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『呪われし者の昼と夜』(5/5) 

「――まだ、だ」

 滔々と溢れる血を無視して、コヨーテは【レーヴァティン】を握る右手を腰に巻いていたベルトでぐるぐるに固定した。
 多少の傷にかまっている状況ではない。
 半ば引きずるように【レーヴァティン】を構え、ジェベータを見据える。

「諦めが悪いわよ坊や……」

 もうジェベータから軽口は出てこない。
 彼女は戦いが始まる前までの絶対的優位をもはや完全に失っていた。
 たとえコヨーテの右腕を潰そうが、彼にはまだ【天狼突破】による決殺の術も残っている。

 虚勢を張るだけしかできない。
 お互いに余裕なんて残っていなかった。

「今ここでお前を倒せばみんな助かる。そんな状況でどうやって諦められると言うんだ」

「……いいわぁ、だったらお望みどおり激痛に悶えながら死になさい」

 ジェベータが一歩を踏み出す。
 その前にコヨーテは二歩を踏み出していた。

 お互いに、もう一撃を入れられたら決着が付きかねない状況だ。
 後手に回る訳にはいかない。

 しかし重心が移動する度に衝撃が右腕を叩き、激痛がコヨーテの全身を強張らせようとする。
 それを無理やりに押さえ込み、コヨーテは走る。
 何度目かの激痛を耐え、ようやく間合いに入った。
 それはジェベータにとっても必殺の間合いだ。

「ッッ――、がぁぁぁああああ!!」

 吼えて、【レーヴァティン】を振るう。
 ただでさえ重量のある長剣に、壊れかけの右腕が悲鳴を上げる。
 例え完全に壊れてしまおうが固く縛りつけた右手は離れない、離せない。

 万全の一閃には比べるまでもないほどの鈍く冴えのない剣閃。
 それでもコヨーテにとっては最後の希望の一撃だ。

「おっそいわよぉ! 坊やぁ!!」

 ジェベータの掌がコヨーテの胸の前で円をなぞる。
 彼女の術式構築の速度ならコヨーテの一撃が届く前にその心臓を撃ち抜くくらい朝飯前だ。
 コヨーテは致命的に速度で劣っていた。

 だが、

「――なッ、にッ!?」

 ジェベータの掌が動きを止めた。
 円を描く一歩手前、術式が始動してコヨーテの心臓を穿つ一瞬前。
 彼女の腕――否、彼女の全身――には無数の白い布状の魔力が巻きついていた。

「――行け、コヨーテ!」

 バリーの声。
 ジェベータの動きを止めたのは、バリーだ。
 冒険者エールステゥに作製してもらった【不死者拘束の書】を起動したのだろう。
 名の通り不死者を呪縛するそのスクロールはたとえ【怪力無双】で打ち破ったとしても、設定された数十秒の間は何度も何度も自動で術式が再構築される。
 要は不死者にとってほぼ解除不可能といえる、強力な呪縛だ。

 いくらジェベータが吸血鬼として高位のランクを持っていても、呪縛を完全に打ち破る術式を持っていたとしても。
 次のコヨーテの一閃を避け得るほどの余裕はない。
 だからこそ、コヨーテはたった一度のチャンスに全ての力を込める。

 ――チリッ。

 【レーヴァティン】の剣先に程近い場所、刃の背に火花が散る。
 小さな音や閃光と共に火花が二度三度散り、次々に一箇所へ集まっていく。

 ――チリ、チリ。

 やがて火花は拳ほどの大きさの光の玉と化し、【レーヴァティン】に追従する。

「――ッ!!」

 耳をつんざく炸裂音。
 光の玉が炸裂し、爆風を撒き散らす。
 強烈な爆風と衝撃を追い風にした【レーヴァティン】は人間では到達できない速度を得て、一気に振り抜かれる。

「――がっ、ふっ……! ぎッ、あああぁぁ……あああぁあああああ!!」

 雨の音に負けないほどの、撒き散らされる水音とジェベータの悲鳴。
 右肩から入った剣先は彼女の全ての肋骨を切り裂き、途中で突き出していた右手を跳ね飛ばしながら左のわき腹を通り抜けていた。
 【既殺の剣】と呼ばれるその技の威力は、到底ヒトの生身で耐えられるものでは決してない。

