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『ようこそ、別荘へ!!』 

「……このキッチン、最近使われた跡があるね」

 レンツォは注意深く観察し、調査を進める。

「あれ、食堂は使われてなかったよね?
 という事はここで料理を作って、どこか他の場所で食べたのかな」

「んなわけないだろ。
 ゴブリン共に食物の加工りょうりなんてできるわけがない。
 つまり敵はゴブリンだけじゃない、もっと知能が高い生物がいるって事さ」

 チコの間の抜けた解釈に呆れつつ、レンツォは推理した。
 とはいえ、ロードやシャーマン等の一般的な統率者の可能性は低いと思われる。
 何故なら、彼らにも料理をするという習慣も知識もないからだ。

「……やっぱりな。何かあると思ったんだよ」

 部屋の隅でゴソゴソとやっていたレンツォは何かを発見したようだ。
 棚の置かれた床、そこに不自然な亀裂があるのが見て取れる。

「地下室のようだな……今、動かす」

 言うや、コヨーテは意外に重い棚の移動に取り掛かった。

 コヨーテら『月歌を紡ぐ者たち』はファシドール伯爵の依頼で、とある邸宅に来ていた。
 依頼内容は伯爵の私物たる別荘に棲み付いた妖魔の掃討である。
 宿への依頼の斡旋料が後払いという事で契約してしまっているので、失敗すれば当然斡旋料は貰えない。
 仕方なく、宿の親父は今最も信頼できる『月歌を紡ぐ者たち』に任せる事にした。

 ファシドール伯爵は倹約家として有名である。
 斡旋料が後払いとなったのも、彼の性格が現れているようだった。
 本来なら後払いなど常識外ではあるが、伯爵の依頼という事もあって無碍に断れなかったのだ。

 報酬の額は、一般的な妖魔退治の依頼としては水準をやや下回っている。
 レンツォは何とか報酬の額を上げてもらおうと、依頼を持ち込んだ伯爵の執事に交渉を試みた。
 が、執事の一存ではどうにもならない、という返答を受けるに終わった。

 しかし伯爵の信頼を勝ち得る事ができるなら、どうにか許容範囲である。
 レンツォは報酬の低さより、別荘内で見つけたものは持ち帰ってはならない、と釘を刺された事を特に残念がった。

「よっ、と」

 ややあって、コヨーテが動かした棚のあった場所に、地下室へと続く隠し階段が顔を出した。
 レンツォが慎重に調査し、階段を下りていく。
 進むたびに足元の埃が舞い上がり、息苦しい事この上ない。

 階段を下りきったそこは、どうやらワインセラーのようだった。
 とはいえ長年放置されてきたのだろう、堆積した埃が尋常ではない。

「……ここには妖魔は居ないようだな」

 踏めば舞い上がるほどの埃のカーペットには足跡一つない。
 この様子では、どうやらゴブリンたちはここへは立ち入っていないようだ。

「間取り図によると、二階に大きな居間があるみたいですよ。
 おそらく、残りはそちらにいるんでしょう」

 ルナは事前に受け取っていた間取り図を見ている。
 既に一階は全ての部屋を調査していたので、残るは二階のみとなる。

「なるほど。偶然か必然かは置いておくとしても、『統率者』とやらは油断ならねぇ。
 外敵が進入しても、一階のゴブリンがある程度は侵入者を感知できるように防衛ラインを張ってやがる」

