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PC3:バリー 

 そこは交易都市リューン。時は早朝。
 その日、バリーはリューンの大通りを歩いていた。
 早朝特有の清々しい空気を肌で感じながら、軽い散歩のような足取りだ。

(やれやれ、いい天気になりそうだな)

 昇った朝日を、目を細めて見る。
 健康的なその光は彼には不似合いで、少し眩しすぎた。
 ボサボサの長い赤髪と、こけた頬が余計に不健康そうなイメージに拍車を掛けている。

 そんなバリーが、早朝から外を出歩いているのには理由がある。
 彼が懇意にしている冒険者の宿、『大いなる日輪亭』の亭主からお呼びが掛かったのだ。
 偶然同じ方向に遠出する予定だったという冒険者が、亭主からの手紙を持ってきたのが始まりだった。

 バリーは現在、リューン郊外のとある人物の家に居候している。
 彼が『賢者の塔』へ出入りする時、特に長くなりそうな用事には頻繁に『大いなる日輪亭』を利用しているのだ。

 とはいえ彼の居候生活は、最近では露骨に煙たがられている。
 毎日ぶらぶらとやることもなく過ごしていることも、その理由の一つではある。

(……俺に真面目に生きろってか)

 そのことを思い出すと、思わず苦笑いしてしまう。
 今更何を真面目にしろと言うのだ、と笑わずにはいられないのだ。

 バリーはかつて『賢者の塔』で将来を期待された魔術師の卵であった。
 彼の父はそこそこに名の知れた魔術師であり、その遺伝子を受け継いでいるのだ。
 しかし彼の父が魔法実験の事故で他界してからは、今の怠けたバリーへと変わってしまった。
 
 どんなに偉大な人物でも、どんなに強大な人物でも、死ぬときは呆気なく死ぬ。
 父の死を受け入れた瞬間に、あまりにも脆い生命の儚さを思い知らされたのだ。
 どうせいずれ死ぬのなら真面目に生きては損をする、といった具合である。

 といっても、死にたいとは思っていない。
 彼自身、実のところ良く分かっていないのだ。
 自分が何をしたいのか、何をしたくないのかが分かっていない。

「はぁ……」

 思わずため息をつく。
 今回、亭主に呼び出された理由は何なのか、大まかな予想はできた。
 恐らく開口一番にこう言うことだろう。

『いい加減ツケを返せ』

(それができたら苦労しねぇんだけどなァ)

 バリーは手に職を持っていない。
 『賢者の塔』に出入りする身ではあるが、収入はないに等しい。
 新たな魔術の開発も行わなければ、誰かを師と仰ぐこともないからだ。

 今は『大いなる日輪亭』で、冒険者もどきをしている。
 もどき、というのは宿に常駐しておらず、気分でふらっと現れては仕事をしているからである。

 基本的に群れることを嫌う彼は、一人でできる仕事を回してもらっているのだ。
 それでも、命の危険なしに僅かの収入を得られた。
 その収入も雀の涙ほどの少なさゆえに、彼はどうにか食いつないでいる状況である。

(もし本気で言ってるのなら、どうするか……)

 バリーは宿へのツケを一度に返せるほど現金は持ち合わせていない。
 だが彼が所持している魔道書を売れば、いくらかの金にはなるだろう。
 その魔道書は亡き父が研究していた新しい魔術の理論であり、唯一の形見でもある。

「あれは……売りたくねぇなぁ」

 思わず、そう呟いた。

 今では無気力の塊である彼も、その魔術だけは研究を続けている。
 『賢者の塔』で研究してもいいのだが、彼には研究場所を借りる金も無ければコネもない。
 もしどちらかがあったとしても、いずれ他人に横取りされるのが関の山である。

(まァ、その時に考えるか)