 ジェベータがまだ油断していた先刻に使えればよかったのだが、湿度の高い雨の中で炎を操るにはコヨーテは未熟すぎた。
 さっきの一撃すら、【レーヴァティン】の火炎を利用してようやく、といったところだ。

 それ故に完全に仕留めきれず、その傷は浅かった。
 これだけではジェベータを滅ぼす事はできない。
 彼女の心臓はまだ動いている。

「ぐっ……!!」

 コヨーテの右手が断末魔を上げた。
 ただでさえ壊れかけだった右手が【既殺の剣】の爆発的な衝撃に耐え切れず、筋繊維が断裂したような感覚が連続している。
 鈍い痛みと鋭い痛みが交互に絶え間なく続く右手はもう使い物にならないだろうが、【レーヴァティン】はその役立たずの右手に固定してしまっている。
 左手は空いているがこのボロボロの身体ではもはや【天狼突破】を使えるかどうかすら怪しい。

「コヨーテッ!」

 レンツォの声。
 そしてその方角から飛んできた『何か』を左手で掴む。
 ピリ、と指先が痺れる感覚があった。

「――と、」

 コヨーテは更に一歩、深く踏み出した。
 まだ無事な左手を、ジェベータの心臓めがけて突き出す。

「――どッ!」

 冒険者タガイサの手によってクスノキやヒイラギといった魔除けに用いられる木を杭とした、対吸血鬼用としては有名な武器。
 その手に持った【】を――

「――けェェェェェッ!!」

 時が止まったかのような錯覚。
 【霊木の杭】を突き出したコヨーテも、呪縛に抗おうとするジェベータも、その動きを止めた。
 しとしとと降り続く雨の音だけが、『祟られた森』を包んでいる。

「嘘、でしょ……」

 ジェベータは視線を下へと落とす。
 コヨーテの手を、それに握られた【霊木の杭】を、それが深々と突き刺さっている自分の胸を、視界に収める。
 【霊木の杭】は寸分違わず吸血鬼の心臓を穿っていた。

「そん、な……、永遠の命を得た、はずの、この私……がっ……!?」

「そんなもの幻想だ……お前は今ここで死ぬんだ、ジェベータ」

 コヨーテは左手を思い切り捻って押し込んだ。
 【霊木の杭】が身体を貫き、ジェベータの口から大量の血が溢れ出す。
 彼女の身体が大きく傾ぎ、しかし地面に倒れる前にその身体は塵芥へと帰した。

 終わった。
 吸血鬼ジェベータは消滅した。
 そう知覚したと同時にコヨーテも膝を突き、うつ伏せに倒れる。

「……コヨーテ、灰を集めろ」

「分かった……」

 コヨーテは倒れた体勢のまま、バリーから投げ渡された麻の袋にジェベータの遺灰をできる限り詰めていく。
 今回のジェベータ討伐の依頼は生死を問う事はないが、この灰がジェベータであると証明する手段はない。
 よって事実上の依頼失敗となり、報酬は貰えなくなる。

 その代わりとして吸血鬼の遺灰を入手しておくのだ。
 吸血鬼の遺灰といえば錬金術や一部の死霊術に使用される媒体にもなり得る。
 当然、かなり貴重な素材ゆえに高値で取引されている。

 ジェベータのランクを考えれば銀貨一〇〇〇枚ほどで売れるはずだ。
 本来の報酬の半分ではあるが、贅沢は言えない。
 そもそもルナの命を救えた時点で『月歌を紡ぐ者たち』にとっては十分だったからだ。

「……ロージア」

 吸血鬼の少女ロージアは少し離れたところからコヨーテをじっと見つめていた。

「オレを……殺すか?」

 コヨーテがロージアを一度殺した事はどうあっても覆らない。
 彼女にはコヨーテに復讐する権利がある。
 今のコヨーテではジェベータに力を奪われて弱体化しているロージアでも殺されるかもしれない。

