止め下さいませ……
 もっとも、私が成そうとしている神の偉業に協力していただければあの子の一部になれますわよ?」

 シスター・セリアの背後にはアンデッドはいなかった。
 どうやら安全地帯を作っていた法力はわずかにではあるが残っているらしい。
 彼女は悪魔と繋がっているが、根っこは人間だからこの場に入って来れただけだろう。

「シスター・セリア、もう目を覚まして下さい」

 一歩、ルナが前に出る。
 このチャンスを逃す訳にはいかなかった。

「本当は気づいているのではないですか?
 あなたがやっていた事が『死者蘇生』の奇跡の為の手順ではない事を」

 リアの話からも、その事はひしひしと伝わってきた。
 シスター・セリアは初めの頃は黒死病患者を生贄にしたという。
 術式完成の早さを犠牲にしてまでもそれを貫いたのは、彼女の抵抗の表れだったのではないだろうか。
 本当に形振り構わなければ一〇〇年もの時間を必要とせずに術式は完成していたはずだ。

「それでも、あなたはリアさんを諦め切れなかった」

 一度崩壊してしまった心は、そう簡単に繕う事ができない。
 今でもリアが亡くなった時のように雪が降る日は、シスター・セリアは悲しみに暮れると言っていた。
 更にこの状況、アンデッドが手出しできないような神聖な空気を残すこの場所に、自ら足を踏み入れたのはリアの為だ。
 どれだけ悪魔に侵食されようと、どれだけ心が穢されようと、シスター・セリアは娘の事を忘れなかったのだ。

「あなたにリアさんの想いをお渡しします。
 余計な悪魔の力なんて放り捨てて、母子として会話してみて下さい……行きますよ!」

「貴女が何を言っているのか分かりませんが、邪魔をするというのなら排除させていただきます!」

 ルナは十字架を固く握り締めて、シスター・セリアへと向かって駆ける。
 それに呼応するようにシスター・セリアの口が聖句を紡ぐ。
 いや、これは呪文なのだろうか。

「チコッ! お願い!」

 距離を詰めながら叫んだルナの期待に応えるべく、チコは弓を引き絞った。
 そこから放たれた矢は狙いを違わずシスター・セリアの耳のすぐ横、美しい銀髪が幾本か引きちぎられ白いフードが破れ散る。
 衝撃に揺さぶられたシスター・セリアの視界はすぐに復帰するものではない。
 その間に彼我の距離を詰めきったルナは、シスター・セリアの胸に十字架を叩き込んだ。
 矢の衝撃とルナの勢いに圧されたシスター・セリアは尻餅をついた。

『――お母さん! 目を覚まして、お母さん!』

 眩いばかりの白い光が十字架より溢れ、リアの声が響き渡る。
 シスター・セリアは動きを止め、娘の姿を探すように辺りを見回していた。

「今の声は……まさか、リア?」

 十字架に込められた法力がリアの姿を形取り、その姿を目にしたシスター・セリアの瞳に人間の色が戻った。
 その目に涙を浮かべ、娘の名を呼んでいる。

『お母さん……! 私の姿が見えるのね? 私の声が届くのね?』

「ええ、もちろんよ……、あの頃と変わらない可愛い貴女の声が、姿が……!」

「……お母さんッ!」

「リアッ……!」

 一〇〇年の長きに渡って届けられなかった声は、想いは届いた。
 悪魔が調整し繊細に固めた地盤を突き崩したのは他でもない、傀儡としたはずのシスター・セリア自身だ。
 九九四もの魂を吸い取った悪魔の力は最高潮に達しているのは間違いなく、二人の心は永久に繋がらないはずだった。

 『天使』が騙ったような虚構ではない。
 これこそが奇跡というものではないだろうか。

『――ぐぅっ!』

「あいつは……!」

 まるでいつの間に現れていたのか、白い翼を生やした礼服の男が宙に浮いていた。
 頭には白く発行する輪を浮かべた男は整った顔を苦悶に歪める。
 得物を抜き、陣形を整えたコヨーテらを一瞥もせず、ただシスター・セリアへと言葉を向ける。

