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『ゴブリンの洞窟』 

 『月歌を紡ぐ者たち』は、依頼から帰ってきた翌日に親父から貼り紙を手渡された。
 内容はゴブリンの討伐で、依頼書には巣穴である洞窟の場所も書かれている。
 親父曰く「腕に自信があるんならこの依頼をやってみるか?」だそうだ。

 『月歌を紡ぐ者たち』の面々は二つ返事で承諾した。
 初めての依頼がこの上ない形で成功し、各々のやる気は急上昇していたのだ。

 実質的には、前回の依頼で狼との戦闘を経験したわけであり、彼らにとっては二度目の戦闘になる。
 親父はそこを考慮した上で、駆け出しでも重荷にならないような依頼を取っておいたのだ。

 『大いなる日輪亭』から歩いて三時間程の静かな森の中に、例の洞窟はあった。
 その洞窟の入り口には見張りと思しきゴブリンが立っている。
 洞窟から少し離れた茂みの中に、『月歌を紡ぐ者たち』はいた。

「あの見張りをどうするか、だな」

 コヨーテは拾った木の枝で地面に、洞窟と見張りの位置を表す図を描く。

「あいつ、結構退屈そうだね。さっきから落ち着かない」

 見張りの様子を見ていたレンツォが言う。
 それはつまり、油断している事を示す。

「こちらの方が人数が多いですし、全員で掛かれば大丈夫じゃないですか?」

「やれやれ、これだから戦い慣れしていないお嬢様は……」

「むっ、どういう意味ですか!?」

 レンツォが呆れた顔で頭を振り、それに対してルナはむっとする。

「お前ら、声を潜めろ。気づかれたら元も子もないんだからな」

「だって、レンツォが……!」

 バリーが諭すも、ルナは不満のようだった。
 仕方なく、コヨーテが説明を始める。

「いいか、ルナ。あの見張りの役割は外敵が来た事を仲間に伝える事なんだ。
 どんなに素早く倒しても、あいつは一声上げれば仲間に異変は知らせる事ができる。
 だからこの場で奴を上手く処理するには、声を上げさせない事が大前提なんだ」

「な、なるほど……
 こちらの存在を知らせず、相手を無力化するわけですね」

 多人数を相手に少人数で戦う場合、有効な手段の一つが『奇襲』である。
 洞窟に密かに潜入し、油断している少数のゴブリンを叩き、戦力を削ごうという作戦だ。

「そういう事だ。どうするか、最良の手段を皆で考えてくれ」

「僕ならこうするね」

 レンツォが枝を広い、図にがりがりと線を書き込む。
 『現在地』から『見張り』まで、大きく遠回りした線だった。

「僕が忍び寄って仕留める。
 なあに、声を出させるまでもない。一撃で倒してやるさ」

 コヨーテはその線に×印で上書きした。

「却下だ。洞窟周辺の茂みが多いとしても、見張りが洞窟に近すぎる。
 茂みを飛び出した瞬間に見つかり、最悪そのまま洞窟に逃げられてしまう」

「じゃ、こういうのは?」

 チコが『現在地』に○印をつける。

「ここで見張りの興味を引いて、向こうをおびき寄せるの」

「それも駄目だ。不確定要素が多すぎる」

 すぐにバリーが却下する。

「こちらに興味を引かせたとして、ゴブリンがこちらに来るとも限らない。
 下手すれば警戒させてしまう恐れだってある。
 わざわざこちらが不利になるような行動はやめた方がいいだろう」