 結局、自分では結論を出せない。
 彼は金を借りるが、それを返さない不義理は大嫌いだった。

 そうは言っても父の形見を売るのには抵抗がある。
 彼の父の意思は、確かにその魔術に宿っているのだ。

「……ん?」

 考えを巡らせながら歩いていたため、今まで気づかなかったが、目の前に人が倒れていた。
 街中で行き倒れるという珍しいその光景に、バリーは一瞬思考を中断させられた。

「おい、生きてるか?」

 バリーは引きつった表情のまま、近づいて様子を観察した。
 いかに彼といえども、死体には触りたくない。
 その異常事態に取り乱さずに対処する自分は相当冷めているな、と自嘲する。

 倒れているのは少女だった。
 少し暗めの金髪と、それを纏めた大きな三つ編みが特徴的な娘だ。
 どうやら生きているようで、呼吸で胸が上下している。

「おい、どうしたんだ?」

 少女の頬をぺちぺちと叩き、どうにか起こそうとする。
 やがて、『うぅーん……』とダルそうに少女は目を開けた。

 驚いたことに、彼女の瞳は左右で色が違っていた。
 左目は深い青だが、右目は髪の色と同じ金色である。
 その双眸をきょろきょろと辺りへ向けている。

 そして一言。

「……おなかすいた」

 と呟いて再び寝てしまった。
 その様子を見ていたバリーは、呆れて何も言えなかった。



「おう。来たかバリー、――って何だそりゃ、どっから攫ってきた?」

「……行き倒れだよ。信じらんねぇだろうがよ」

 バリーは結局、その少女を背負って宿へやってきた。
 インドア派の彼としては、小柄な少女ですら重く感じられる。

 親父は娘さんに少女の介抱を頼み、少女を娘さんの部屋へ運んだ。
 忙しい朝の時間は終わりつつあったので、娘さんには少女の目が覚めるまで付いてもらうことにした。

「腹減ってんだ。親父、いつもの頼む」

 カウンターに腰かけ、いつもの調子で注文する。
 朝一番で慣れない長距離散歩を、しかも少女を背負って敢行したものだから、腹が減っている。

「分かった。待ってろ、何か作るように言ってくるから」

「へぇ、今日はコヨーテなのか」

 『大いなる日輪亭』では、少し前から朝食の仕込みは親父かコヨーテがやることになっていた。
 とはいえ、ほとんど親父がやっているようで、コヨーテが担当することは珍しい。
 味は僅かに親父に軍配が上がるものの、コヨーテが担当でも誰も文句は言わない。

 親父にとってはそれが嬉しいのか、心なしか上機嫌のようだった。
 厨房に入り、少しして戻ってきた親父は、手にカップを持っている。

「飲んでみろ、新しい葉を使ってみたんだ」

 中身はどうやら紅茶のようだ。
 鮮やかな赤の液体が、湯気と共に香りを振りまいている。
 自信作らしく、親父の表情は明るい。

「腹ァ減ってるってのに紅茶とは洒落てやがる」

「いいから。文句言うなら代金吊り上げるぞ」

「まァ、商売熱心なのは良いことだけどよ」

 バリーは微笑し、カップに口をつけた。
 彼は親父の淹れた紅茶が好きだ。
 どこから仕入れているのかは不明だが、茶葉の質とそれを淹れる技術は高い。

「それで、話ってのは?」

 半分ほど飲み干したカップをカウンターに置いた。
 どうにもツケの話をする雰囲気ではない。

「単刀直入に言おう。
 お前、ウチの専属冒険者にならないか?」

「……は?」

 バリーは驚いた。
 まさかこういう話が親父の口から出るとは思っていなかったのだ。
 同時に、この程度で驚く自分の心の弱さを恥じた。
 『魔術師たるもの、常に冷静であれ』とは亡き父の言葉であったからだ。