『聖女セリアよ……戻ってくるのだ!』

「て、天使様!?」

「シスター・セリア! よく見てください、それは天使ではありません!」

『ルナさん! 行くよッ!』

 頷いて、ルナは十字架を手に祈りを込める。
 次いでリアが十字架に手をかざして法力を注ぎ込むと、再び真っ白な光が放たれる。
 その光を浴びた『天使』は歯軋りするが、膨大な光の奔流に成す術なく飲み込まれた。

『――小癪なッ……小娘めがッ……!!』

 光を当てられた『天使』はおぞましい雄叫びを上げる。
 まるで塩を振られたなめくじのように、皮膚が服が翼が融けていく。
 シスター・セリアに取り憑いていた悪魔はリアの法力によって強制的に分離させられ、その正体を現した。

「おのれッ……おのれおのれおのれおのれおのれオノレオノレオノレオノレオノレオノレええぇぇえエエェェェ!!」

 暗雲を纏った巨大な骸骨がどす黒い瘴気を漂わせながら吼える。
 本来の姿に戻った影響か、悪魔の瘴気が次第に十字架の光を押し返し始めた。

「こうなれば貴様ら全員! 骨も肉も魂さえも噛み砕いて転生もままならぬようにしてくれるわッ!!」

「――きゃっ!」

 ついには十字架の光を弾き飛ばし、それを握るルナの身体さえも吹き飛ばした。
 その体は壁に激突する前にコヨーテによって受け止められる。

『ごめんなさい、これ以上は押さえられない……!』

「いいや十分さ。あとはオレたちに任せろ」

『……、お願い。吸血鬼のお兄ちゃん!』

 コヨーテは思わず口元を緩めた。
 いつの間にか正体が看破されていた事に対してではない。
 悪魔を押さえ込んだ聖女リアが吸血鬼に助力を求めている。
 世の中というのは本当に分からないものだ。

「いつも通りだ! ミリアは左でオレが右! 行くぞ!」

 コヨーテの号令を受けて、『月歌』は動く。

 『月歌』の急先鋒ミリアが双剣を抜いて、長椅子から長椅子へと飛び跳ねて悪魔へと迫る。
 応じるように骸骨の顎の一つが大きく開かれ、ミリアを噛み砕かんとする。
 悪魔はその姿に似合わず素早かった。
 ミリアの体重が右足一本にかかるタイミングで一気に距離を詰めている。

「――っとと、あぶなっ!」

 既のところで跳躍し、悪魔の頭骨を踏み台にして距離を取った。
 攻撃のタイミングが絶妙だったのは偶然だったとしても、あの素早さは厄介だろう。
 しかし、ミリアの狙いは攻撃ではなかった。

 悪魔はミリアに対して魔術的な攻撃でなく物理的な攻撃を行い、ミリアは回避の為に悪魔の頭骨を踏み台にできた。
 即ち、悪魔は外見からは判断しづらかったが実体を持っているという事だ。
 リアの法力を跳ね返したものの、もともと彼女の法力で満たされていたこの礼拝堂が一種の結界として影響を及ぼしているのかもしれない。

 実体を持つか否かの判断がつかなければ一部の戦術が実行できない事もある。
 ミリアの突撃はそれを確かめる為だったのだが、少々近づきすぎたか。
 跳躍したミリアを逃がすまいと、悪魔は彼女の着地点へと迫る。

「――む!」

 悪魔とミリアを隔てるように、火柱が上がった。
 詠唱もなしに炎を生み出したのはレンツォの放った【火炎瓶】だ。
 ミリアへの補助に簡易的な壁を作ったのだ。

「効かぬわっ!」

「なッ!?」

 しかし悪魔は火柱に対して全く躊躇する事なく突っ込んだ。
 【火炎瓶】の炎は悪魔の体を焼けず、どす黒い瘴気ですら僅かにも揺らがない。
 炎の壁を突っ切った悪魔はミリアへと大口を開ける。