「……となれば、残りは遠距離からの攻撃ね」

 ミリアは『現在地』から『見張り』までまっすぐに線を書き込む。

「あたしの出番!?」

 その言葉に、チコが弓を握った。

「遠距離攻撃には賛成だが……保留だ」

 コヨーテは線の隣に△印を書き込んだ。

「おチビちゃんの腕が不安だってか」

「チビじゃないもん!」

 レンツォがからかい、チコが反論する。

「いや、チコの腕を信じてないわけじゃない。
 だが、相手を一撃で無力化できないと意味がないんだ。
 つまり狙うは、頭、首、心臓……どれも狙う部位が小さい」

「声を出されればおしまいだからな。
 当然即死が要求される、というわけだ……」

 コヨーテの言葉に、バリーも頷く。
 バリーは【魔法の矢】という百発百中の攻撃魔法を扱えるが、それでも小さい部位を狙うのは難しいのだろう。

「……手詰まりじゃないですか?」

「いや、もうひとつある……」

 バリーは図の全てを○で囲んだ。

「俺が【眠りの雲】で相手を眠らせる方法だ」

「そっか、眠らせちゃえば声は出せないし、こちらにも気づけない!」

「この方法が一番危険が少ないか……他に案はないか?」 

 誰しもが首を横に振り、異論はないようだ。
 コヨーテはよし、と呟いて図を掻き消した。

「この作戦で行こう。
 あの見張りを処理したらすぐに洞窟内に潜入する。
 皆、準備を頼む」

 全員、余計な荷物をその場に置き、必要最低限の装備にする。

「……にしてもバリー、あんた最初からこの案を考えてたんだろ?
 さっきの話し合いって必要だったか?」

 レンツォは得物の状態を確認しつつ聞く。
 それに対して、バリーも荷物を降ろしつつ答えた。

「少なくとも、無駄じゃないさ。
 このメンバーがどれだけの作戦を立てられるか、それが見たかった。

 それと、こういう場は少しでも多く設けたほうがいい。
 一人の判断で勝手に決定すると、思わぬ穴が見つかる事がある。
 作戦一つにしたって、全員で検討する事も大切なんだよ」

「そんなもんかねぇ」

 冒険者にとって重要なのは、個々の能力よりもチームワークだ。
 『月歌を紡ぐ者たち』はつい最近結成したばかりであり、まだパーティ内でのコミュニケーションは不十分だといえる。
 こうした作戦会議は、コミュニケーションを取るために重要なのだ。

 一人が考えた作戦を、全員で検討する事によって気づけない欠点を発見する。
 そうする事で危険を排除し、安全性を高める事ができる。
 たとえ却下されたとしても、それを鍵に新しい考えが浮かぶ事もある。
 もしくは、個人の考え方も知る事ができる。

 バリーは今回の結果に多少の不満はあった。
 パーティを組んで日が浅いとはいえ、全員が全員のできる事を把握していなかったからだ。

 だが、それ以上にコヨーテが話し合いの場を当然のように設けた事が、何よりも感心した。
 元々コヨーテがリーダーになったのは、バリーが押し付けたようなものである。
 それでも、コヨーテはリーダーとしてよくやっていると、バリーは思う。

「それじゃ、行くぜ」

 バリーは精神を集中し、呪文を紡ぐ。

「《眠りをもたらす白雲よ、抱いて沈め微睡(まどろ)みの底に》……《眠れ》!」

 不意に、白い霧のようなもやがゴブリンを包み込んだ。
 異変に気づいたゴブリンは急いで洞窟に戻ろうとするが、足が動かない。
 気づいてからはもう遅い。
 ゴブリンはゆっくりと地に崩れ落ち、そのまま眠りこけてしまった。

「流石だな、バリー」

「ふん、このくらいチョロいもんさ」

 バリーは得意げに微笑んだ。

「ここでは上手くいったが、中ではどうなるか分からない。
 逆に奇襲される可能性もある……

 ゴブリンは狼と違って武器を使う。
 ロードがいるとは思えないが、絶対に気を抜くな」

 コヨーテが全員に忠告する。

 ゴブリンは下級妖魔ではあるが、油断は禁物である。
 武器を持つという事は、自然と間合いが広くなってしまう。
 その上、相手は集団で襲いかかってくるに違いない。
 数の暴力とは、一人の豪傑を凌駕する事もある。

 加えて、集団が出来上がるという事は指導者の存在も考えなければならない。
 ゴブリンの中でも驚異的な膂力を誇るホブゴブリン、魔法を操る知恵を持つゴブリンシャーマン。
 その他、今回の依頼では考えにくいがゴブリンロードが指導者として挙げられる。
 彼らは皆突出した力を用いて集団を束ねるもので、厄介な存在である。

「油断した者から死んでいくのが戦いだ。
 そしてその末路は……こうだ」

 コヨーテは横たわっている見張りのゴブリンの心臓目掛けて、一気に剣を突き立てた。
 血飛沫が舞い、ゴブリンは発声する間もなく絶命した。
 凄惨な光景に、ルナは思わず目を背けた。