「……いいえ。今の私ではあなたには敵いません。私だって何度も死にたくはありませんよ」

 意外な回答ではあった。
 彼女が何を思い、どうしてそういう回答に至ったのか、コヨーテには分からない。

「でも、いつの日かあなたに復讐しに行きますからね。
 首、綺麗に洗って待っててください」

 にやり、と白く鋭い牙を見せてロージアは笑んだ。
 そうして蝙蝠へと姿を変えると、シューザー村とは違う方向へと飛び去っていった。

 ここでようやく緊張が解けたのか、コヨーテの身体から力が抜けた。
 肘で上体を支えようとするがそれすらも叶わず雨でぬかるんだ地面が頬や髪を汚していく。
 どうにか仰向けに転がったところで、最後の力を使い果たしてしまった。

「……誰か、動けるか?」

「無理だ」

「同じく」

 チコやミリアはまだ気を失っているらしい。
 意識のあるバリーはジェベータに吸血され身動きがとれず、レンツォは全身に切り傷を負っていて血が足りていない。
 誰も死ななかった事は僥倖と言えるが、如何せん動けないのでは危機が去った事にはならない。

「……だよな」

 コヨーテも仰向けに倒れたまま、指一本動かせない。
 不慣れな【レーヴァティン】の魔力解放と【既殺の剣】による精気オドの変換に加えて度重なる秘術の使用によってコヨーテの体はボロボロだった。
 加えて、その間にも雨は降り続き、コヨーテの体を蝕み続ける。

 このまま雨に曝され続ければ半吸血鬼といえど力を奪われ続けていつかは死んでしまうかもしれない。
 せっかくジェベータを倒し、ルナを救えたというのにそれではあまりにも報われない。

 そもそもここは『祟られた森』と称されるような場所だ。
 たとえ雨に降られていなくても何が起こるか分からない危険な場所なのだ。
 そんな場所に怪我の酷いチコやレンツォを放っておくのは拙い。

「……死んでも戻らなくちゃな」

「死んじゃ駄目っしょ……ルナに怒られるよ」

「それはおっかない、な……」

 言葉とは裏腹に、コヨーテのまぶたは重く圧し掛かり、意識は暗く沈んでいった。



『――そして、陰鬱たる汝が墓に忍び戻りし暁に屍鬼悪鬼と肩を並べ唄い踊り狂うがいい』

『屍鬼悪鬼より忌まわしき汝の如き化物に悪霊でさえ恐怖にうち震え逃げ帰ってしまうまで――!』



「起きましたか」

 コヨーテが目を開けると、そこにはルナの顔があった。
 なんだかいつぞやのシチュエーションと似ている気がする。
 というか同じようにコヨーテの頭の下にはルナの太ももがあると思う。

「ルナ……、目覚めた……のか」

「はい。みんなが命懸けで戦ってくれたおかげです」

 まだうまく事情が飲み込めていないコヨーテは、視線をあちこちへやって情報の収集に努める。

 どうやらまだ夜は明けていないらしく、黒々とした分厚い雲が空を覆ったままだ。
 しかし雨は止んでいるところを見ると意識を失ってからだいぶ経ったのではないだろうか。
 辺りにはバリーらの姿はなかった。
 自身の居場所が変わったのかもしれないとの考えが脳裏を過ぎったが、どうもまだ『祟られた森』のようだった。

「……みんなは無事なのか?」

「今頃はもう、村に着いている頃ですよ。
 私の体調が回復して呪いが消えた事を伝えると、協力してくれた冒険者の皆さんが救助を手伝ってくれたんです。

 それとチコやレンツォには【癒身の法】を施しましたし、バリーとミリアの傷はそう深くありませんでした。
 みんな、命に別状はないですよ」

「……そっか」

 コヨーテは短く息を吐いた。
 仲間の無事を確かめた彼は、今度はさっきから感じていた疑問をぶつけてみる事にした。

「ところで、今オレはどういう状況なんだ?」

「コヨーテが一番ひどい怪我をしていたのに【癒身の法】を施さないのは不自然でしょう?
 だからあなたを最後に残して私一人で何とかすると伝えて、他のみんなを先に村へ運んでもらったんです」