「――ごッ、カ……!」

 横合いから何かにぶつかられ、悪魔の攻撃はまたしても防がれた。
 炎の壁が擬似的な障害物の役割を果たした事で、チコの放った矢が死角から悪魔に襲いかかったのだ。
 【茨針】と呼ばれる奇襲の一矢を受けた悪魔は衝撃に行動を阻害され、ミリアの追撃はならなかった。

「……《貫き徹す光の鏃、輝きを纏い疾く放たれよ》」

 悪魔がミリアにかまけている間に、バリーは悠々と詠唱を終えていた。

「炎にゃ耐性を持ってますってかァ、だったらこれはどうだよ。――《穿て》!」

 バリーが【識者の杖】で悪魔を指すと、先端より一筋の光が放たれる。
 光にも等しい速度で飛来する【魔法の矢】は真っ直ぐに悪魔の下顎の一つを砕いた。
 更には衝撃で吹き飛ぶ悪魔を、待ってましたとばかりにコヨーテの一閃が襲う。
 上段から振り下ろされた【レーヴァティン】は下顎の砕けた頭骨を唐竹割りにしていた。

「なんだ、案外脆いんだな」

 揶揄するようにコヨーテは言う。
 恐らくは、これもリアの法力が効いているのだろう。
 九九四の魂を吸った悪魔の力の八割以上を封じているのではないだろうか。

「――舐めるなッ人間風情がァ!!」

 怒りに震える悪魔の口から呪詛めいた言葉が溢れ出した。
 悪魔の体を包むどす黒い瘴気が渦を巻き、暗雲のように広がっていく。
 魔力と詠唱、それが揃えば魔術となる。

 どす黒く染まった暗雲から鋭く尖った氷が幾つも顔を出した。
 その氷はまるで血のように赤く染まっており、それにもおどろおどろしい魔力が感じられた。

「させないッ――!」

 横合いから飛び出したミリアの双剣が閃き、骸骨の眉間を一文字に切り裂いた。
 一撃と見紛う二撃、必殺の【湖面の一閃】だ。
 何も分からなかった初撃と違い、今度はミリアとて闇雲に攻撃した訳ではない。
 あれほどの魔術を展開するには大量の魔力の精製が必要だが、あまりにも膨大で禍々しい魔力だった為、魔力を生み出している箇所――即ち心臓にあたる場所が、素人目にも見えていたのだ。

「コヨーテ!」

「――あぁ!」

 ルナの祈りにより聖別された【レーヴァティン】を水平に構え、足を踏み出した。

 ばっくりと割れた眉間の奥、魔力を生み出す心臓を目掛けて駆ける。
 シスター・セリアの慟哭、リアの願い、ルナの憤慨をその刃に乗せて。

 小枝の折れるような音が続き、氷の術式も完成した。
 コヨーテの必殺の一撃と悪魔の氷の術式の始動はほぼ同時だ。
 互いに相手の攻撃に対処する暇はない。
 先に致命の一撃を叩き込んだほうが勝つ、そんな状況だった。

 コヨーテのブーツが床を蹴った音を掻き消すように、氷の砕ける大音量が礼拝堂に響き渡った。



 ほんの数秒前からは考えられないほど、礼拝堂は静寂に包まれていた。
 シスター・セリアは無傷で礼拝堂の床に座り込んでいる。
 悪魔がまだ利用価値があると判断したのか、彼女へ飛来した氷塊の数はほとんどなかったのだ。

 礼拝堂の床には大小様々な氷の欠片と、冒険者たちの体が横たわっている。
 所々、飛び散った血が床を汚していた。
 コヨーテの攻撃は術式を完全に止めるには足らなかった。

 しかし、コヨーテは立っている。
 体のあちこちに氷塊を撃ち抜かれながらも、右手に持つ【レーヴァテイン】を深々と悪魔の頭骨に突き立てている。
 魔力を生み出す心臓部は聖別された【レーヴァティン】によって機能を停止していた。