「……全員、無事に帰るぞ!」

 全員が、力強く頷いた。
 コヨーテの戦いへの決意と、仲間を気遣う心情を感じ取ったのだ。
 
「今は時間が惜しい。死体の処理は後回しにしよう」

 剣の血糊を拭い、コヨーテは洞窟の入り口を見つめた。



「……何の音なの、これは」

 ミリアが苦い顔をして呟く。
 洞窟内は、物凄い騒音に満ちていた。
 騒音は狭い洞窟内に反響し、数倍の音となっているだろう。

 これでは物音からの調査に支障が出る。
 一行は何とか音のする方へ向かう。
 するとそこには、人型の魔物・ゴブリンの亜種であるホブゴブリンが眠っていた。

 前述の通り、ホブゴブリンは驚異的な膂力を誇る。
 その反面、臆病な性格を持つものが多く、冒険者の間では笑い話にされる事もある。
 知能が足りず、間抜けな行動をする事が多いのだ。

「こいつのおかげでオレたちの進入が気づかれていないのかも、な……」

 コヨーテが憮然とした表情を作る。

 騒音の原因はホブゴブリンのいびきだった。
 この騒音で誰も起こしにこないという事は、この集団内で地位の高いゴブリンなのだろうか。
 もしくは用心棒のような存在なのだろうか。

「さて、眠っているのなら刺激するのは良くない。行こう」

「ちょっとコヨーテ、こいつはどうするの?」

 先を急ごうとするコヨーテに、チコが訊ねる。

「……良く考えてみろ。ゴブリンの連中、突然このいびきが止んだらどう思う?
 真っ先にここに来て何が起こったのかを確かめるだろう。
 潜入が露見する可能性もある上に、何か異変が起こったという事は勘付かれる。

 だからコイツは後回しにして、他の少数のゴブリンを先に叩くんだよ」

 バリーが代わりに説明すると、チコとルナはなるほど、と頷く。
 皆が納得したところで、一行は来た道を戻っていった。

 分かれ道まで戻り、レンツォに調査を任せる。
 悪条件の中でも、的確に音を聞き分け、妖魔の気配を探る。
 ややあって、レンツォは一行の元に戻り、報告する。

「目視確認したわけじゃないから正確じゃないが、妖魔は恐らく七~八体くらいだ」

 レンツォの報告を受けた一行に緊張が走る。

 二度目とはいえ、前回の戦闘とは違う緊張感だ。
 前回は向こうから襲ってきたが、今回はこちらから襲うのだ。
 下手を打てば、狼と同じ目に遭わないとも限らない。

「どうする? 目視確認もしておこうか?」

「いや、危険だ。作戦は突入してから伝えるよ」

 レンツォとコヨーテのやり取りが終わると、全員が武器を構える。
 コヨーテを戦闘に一行は覚悟を決め、一斉にその部屋へ走り出した。



「やはり居たか……!」

 ゴブリンの集団の後方で、ゴブリンシャーマンがこちらを指差して叫んでいる。
 レンツォの調査はかなり正確で、総計七体の妖魔がその広場には居た。

「ルナ・バリーは後方! チコはその援護!
 レンツォは遊撃!ミリアは左! オレは右方で戦う!!」

 妖魔の位置を瞬時に把握し、コヨーテが指示を飛ばす。
 
 戦いは『月歌を紡ぐ者たち』側が有利だった。

 完全に警戒を解いていた奴隷コボルトは慌てふためき、逃げていく者もいた。
 コヨーテらは逃げていく者は追わず、まずは数を減らす事に集中したのだ。

 戦いにおいて窮地に立たされた者の反撃は凄まじいものがある。
 それ故に、コヨーテはあえて逃げ道の通路を開け放っていたのだ。
 こうして逃げ道を用意してやる事で、戦う意思の弱いものは逃げていく。

 味方の頭数が減れば減るほど、残りの者は浮き足立つ。
 加えて、右方ではコヨーテが長剣を振るい、一撃でゴブリンを袈裟に切り裂いた。
 血飛沫が弾け、その様子を見ていたゴブリンの動きが恐怖で鈍る。

 左方ではなるべく敵をコヨーテに集中させないようにミリアとレンツォが戦う。
 レンツォは右方の戦況を見て、一人でも十分だと判断したのだ。
 こちらはコヨーテに大人数を向かわせなければいい、半ば牽制の戦いである。

 レンツォが巧みなフェイントを駆使して、コボルトを翻弄する。 
 その隙をついて、後方からチコの放った矢がコボルトの右肩を刺し貫く。
 武器を取り落としたコボルトの首を、ミリアの剣が切り裂いた。
 
「《眠れ》!」

 剣戟の最中、バリーの口から【眠りの雲】の呪文が紡がれる。
 魔術行使のために精神を集中させていたシャーマンは半瞬遅れて気付くが、遅かった。
 抵抗に失敗し、ふらついたところでチコの矢が腹部に突き刺さる。

