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PC5:ミリア 

 そこは交易都市リューン。時は正午。
 コヨーテらはリューンの中央広場へとやってきた。
 昼間は冒険者も客も少ないので、仲間を集うことは難しいのである。

 初めて都会に出たチコは辺りをキョロキョロと見回していた。
 あまり出歩く機会の無かったルナも、人ごみの中にあって落ち着かない様子である。

「……やれやれ。
 何が悲しくてリューンの観光なんてしなきゃならねぇんだよ」

 バリーは文句たらたらである。
 とはいえ、リューンの街を知らないチコのためにも、この街を案内しておかなければならない。
 いざというときに、どこに何があるかくらいは知っておくべきなのだ。

「いいじゃないか、どうせ暇なんだろう?」

 コヨーテはどこか上機嫌のようだ。
 普段から宿の仕事ばかりしていたので、仕事以外で外を出歩くのは久しぶりなのだった。

「バァカ、暇なら何でもいいってものじゃないだろうが。
 どうせ暇なら、俺は宿で本でも読んでた方が良かったぜ」

「バリーは歩くの嫌いなの?」

 チコは首を傾げて聞いた。
 身長がバリーの腹辺りまでしかないので、彼を見上げる形になっている。

「あァ、嫌いだね。
 俺は頭脳労働の方が得意なんだよ。

 大体なぁ……
 この街は広いが、俺達が頻繁に利用するってったら、聖北教会と賢者の塔くらいだろ。
 雑貨店だのは、そこら中にあるだろうが」

 駆け出し冒険者が主に利用する施設と言えば、『聖北教会』『賢者の塔』『盗賊ギルド』である。
 他にも精霊を研究する『精霊宮』や、戦闘技能を磨く『闘技場』がある。
 とはいえ前者は格式が高いことで有名で、駆け出しはあまり利用できない。

 『雑貨店』は冒険者向けの商品を扱っている店がほとんどである。
 交易都市であるリューンでは、冒険者が他の街から持ち込むものも商売となる。
 よって冒険者とは銀貨による売買の他に、物々交換も成り立つのだ。
 それゆえ、こと『雑貨店』に関しては利用する店は選んだ方が良い。