「――馬鹿な……」

 悪魔の呟くような声が静寂を破った。

「残念、だったな。危なかった……、ッ!」

 コヨーテは激痛に顔を歪ませながらも、右肩を貫く氷塊を引き抜く。
 思ったよりも血は出なかった。
 放り捨てられた氷塊は床にぶつかって砕け散る。

 それを合図にしたかのように、他の仲間たちも起き上がった。
 それぞれ怪我を負ってはいるものの、体に突き刺さった氷塊は一つとしてなかった。

 氷の術式が始動する直前、詠唱を終えたバリーが【火炎の壁】を張っていたのだ。
 膨大な魔力によって固められた氷塊をすべて溶かすには至らなかったが、それでも鋭利な切っ先を鈍らせる事は十分にできた。
 悪魔を直接狙うにはコヨーテが接近しすぎていた為に巻き込む訳にもいかず、バリーの支援はコヨーテには届かなかった。

 それでもコヨーテは満足だった。
 仲間の無事を背中越しに理解したコヨーテは左手を【レーヴァティン】に添え、思い切り柄をひねる。
 穿った剣身が悪魔の心臓部をぐちゃぐちゃに破壊した。

「――ゴッ、ッ……!!」

 声にならない断末魔をあげ、悪魔の体が崩壊を始める。
 ボロボロと崩れ落ちる悪魔の体はまるで深々と降りしきる雪のように砕け、そして床に触れる前に消えていく。

「魔族である……この我が……こんな虫けら……ども、に……」

 悪魔は最後のひと欠片まで残さず消滅した。
 瘴気も消え失せた事でリアの法力は再び力を取り戻し、教会の全てを浄化しているのだろう。
 庭園の薔薇も残さず血のような赤を失い、白くなったか枯れたかしているのだろうか。

「……これは」

 他の仲間が負った傷もどんどん塞がっていく。
 リアの法力は邪なるものを撥ね退けるだけでなく、癒しの力も持っていたらしい。
 驚く事に半吸血鬼のコヨーテの傷ですら完全に塞がれた。
 この戦いに参加した冒険者を対象と設定したのかもしれないが、推察するのは野暮というものだろう。

 全ての浄化が終わり、リアは改めてコヨーテらに向き直った。

『あなたたちのおかげでお母さんを悪魔の呪縛から解き放つ事が出来ました。
 本当にありがとう……』

「冒険者の皆様……本当に、申し訳ありませんでした。
 私は神に仕える身でありながら悪魔の言葉に惑わされて重い罪を犯してしまいました。
 償いが終わるその日まで私はリアのいる天国には行けませんが……でも、いつか必ず……」

 リアが口を開きかけるも、シスター・セリアは目を伏せて首を横に振った。
 慰めや気休めを貰っても変わらない。
 言葉に出さずともシスター・セリアの胸中では後悔と贖罪の念が渦巻いているのだろう。

『だったら、その罪は私も一緒に償うわ』

「――そんな! 貴女が地獄に行く理由なんかありません!」

『ずっと傍にいたのに止められなかった私にも責任はあると思うの。
 だから……私も一緒に』

「いけません! ま、また貴女を不幸な目に遭わせるなんて、そんな……!」

『――お母さんっ!!』

 リアは上衣の裾を固く握り、俯いて表情を隠した。
 それでも口から出る言葉は震えている事は痛いほど分かった。

『……やっとまた会えたのに。
 お互いの存在を解り合えるようになったのに……、なのにまた離れ離れなんて、そんなの絶対に嫌!

 お母さんが傍にいてくれて一緒に笑ってくれるなら、それがどんな場所でもそこが私の天国だよ。
 お母さんがいてくれないと天国がどんなに素晴らしい場所でも私にとっては地獄だよ……!
 もうお母さんに寂しい思いをさせたくない。私も……独りぼっちは嫌だよ!』

「……リア」

 驚きの表情のシスター・セリアの双眸から雫が零れた。
 彼女はこの時はじめて生前のリアが不幸でなかった事を知り、そして孤独が決定的にリアを不幸にしていた事を知る。
 想いを知ったシスター・セリアはもう間違わない。