「……気を使わせたみたいだな。助かったよ、ありがとう」

「いえいえそんな」

「じゃあもうひとつ。?」

「――すごい。もうバレた」

 ルナは隠そうとしなかった。
 あれだけの怪我を【治癒】し、雨に降られ続けてもコヨーテが死んでいない理由がそれなのだろう。
 コヨーテが気を失っている間に、ルナは自らの指を傷つけてその血を舐めさせたのだ。

「悪い。本当に、悪い……」

「コ、コヨーテは何も悪くありませんよ。私が勝手にやった事ですから」

「他人の、それも知った者の血を飲むなんて……気味悪いだろう」

「そんな事はありません!」

 叫んで、ルナははっと口を噤んだ。
 突然の大声にコヨーテも目を丸くしている。

「と、とにかく、私が血を飲ませたのはあなたが衰弱していく様子を見ていられなかっただけですから。
 私がやった事はあなたがジェベータを倒して私を救ってくれた事とそう変わりはないはずです。
 ですから、この話はもう止めにしましょう……?」

「……分かった」

 もう全身の気怠さも残っていない。
 空もうっすらとだが白んできている。
 もう迎えを待つ必要がないので、コヨーテは自らの足で村に戻る事にした。


 賞金首ジェベータは死んだ。
 人間としてでなく吸血鬼として死んだのだ、亡骸が残るような事はなかった。
 彼女を殺害した証拠が消滅した為、コヨーテたちも他の宿の冒険者たちも大した報酬を得られずに終わる事となった。

 しかしジェベータ討伐に協力してくれた冒険者八名にはすでにそれぞれ報酬を支払っている。
 諸経費込みで考えればジェベータの遺灰を最高値で取引したとしても割には合わないだろう。
 あれだけの苦労をしたにも関わらず収支としてはタダ働き同然だ。

 『月歌を紡ぐ者たち』はその知らせをシューザー村の宿で聞いていた。
 予想通りの結果であったため、誰も落胆するような事はない。
 それでも、

「何かさぁ、釈然としない結末になっちゃったね」

 ジェベータが吸血鬼化していた事と彼女にルナが噛まれて屍鬼化する寸前だった事はこの作戦に参加した誰もが認識している。
 彼らの証言と遺灰を見せ、ルナが正常な人間である事実を突きつければジェベータを倒した証拠となるかもしれなかった。
 多少強引かもしれないが、ジェベータを倒した事は事実なのだから。

 とはいえ、相手は貴族様だ。
 恩を売れないのなら無闇に喧嘩を売るのは得策ではなかった。
 相手の立場になってみれば、自身の目で確かめられない結果が得られても納得はできないのだろう。

「でも、私はこうして生きて帰れただけでも僥倖だと思っていますけどね。
 何せ屍鬼化しかけたのですから、あの時を思い出すと今でも身体が震えますよ」

「違いねぇな」

 そう言って、みんな笑った。
 笑い話にする事ができた。
 それが何よりも嬉しくて、コヨーテは微笑む。

 過酷すぎる運命に抗い、打ち勝つ事ができた。
 かつて救えなかった少女ドロテアのように屍を抱いて後悔の血涙を流す事もない。

「改めてだ、ルナ。生きていてくれてありがとう」

「………………」

 ルナは一瞬驚いた顔をして、それから半目気味になってコヨーテを見つめた。
 要はジト目である。

「あれ? どうした?」

「聖誕祭の夜も言いましたけど、感謝するのはこっちですよ?
 どうしてやられっぱなしだった私が感謝されるんですか……」

「そうでもないさ。君が必死に吸血鬼の呪いに抗ってくれていなきゃ、間に合わなかったかもしれないだろう?」

「でも……」

「オレは誰にも死んでほしくなんかなかった。
 だから呪いと闘ってくれた君にも感謝しているんだ、何かおかしいか?」

「……いいえ、コヨーテらしいです」

 諦めたように息を吐いて、ルナは笑った。
 頬を少し赤らめてはにかむように微笑むルナに、コヨーテの心臓が小さく跳ねた。
 初めての衝撃に、コヨーテは自分の胸を押さえた。