「雑貨店はオレが馴染みの店を知っている。
 あの店主は親父と仲が良いし、信頼の置ける人物だ」

 コヨーテは今朝まで冒険者の宿で働いていた。
 そのため、冒険者が好んで利用する雑貨店等の情報はある程度持っている。

 それも、コヨーテの強みのひとつだ。
 冒険者は腕っ節だけが強さではない、とは親父の言葉である。

 中央広場から程近い場所に、雑貨店はあった。
 一般的な雑貨店としてはさほど大きくはない。

「……いらっしゃい。おや、コヨーテかい」

「久しぶりだな、婆さん」

 出迎えたのは、初老の女性だった。
 婆さん、と呼ぶほど彼女は老いてはいなかったが。

「今日はどんなお使いだい?」

「いや、今日は仕事じゃない」

 コヨーテは自分が冒険者になったこと、後ろの彼らが仲間であることを伝えた。
 店主らしき女性は嬉しそうに微笑み、バリーらに挨拶した。

「冒険者になったのなら、勿論ウチを利用してくれるんだろ?」

「ああ、そのつもりだ。
 言っておくが、オレたちに小銭ちょろまかすような真似は通用しないからな」

「なんだい、人聞きの悪い。
 あれはデズモンドのバカが悪いんじゃないか」

 二人はそう言って笑いあう。
 先ほどコヨーテは信頼の置ける人物だ、と言っていたがこの会話を聞く限りでは不安になってくる。

「おい、本当に大丈夫なのかよ」

 店を出てすぐ、バリーは聞いた。

「何、冒険者相手に商売しようって奴らだ。
 あのくらい狡猾で肝っ玉が据わってなきゃできないさ」

 そういうものかねぇ、と呟いてバリーはため息をついた。



「どうだチコ、場所は把握できたか?」

「んー、大体はね」

 太陽が少しずつ傾きだした頃、コヨーテらはリューンの主要施設を回りきった。
 後は、この道を真っ直ぐ進めば宿に着く。

「や、止めてください!」

 ふと、聞きなれた声が耳に入った。
 その方向へ目を向けると、三人の男性が一人の女性を取り囲んでいた。
 女性は紛れもなく、『大いなる日輪亭』の娘さんだった。

「いいじゃねぇかよ、姉ちゃんよう。ちょっと付き合えって」

「ちょっと、止めてってば……あ! コヨーテさん!」

 コヨーテの姿を見つけた娘さんは、素早くコヨーテの背に隠れる。
 どう見ても厄介事の様子で、面倒に思ったバリーはコヨーテからそそくさと距離を置いた。

「おい、何があったんだ」

「買出しに出てたんだけど、この人達が……」

 見ると、相手はいかにもなチンピラ集団である。
 気に入らなければ暴力によって従わせようとするだろう。

「おいおい兄ちゃんよぉ、怪我したくないだろ?
 そのキレーな顔に傷つけられたくなきゃ、そいつをこっちへ渡しな」

 リーダー格の大柄な男が、下卑た薄笑いを浮かべて言った。
 後ろに控えるチンピラ二人もげらげらと笑いあう。

(……やれやれ、最近こういう奴らとばかり縁があるな)

 コヨーテは諦めたようなため息をついた。
 いつの間にか、辺りには何事かと集まった野次馬がコヨーテらを囲んでいた。
 危険な目に遭わせる訳にもいかないため、娘さんをバリーに任せる。

「悪いが、それはできない」

「あぁん!?」

 その毅然とした態度が気に食わないのか、チンピラは不機嫌な声を上げる。
 チンピラ三人に対して、コヨーテは一人である。
 ルナやチコに喧嘩は無理だろうし、バリーもこういった接近戦は不慣れだろう。
 ふと、今はコヨーテしか前線で戦える者がいないことに気づく。

(戦士が必要だな……)

 コヨーテらは早くして貴重な僧侶、魔術師を得た。
 だが、反対に冒険者の大多数を占める戦士が不足している。
 これでは折角の僧侶や魔術師が活かせない。

「へっへ、人前だからって英雄面か?
 内心怖くてたまんねぇんだろ、なぁ?」

 リーダー格のチンピラが、コヨーテの胸倉を掴んだ。
 身長差は歴然で、チンピラがコヨーテを威圧する形になっている。
 それでもコヨーテは表情を崩さない。

「それは違う」

 その声を発したのはコヨーテでもチンピラでもなかった。
 野次馬の中から、その声の主が歩み寄ってきた。
 声の高さから、どうやら女性らしかった。

 大柄であるチンピラと同じくらいの身長の、ほっそりとしたシルエットだった。
 白い外套を羽織り、顔は目深に被ったフードで鼻から下しか分からない。
 腰には二本のショートソードを、交差するように吊っていた。

「あぁん?何だてめぇは!?」

「彼はあんた達に恐怖なんて感じていない……
 面倒なことになった、と感じてはいるかもしれないけどね」

「ンだとォ!?」

 がなるチンピラに対して、臆することなくはっきりと言った。
 コヨーテはこっそり「……正解」とだけ呟いた。

「それでも、一人に対して三人というのは公平じゃない。
 ここは私が助太刀してあげる」

 女性のその声は、場違いに明るかった。
 思わずコヨーテが噴き出してしまうくらいだった。

「……てめぇら、いい加減にしろよ」

 舐められていると感じたのか、リーダー格の男が胸倉を掴んでいる手を更に強く締めた。
 それでもコヨーテは顔色一つ変えず、男の腕を掴む。

「こ、こいつ……!」

 ギリギリ、と恐ろしい力でコヨーテはチンピラの腕を締め上げた。
 たまらずに胸倉を放し、激昂したチンピラは懐からナイフを取り出す。
 後ろの二人も、呼応するようにそれぞれナイフを取り出した。

「刃物を抜いたということは、覚悟はできてるんでしょうね?」

 女性は淡々と言い放つと、パキパキと指を鳴らす。
 余程その態度が気に食わなかったのか、チンピラの一人がナイフ片手に襲い掛かった。

 いくら相手が素人とはいえ、至近距離での突きは避け難い。
 はずなのだが、女性は横合いからナイフを持つ手を殴りつけて方向を変えた。
 大きく逸れたチンピラの身体に、渾身の肘打ちを叩き込む。