「ありがとう……」

 シスター・セリアの輪郭がぼやけた。
 悪魔によって閉じ込められた時が動き始めたのだろう。
 朽ち果てた肉体は消失し、彼女の魂だけが霊体となってリアの隣に並んだ。

「……皆様も……本当にありがとうございました。
 もう、この気持ちは言葉では言い表せないくらいです。
 こんな重罪人の私には許されぬ事ではありましょうが……
 貴女たちの歩む道に多くの幸があらん事を祈り続けておりますわ」

「皆さん本当に、本当にありがとう……、さようなら!」

 感謝の言葉を最後に、コヨーテたちの視界は真っ白な光に包まれた。
 清く、潔白で、どこまでも純粋な白色に。


「これは……?」

 ルナが目を覚ますとそこに教会などはなく、雪の中で他の仲間たちが眠っていた。
 不思議な事に、彼らのいた周囲に雪は積もっておらず彼らの身体も凍える事なく、むしろ温もりさえ感じた。
 まるで何かに守られ、包まれていたように。

(何か、ではありませんね。これはあのお二人の……)

 ともあれ雪原である事は間違いなく、いつまでも凍えないとは保障できない。
 ルナはさっさと仲間たちを起こそうとするも、昨夜とほとんど同じ状況に陥った。
 要するにレンツォとチコが渋った。
 もう一度ぶっ叩いてもいいのだが、ここはバリーとミリアに任せる事にする。

 そして最後の一人、我らがリーダー、コヨーテ=エイムズはというと。

(わわっ、コヨーテが眠っているのって初めて見ます!)

 コヨーテは普段、顔を隠して眠るのだ。
 それは宿に限らず野営でも同じで、彼の寝顔は大層なレアものである。

 しかし、どことなく生気が感じられない。
 ルナは思わず覗き込んで見るが、それが良くなかった。
 自然に目を覚ましたコヨーテと目が合ってしまったのだ。

「――ッ!?」

「……、あぁ。死んでるかと思ったのか?」

「――な、ななっ!?」

 バレていた。

「眠っていたら『死んでるかと思った』と叩き起された事は何度かあるからな」

「す、すみません……」

 体を起こしたコヨーテは気にしてないとばかりにひらひらと手を振った。
 コヨーテがいつも顔を隠して眠るのには、そういう理由があったのだ。

 半吸血鬼ゆえの生体反応の薄さなのだろう。
 それが彼を人間でない事を再認識させ、かつ彼が顔を隠さなければ安心して眠る事もできないのだと思い知らされた。

 それはどれほど寂しい事なのだろう。
 ほんの僅かでも油断すれば正体が露見してしまうという緊張感の中、彼は本当に安心して眠れているのだろうか。

 コヨーテは自分の弱みを見せる事をひどく嫌っている。
 何もかも背負い込んで、物凄く重くて苦しいはずなのに顔に出さない。
 いつか耐え切れずに崩れ落ちてしまうような、そんな危うさを感じる。

「なぁ、向こうに何かないか?」

 ルナの葛藤を知り得ないコヨーテは、前方を指して言った。
 すぐさま、心の不安を打ち消してそちらを見やる。
 雪の降り積もった森に、黒ずんだ石のようなものがあった。

「行ってみましょうか」

 あえて明るく、さっきの会話を笑い話にするように言う。
 さっき危惧した事をコヨーテに悟られてはならなかった。
 それを知ってしまえば、彼は更に苦しむのだろう。
 彼は何にでも優しすぎるから。

 少し足を進めると、あるものが目に飛び込んできた。

「古いお墓……ですね。もしかしてリアさんの……?」

「墓石の文字が擦れて誰の墓かは分からないな」

「………………」

 あの出来事は夢だったのだろうか。
 いや、そうではない。
 あの夜の出来事は実際に彼女らの身に起こった出来事なのだ。

 それを証明する唯一の証である小さな十字架を握り締めて、ルナは神に祈りを捧げた。



【あとがき】
今回のシナリオはにわかブロンティストさんの「冬に咲く花」です。
雪の日に教会に咲き乱れる赤い花に纏わるお話です。
序盤から解に至る情報が出てくるのであまり詳細なあらすじは書けないので、ぜひプレイしてみてほしい作品です。

ちなみに今回のシナリオはLeeffesさんのリクエストでした。
時期が時期だけに、レベル帯ぎりぎりになってしまいました。
ぎりぎりセーフでしょうか、ダメでしょうか!?