 同時に、ロージアから問われた言葉を思い出していた。
 それが原因なのか、やけに意識してしまう。
 というか今の今まで意識しているという事すら、気づいていなかった。

 良くない。
 何故か分からないが、このままでは良くない気がした。

「……コヨーテ? どうかしました?」

「いっ、いや。なんでもないよ」

 多少声が上ずってしまったが、どうにか誤魔化す。
 分からない事は仕方がない。
 頭を冷やしてからもう一度考えるべきだ。

「事の顛末も聞けた事だし、もうこの村を離れよう。
 ジェベータの脅威は去ったがまだ問題は残っているんだからな」

「『』――だな」

 今夜がジェベータが指定した三日後にあたる『紅し夜』だ。
 呪いが消えたルナが屍鬼化する事はないが、増幅した瘴気に中てられると何が起こるか分からない。
 それでなくてもシューザー村には『祟られた森』という曰く付きのスポットがある。
 吸血鬼と因縁を持つ『月歌を紡ぐ者たち』がこの村から早く離れるに越した事はない。

「それで、だ。お前らに提案がある」

「提案?」

「もうすぐ北のロスウェルで年に一度の祭りが催される。
 豊作祈願と緑への感謝を兼ねた街を挙げての大規模な奴でな、結構見ものらしい。
 この村からまっすぐ向かえば間に合いそうだし、行かねぇか?」

「へぇ、あんたにしちゃ珍しい提案だね」

「でも『紅し夜』は……」

「無論、道中には小規模だが町はあるし、今夜までにはそこに辿り着けるはずだ。
 安全性はリューンへの帰路とそう変わらねぇはずだぜ」

「それならどっちでもいいって事かい。じゃあロスウェル行きに賛成するよ」

 どちらでも変わらないのなら、と他のメンバーも追々賛成に傾いた。
 年に一度の祭りというのが気にならなかったといえば嘘になるだろう。

 決定から行動までは早かった。
 いちいち出発の準備なんかで手間取っているのは駆け出しの証だ。
 日が昇りきる前に、『月歌を紡ぐ者たち』は北へ北へと進んでいく。

 昨日の雨が嘘のように、空には一片の雲もない快晴だった。
 それも今夜の『紅し夜』がもたらしているものなのだろうか。

 しばらく森を進んでいくと、『月歌を紡ぐ者たち』にとって絶望的な光景が目に入ってきた。
 ロスウェル郊外にはヘンズークの河と呼ばれる大きな河川がある。
 それに架かっていたはずの橋がなくなっていた。

「オイオイオイオイ、有り得ねぇだろ! 昨日のあんな雨で橋が崩れるだぁ!?」

「落ち着けバリー。何が原因にしろ、崩れたものは仕方ない」

「クソッ! 少し西に進みゃ別の橋があるはずだ。泳いで渡れる河じゃねぇ、さっさとそっちへ向かうぞ!」

 北へ向かうと提案した後ろめたさもあったのだろう、バリーは苛立ち紛れに舌を打った。
 日が昇りきってからだいぶ経った今では、シューザー村へ戻る事すらできない。
 そもそもシューザー村は危険だからと出発したというのに、戻る選択肢なんて最初からなかった。

 結果として、西に向かった『月歌を紡ぐ者たち』は無事な橋を使って渡河に成功した。
 しかし大幅に回り道した事で、その頃には太陽は今にも山陰に隠れようとしている時分になってしまう。

「……間に合いそうにねぇな」

「あぁ、覚悟を決めたほうが……いいかもな」

 そんな会話を続けている間にも時間は失われていく。
 やがて太陽は完全に沈み――

「『紅し夜』が、始まる――!」



【あとがき】
今回のシナリオはほしみさんの「呪われし者の昼と夜」と「残酷な救済」です。
「呪われし者の昼と夜」をメインに据えつつ前日談の「残酷な救済」もプレイしています。
吸血鬼と敵対するシナリオは他にもあるでしょうが、ここまで弱点を集めて武蔵坊弁慶状態で戦ったのは初めてでした。

あとは何といっても作戦に参加した他の宿の冒険者たちとの共闘ですね。
本文中では八人すべての冒険者に協力いただきました。皆さんありがとうございました!
実は『大いなる日輪亭』からも、冒険者マリナを登場させていただいています。
一番目立たない役割に周摩自身が志願したのですが、あれはあれで彼女らしいのでグッドでした!