「願わくば偶然であってほしいわね……」

 神妙な面持ちでミリアが呟く。
 知能のある相手というのは、存外に対処が難しい。

 コヨーテらは今まで知恵を持たない獣や妖魔しか相手にした事がない。
 相手の力量が分からない以上、一瞬の油断も許されない。
 その事が、一層彼らの気を引き締めた。



「……ここだ」

 二階の扉を調査していたレンツォが呟く。
 どうやら中の気配を察知したようだ。

「どうやら警戒をしている雰囲気じゃないよ。
 恐らく、一階の状況は伝わっていないんだろうね」

「そいつァ惜しかった。
 奇襲を掛けられたらどんなに楽だったか」

 バリーは悔しそうに、ずっと間取り図と睨めっこしている。
 その様子を見て、チコが疑問を口にした。

「ねーねー。今まで奇襲って何回もやってきたけど、どうして今回はやらないの?」

「それはな……ここが現在地だ」

 バリーは見取り図の一部を指差す。

「そして、ここが扉の向こう。大広間になってるだろ?」

 見取り図でも分かる通り、二階の大部分が一つの大部屋となっている。

「こういった視界の利く大部屋では奇襲は成功しにくいんだ。
 部屋の端に敵が居たら、こちらの行動はバレバレになる。

 おまけに敵が何体も居る場合、せいぜい倒せて一体か二体だ。
 下手に飛び出せば、大勢の敵に囲まれる事だってある」

「恐らくは計算済みなんだろうな。
 一階のゴブリンといい、この部屋を選んだ理由といい……」

 それはつまり、戦いの知恵を持っている事を意味する。
 今回の報酬では割に合わないわね、とミリアはため息をついた。

「……どうにも嫌な予感がする」

「コヨーテ?」

「皆、気をつけろよ。決して油断するな」

 いつになくコヨーテの表情は険しい。
 彼の動物的直感は、意外なほど良く当たる。
 それを承知しているから、全員は気を引き締めた。

「開けるぞ」

 ノブを回すと、軋むような音を立てながら扉が開く。

「……誰だ!?」

 部屋の中央に三つの人影があり、その真ん中に立つ少年が、そう言った。
 左右にいわゆる『狼男』を連想させる獣人を携えた、銀の髪を揺らす少年。
 彼も異形たる者であり、額の三つ目の紅の瞳を見開いていた。

「魔族か……!」

 コヨーテは苦々しく呟いた。
 彼らは邪なる者である、魔族の一種だ。
 コヨーテの直感とは、実は吸血鬼という『異端』であるからこその親近感なのだが、コヨーテはまだ気づいていない。

「魔族ですって、どうしてこんな所に……!?」

 禍々しいその姿に、ルナは驚愕を隠せなかった。
 俗に、魔族は神に敵対する怨敵である。
 神に仕えるルナにとって、まさしく倒すべき敵なのだ。

「どうしてだって? ここは僕たちの家なんだ。居て何が悪い?」

 三つの瞳を持つ魔族の少年は答えた。
 動揺するルナを馬鹿にするような物言いだった。 

「ここはお前たちの家じゃない。ちゃんとした持ち主がいるんだ」

「持ち主? 持ち主だって? ふん、これは滑稽だ」

 少年はバリーの言葉を嘲笑う。

「君らは一階に居たゴブリンを見ただろう?
彼らは自分で洞窟を掘って、そこに住んでいたんだ。
 ならばその洞窟だって、彼らが持ち主のはずだ。

 だが彼らは自分たちが持ち主であるはずの洞窟を追われた……
 君ら人間の手によって、駆逐されたんだよ」

「………………」

「彼らは家畜を襲うから、雇われた冒険者に追い払われたのだそうだ。
 だけどね、彼らにしてみれば君らこそが侵略者だ。

人間というのはすぐ自分本位で考える……
どこまでも傲慢で愚かな生き物だね、人間というのは!」

「ッ……!」

 少年の言う事に誤りはない。
 誤りではないが、正解でもなかった。
 バリーはその事を十分理解していたからこそ、何も言い返せなかった。

 そもそも、どちらが正義だのという話になると埒が明かないものだ。
 今まで人類は様々な力によって多種族を圧倒してきたのだから。
 勝たなければ正義を語れないし、悪を覆す事もできない。

「何も言う事がないのなら、このまま退きなさい。
 私たちは平和に暮らしたいだけなのです」

「お前たちが何もしなければ、危害を加える事はない」

 両脇に侍る獣人がそれぞれ言う。
 口ではそう言っているが、油断なく腰の得物に手を伸ばしている。
 人間がこのまま大人しく引き下がる事はないと、分かっているのだろう。