 【眠りの雲】の範囲から逃れていたコヨーテは、大きくふらつくコボルトの首を叩き落す。
 鮮血を噴出すコボルトが倒れるよりも早く、コヨーテはシャーマンの右腕を切り裂いた。
 コヨーテは追撃せず、そのまま横切って左方の援護に回る。
 
 傷を負わされたからか、無視された事が腹立たしかったのか、シャーマンは激昂し、痛みで放り出した杖を拾おうとする。
 腰を屈めた瞬間、シャーマンの喉から鈍く光る刃が突き出ていた。
 いつの間にか間合いを詰めていたレンツォのナイフである。

 残ったコボルトは勝ち目なしと感じたのか、逃げ出した。
 結局、戦力の大半を失ったゴブリンたちは、コヨーテらの猛攻を止められなかったのだ。
 その場にいた全てのゴブリンを倒したとき、妖魔は洞窟から全て去っていた。

「おい、向こうに何か箱があったぞ」

 敵の攻撃をほぼ全て回避し、ほとんど無傷で終えたレンツォは(それでも周囲に注意しつつ)単独で奥へ進んでいた。
 通路の奥には割と大き目の箱がぽつん、と置かれていた。
 レンツォはすぐに懐から七つ道具を取り出し、箱を弄りだした。

「あらら、さすがはゴブリンの品定め……といったところか。
 こんな石ころに価値なんて無いだろうに…」

 レンツォは発見した箱の中身を鑑定し、価値のありそうなものを探した。
 二重の罠を警戒し、石ころを慎重に箱の外へと出していく。
 すると、小さいボロボロの袋を見つけた。
 持ち上げてみると、ジャラリと金属音がする。

「やったね、銀貨袋だ」

 レンツォは意気揚々と袋の中身を数えだした。
 宝箱の中には幾つかこういう袋があり、全ての中身を合計すると二〇〇枚ほどの銀貨を手に入れた。

「バリー、これはあんたのだ」

 そう言って、レンツォはバリーに何かを投げて渡す。

「……これは!」

「恐らくは【理知の剣】だろう。ま、レプリカじゃなけりゃね」

「この魔力……レプリカじゃないだろう、とんだ収穫だな」

 バリーは剣をまじまじと眺め、感心するように言う。
 【理知の剣】とは魔術師にとって相当の貴重品である【賢者の杖】と同等の力を持つ魔具である。
 所有者の集中力を高め、魔術の行使をスムーズに行える一品だ。
 大昔に使われていたもののようだが、充分実戦には耐えうるようだ。

 結局、レンツォの宝探しは銀貨二〇〇枚と【理知の剣】の発見でお開きとなった。
 とはいえ、【理知の剣】だけで今回の冒険は大黒字となるほどの成果なのだが。

 『月歌を紡ぐ者たち』は大満足の結果で依頼を達成する事が出来た。
 依頼を終えた充実感と共に、『月歌を紡ぐ者たち』は宿へと凱旋する。



【あとがき】
今回のシナリオはGroupAskさんの「ゴブリンの洞窟」です。
もはや説明不要の公式シナリオであり、一番多くプレイされた冒険シナリオだろうと思います。
エディターで覗いてみると非常によく造りこまれており、シナリオ作成のお手本にも使われます。

【賢者の杖】は『深緑都市ロスウェル』で【理知の剣】と交換しました。
作中では、直接【理知の剣】を入手したように描写しています。

個人的には最初の見張りは「眠り」で封じるのが好きです。
拙作『深緑都市ロスウェル』の最初の依頼ではそれを意識して作ってたりします。
……洞窟と家屋じゃ違いがあるので仕方ないのですが。

ちなみに【眠りの雲】の詠唱はY2つさんの「リプレイ講座資料 魔術師の呪文詠唱」から頂きました。
あまりにも素敵な詠唱だったので、他にもいろいろと使わせて頂く予定です。
この詠唱の著作権はY2つさんにあります。
元記事→『リプレイ講座資料 魔術師の呪文詠唱

☆今回の功労者☆
バリー。今回も【眠りの雲】が序盤で手札に来て助かりました。

報酬:
600sp

戦利品:
+200sp
【理知の剣】→バリー

LEVEL UP
ルナ、チコ、レンツォ、ミリア→2

銀貨袋の中身→3200sp


≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『ゴブリンの洞窟』(GroupAsk様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。
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周摩

Author:周摩
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