ルナが目覚めなくなったのは三日目に突入させない為でした。
本文中でも話していますが、夜に吸血鬼と戦うなんて無謀すぎますからね。
その理由付けに危機的状況を作り出しています。

そして夜薔薇さんとの会話を改変したのは、ほとんど二人の会話なのに喋らない外野がいるのも見栄えが悪いと感じた影響です。
おかげさまでいろいろと進展しました。
何がとは言いませんが。

本文中では戦いの場を移動していますが、実際にプレイした際に同様の手順を踏んだ場合は、そういう流れにはなりません。
というのも、初日に下準備に行った『アレ』はケチらない選択をしないと時間経過で壊されてしまいまして、それが発覚したのが本編書き上げてこうやってあとがきを書いているついさっきでして……
下準備の『アレ』を怠るようなコヨーテではありませんし、逆に戦いの場を移動してくれないとあのお方が登場してくれないというジレンマ。
ほしみ様本当にごめんなさい……

前日談の「残酷な救済」はコヨーテでプレイしましたが、どうも「呪われし者の昼と夜」にあまり影響の出ない選択肢をとったような気がします。
でも彼ならああいう行動をとるはずなので後悔はしていません。
(他のプラベ宿で別の選択肢を取りながら)

今回より【レーヴァティン】が三段階目に成長しました。
「残酷な救済」の狼戦で馴染んだので「魔剣工房」さんへ打ち直しに行ったらハリーのイベントが発生するというハプニングが。
イベントで入手する【緑曜石】を引き取って貰い、±0で魔剣レーヴァティンの完成です。
ちなみにハリーイベントは描写するタイミングが見つからないのでカットしました。

今回、コヨーテが習得した(というかしていた)技能はRiverさんの『工房「無謬の天秤」』より購入させていただきました。
コヨーテは魔法が使えないので魔術とは似て非なるこの技能の存在はとってもありがたいです。
せっかく【レーヴァティン】があるのだからとタイミングを合わせて購入した節はあります。

そうそう、この記事を投稿した2014/07/25時点で『工房「無謬の天秤」』はテストプレイ中でござんすよ旦那。
ミストさんの姉弟子の幼竜エリザベートちゃんが加わり、魔女術を習得できるようになっています。
ダークだけど一部ファンシーな魔女術、そして愛らしい幼竜エリザベートちゃんに興味がお有りならさっそくGO!
→Riverさんのブログ『必殺川の字切り

本文を読んでいただいた方はもうお分かりかと思いますが、次回は『アレ』です!
だいぶ先の展開が読めちゃうとは思いますが、予想の斜め上を飛べるようがんばります。


☆今回の功労者☆
コヨーテ。おつかれ。

報酬:
「残酷な救済」:500sp
「呪われし者の昼と夜」:200sp(差し引き)

打ち直し-1000sp(魔剣工房)
【ロングソード】→【レーヴァティン】 

戦利品:
「魔剣工房」
 【緑曜石】→工房に売却+1000sp
 【盗賊の閃き】
「呪われし者の昼と夜」
 【夜薔薇の呪い】
 【紅き渇望】
 【亡者感知の杖】
 【銀メッキの剣】

購入:
【既殺の剣】-1600sp(工房「無謬の天秤」)

使用:
【火炎瓶】

LEVEL UP
ミリア、レンツォ→5

銀貨袋の中身→3802sp

≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『残酷な救済』(ほしみ様)
『呪われし者の昼と夜』(ほしみ様)
『魔剣工房』(Djinn様)
『工房「無謬の天秤」』(River様)


当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。
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周摩

Author:周摩
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