リドルが日本語圏でなければ通用しないものだったので、リプレイ上では泣く泣くカットしました。
実際かなり凝ったリドルなので、初見ではすごく楽しんで解いた覚えがあります。
シナリオフォルダにリドルのヒントもありますし、失敗し続ければ参謀PCが答えを出してくれます。
なので、ぜひぜひノーヒントで解いてみましょう。

某所でちょっと反応されていた聖北式起床法(物理)ですが、一足先に習得したらしいアウロラさんにも登場していただきました。
名前だけで申し訳ないです。


☆今回の功労者☆
ルナ。お疲れ様でした。

報酬:
なし

戦利品:
【聖女の十字架】

使用:
【火炎瓶】

銀貨袋の中身→6602sp


≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『冬に咲く花』(にわかブロンティスト様)

今回使用させて頂いた固有名詞
『アレリウス』(出典:『Criss×Cross(前編)』 作者:ほしみ様)
『シスター・アウロラ』(出典:『宿屋≪狼の隠れ家≫へようこそ!』 作者:Leeffes様)
『グリグオリグ修道院』(出典:『みえないともだち』 作者:Fuckin'S2002様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。
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この記事へのコメント

どうも、周摩さんに冬に咲く花をリクエストしたLeeffesです。こんにちは。

私の中の「月歌を紡ぐ者たち」のイメージには、「寒い季節」や「雪」なんかが何故かありまして…。凍れる森のファシアやミエナイトモダチのリプレイを何度も読み返したせいでしょうか。そこから、吸血鬼退治ではないけれど、このシナリオだったら彼らの冒険にぴったりなんじゃないだろうか、とプッシュさせていただきました。にわかブロンティストさんのシナリオ楽しいんだもの。めったにないプリーストに焦点の置かれたストーリーは、ぜひぜひお勧めです。
レベル帯ぎりぎりだっておっけーですよ!大丈夫です!

聖北教会式起床方法こと「荷物袋アタック」、あんまり面白くて画像作っちゃったんだけど、これが日の目を見ることあるかしら…。
アウロラに代わって謝罪します、ルナさんごめんね。

【湖面の一閃】も役に立ててるようで何よりです。
ミリアさんのアクションって、私の中では○トリックスとかより、昔懐かしい香港アクショ○ぽい目まぐるしいスピード感溢れる印象があります。

更新お疲れ様です、リクエストに応えていただいてありがとうございました!
Leeffesさんいらっしゃいませ!
リクエスト&コメントありがとうございます!

確かに私も「月歌」は冬っぽいイメージがありますね。
ちょうどその辺の時期から吸血鬼と関わり出したからかもしれません。
実はリクエストを頂くまで未プレイだったので素晴らしいシナリオとの出会いをありがとうございます!

件の「荷物袋アタック」、まさか本当に作られるとは思いませんでした(笑)
若干悪乗りが入った感じですがアウロラさんのクロス許可も助かりました。
ルナにとってアウロラさんは寝坊癖を治してくださった尊敬する先輩シスターですよー!

【湖面の一閃】は使い勝手が良くて、よく攻めの起点に使わせて頂いています。
ミリアのアクションはスパーンスパーンと飛ぶんじゃなくて、ある程度(申し分程度の)現実的な範囲でやらせていたのですが、最近だと双剣使いかつ何かと飛び回っているので「進撃の○人」の立体機動のイメージに侵食されかけています。


そして改めてリクエストありがとうございました。
次回以降の更新もお楽しみに、です!
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周摩

Author:周摩
しがないリプレイ書きのブログです。

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当ブログはリンクフリーです。報告は不要ですが、あれば相互リンクさせていただきたいと思います。

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