「俺はお前の腕を買っている。
 経験は浅いが、それを凌駕する頭脳を持ち合わせていることも知っている」

「おい、止せよ。買いかぶり過ぎだぜ。
 それにどうしたんだよ、随分と急な話じゃねぇか?」

 誤魔化すように、バリーは再びカップに口をつける。

「実はつい昨日冒険者として登録した奴がいるんだが、まだ仲間を探している途中でな。
 お前は充分な実力を持っているから、そいつの手助けをして欲しいんだよ」

「へぇ……」

 バリーは適当に相槌を打つ。
 紅茶を全て飲み干し、カップをカウンターに置いた。

「珍しく精力的に動いてるじゃねぇか。
 あんたが贔屓するほどの奴なのか、そいつは?」

「……少し、心配でな。
 あいつは世間をあまり知らない。
 下手をすれば、それが原因でダメになってしまうこともある」

(つまり、世間知らずのボンボンか?)

 バリーは金持ちの子が道楽で冒険者になるのが嫌いだった。
 人生の苦労を知らないような奴らが、憧れだけで冒険者になるなど死にに行くようなものだ。
 所詮、財力を背景にした我侭が通用するのは、人の世界だけなのだから。

 間髪いれずに断ろうとは思ったが、ひとつだけ気にかかることがある。
 何故親父が、わざわざ呼びつけてまでバリーを誘ったかだ。

 夢や憧れだけで冒険者になろうとする奴は、必ず早死にする破目になる。
 そのことは、誰よりも親父が一番知っているはずだ。
 普段なら冒険者登録すら断るはずなのだが、何か理由があるのだろうか。

 バリーはその疑問を親父に投げかけなかった。
 この頑固親父は金では動かない。
 どんなに大金を積まれようと、彼の正義に反していればつき返す男である。
 何か特別な事情があるのだろう。

「……会ってみないことには分からん」

 バリーはぶっきらぼうに言った。
 正直、冒険者という仕事には興味はあった。
 それ以上に、彼は今の生活に不満を感じていたのだ。

 陰鬱とした人生にも飽き飽きしていた。
 もしかすると、冒険者として生きるもの悪くないかもしれない。
 何より、親父がここまで自分を認めているのなら、断るのも悪い気がした。

「そうか、じゃあ少し待っててくれ。
 すぐに呼んでこよう」

 そう言って、親父は二階の客室へと向かった。

「お待たせ」

 絶妙なタイミングで、コヨーテが食事を運んできた。
 質素だが温かいこの宿の食事は、孤独だったバリーには貴重だった。
 バリーはコヨーテの料理の腕の上達ぶりに驚きつつ、その料理に舌鼓を打った。



【あとがき】
PCその3、バリーの登場です。
旧作(紅蓮の剣)のロイドとほぼ同一人物です。

以下、設定時の覚書。
・魔術師の家系に生まれる。
・幼年期に病で母親を、青年期に魔術の実験事故で父親を亡くしている。
・生来の怠け癖が災いして、『賢者の塔』では快く思わない者も多い。
・好きなことにはとことんのめり込み、そのためには苦労を厭わない。
・視力が悪く、常に眼を細めているため、かなり目つきが悪い。
・宿の親父とは結構長い付き合いである。
・高慢・利己的・ひねくれ者という、やたらに敵を作りそうな性格。

・初期所持スキル
「魔法の矢」:入手可能シナリオ「交易都市リューン」(GroupAskさん)
「眠りの雲」:入手可能シナリオ「交易都市リューン」(GroupAskさん)

○設定上の持ち物
・杖(魔術用、護身用)
・本(魔道書だったり雑学書だったり)

◆バリー(♂・大人) 策士型
(画像は自作です)
バリー・フィッツジェラルド

都会育ち   不心得者   冷静沈着
貪欲     利己的    神経質
勤勉     高慢     ひねくれ者
名誉こそ命

インテリで抑え役のおっさん。
乱暴な口調が楽しくなってきてかなりエスカレートしてしまうのが玉に瑕。
コヨーテの次に心情描写が楽。
CardWirthの世界観で眼鏡ってどうなんだろう。
バリーには作者の趣味で眼鏡つけてますが、作中での描写はありません。
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周摩

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