「ぐえっ!」

 潰れたヒキガエルのような声をあげ、チンピラは地に伏す。
 その様子を見て、コヨーテに向かってきたリーダー格の男は一瞬怯んでしまった。
 当然、コヨーテはその隙を逃さない。

 男のナイフを持つ右手首を掴むと、それを思い切り引っ張った。
 バランスを崩した男は片手を掴まれて、ロクにガードできないまま顔面に拳を叩き込まれる。
 引っ張られた勢いが拳の威力を手助けし、男は一撃で昏倒してしまった。

「んがっ!」

 瞬く間に、二人のチンピラは昏倒してしまった。
 それも一撃で、である。
 残ったチンピラはもはや戦意を喪失していた。

「おい」

「ひぃっ!?」

「そう怯えなくていい。
 二度とオレたちの前に姿を現さないというのなら、このまま見逃してやる。
 ……でなければ」

 そこで言葉を切り、コヨーテは剣の柄に手をかけた。
 ガチガチに強張った顔を真っ青にして、チンピラは昏倒した仲間を引きずって逃げて行った。
 それとほぼ同時に、野次馬から歓声が上がった。

「すっげーよあんたら!」

「やるねぇ、兄ちゃん!」

「姉ちゃんも格好良かったぜー!」

 図らずも良い見世物になってしまった。
 騒ぎがこれ以上拡大するのはコヨーテの望むところではない。

 傍で苦笑いしている女性も、少々困惑気味である。
 仕方なしに、コヨーテはこの場から逃げることにした。

「バリー、宿で落ち合おう!」

 言うや、コヨーテは女性の手を取って、人をかき分けて走り出した。
 背後でバリーが「了解」と言った気がする。
 するすると人の間を抜けて、見知った路地に入り込む。

 この辺りのリューンの路地は微妙に入り組んでいる。
 ここへ逃げ込めば、追ってくる者もいないだろう。
 張本人がいなくなれば、騒ぎが大きくなることもないはずだ。

「ここまで来ればいいだろう。大丈夫か?」

「ええ、平気よ」

 女性はキョロキョロと辺りを見回していた。
 そして人が居ない事を確認した後、頭から被っていたフードを脱いだ。

「あ……!」

 コヨーテには珍しく、驚いた表情を見せる。
 それは彼女の透き通る碧色の瞳にではなく、長く艶やかな金色の髪にでもなく、特徴的な尖った耳にだった。

 長身痩躯、整った顔立ち、尖った耳が示すのは、彼女がエルフということだ。
 面食らったコヨーテの様子を満足げに眺めてから、女性は左手を差し出した。

「私はキルヴィのミリア、あなたは?」

「……コヨーテ」

 面食らいつつも、コヨーテも左手を差し出す。
 それに対して微笑で返し、ミリアは握手を交わした。



【あとがき】
PCその5、ミリアの登場です。
ちょっとやんちゃなエルフのお嬢さんです。
実はプロローグは全員分同じくらいの長さで書こうと決めていまして、加入まで纏め切れませんでした。
冒頭の散歩シーンが長すぎましたねー……実力不足を感じます。


以下、設定時の覚書。
・キルヴィの森のエルフ。左利き。
・(女性にしては)背が高く、エルフならではの整った顔立ちである。
・意外と物知りであり、鍛えられたしなやかな肉体は、まさに才色兼備と言うに相応しい。
・ちなみに巨乳さん。
・実はドワーフ顔負けの酒豪。
・隠れショタコンであり、コヨーテはストライクゾーンギリギリ。
・精霊術師の才能があるかもしれない。

○設定上の持ち物
・ショートソード×2
・薬草袋

◆(♀・若者) 英明型
(画像は自作です)
ミリア

秀麗     田舎育ち   貧乏
厚き信仰   秩序派    進取派
神経質    好奇心旺盛  過激
勤勉     派手

頼れるお姉さん系。
キルヴィの森といっても歌の一族とは違う場所で育ってます。
ちなみにコヨーテより身長高いです。
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周摩

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