「お前たちの言い分は分かった」

 コヨーテが口を開く。
 その双眸は魔族の少年を見据えていた。

「もしかしたら、お前たちの方が正しいのかもしれない。
 人間は身勝手で、それでいて自らの性質に気付かないものだからな。
 お前たち魔族の方が自分と向き合えているのかもしれない。

 ……だが、そこまでなんだ」

「……何?」

「その理論を、人間全体に浸透させる事ができるか?
 この世界にどれだけの人間がいるかは知らないが、その数は凄まじいものだ。
 そんな果てしないものに対して、お前のようなちっぽけな存在が干渉できると思うのか?」

「何が言いたい?」

 コヨーテは熱しすぎた感情をどうにか制御しようとした。
 一呼吸置いて、頭の中で言葉をまとめる。

「オレたちを言い負かしても、次に来る奴らがどう出るかは分からない。
 だったら、最早言葉は意味を成さない。
 殺すか、殺されるかの二択しか残らない……」

「だとしても、僕は退くつもりはないね」

 淡々と、少年は言い放つ。
 コヨーテは諦観を帯びた表情を浮かべ、すぐに表情を消した。

「それなら、オレが『罪』を背負おう……」

 そう呟くと、抜き身の長剣を構える。

「……それが、お前の答えか」

 少年も、剣を構えて呟いた。



「はあッ!!」

 ミリアの一撃が、獣人の剣を弾く。

「うっ……!?」

 そこへチコの放った矢が、縫うように飛来する。
 矢は狙いを寸分違わず、獣人の左の胸へと突き刺さった。
 眼を見開いたまま、獣人はその場に崩れ落ちた。

「サルフッ!!」

「おのれ、貴様らァ!!」

 激昂した獣人の片割れが、チコへ向かって突進する。
 間に立ちふさがるコヨーテに、手にした斧を思い切り振り下ろす。

 ギィィィィィン! と激しい金属音が鳴り響く。
 振り下ろした斧はコヨーテを両断せず、長剣を盾に阻まれていた。
 その事実に獣人は驚く。
 通常なら長剣ごと相手の身体が真っ二つになってもおかしくはないからだ。

「……ナメるな」

 コヨーテが呟くと、一気に押し返す。
 渾身の力を込めていたはずの斧が、いとも容易く弾き返された。
 獣人たる彼が、ただの人間とタカを括っていたコヨーテに力で負けたのだ。

 真に評価すべきは、コヨーテの持つその長剣だ。
 コヨーテの長剣は、若かりし頃の宿の親父が冒険者をやっていた頃の相棒である。
 相当な年月が経っているにも関わらず、驚くべき頑丈さだ。

 その上、使い勝手は獣人の使う斧よりも格段に良い。
 すぐに剣を操り、片手で突きを放つ。
 咄嗟に下げられた腕のガードを、切っ先が貫いた。

「グ、ゥゥウオオォォォ!!!」

 痛みと腹立たしさから、獣人は咆哮した。
 再び斧を握り締め、コヨーテへと一歩を踏み出した。

「……《貫き徹す光の鏃、輝きを纏い疾く放たれよ》、《穿て》!」

 【理知の剣】で意識を集中していたバリーが【魔法の矢】の呪文を紡ぐ。
 飛来した一筋の光は、獣人の喉を正確に貫いていた。
 獣人は口をパクパクさせ、何かを呟こうとして倒れた。

「ウルフ……!!」

 魔族の少年は、悲惨な状況に絞り出すような声を上げた。
 彼はといえば、レンツォの巧みな体捌きにより攻めきる事ができない。

「やッ!」

 加勢に入ったミリアの一撃で、少年の剣が弾かれた。
 まだ力の弱い少年は、その衝撃に耐えられず剣を手放してしまった。

「……ぐっ!」

 腰に差した護身用の短刀に手を伸ばしたところで、コヨーテの長剣が少年の首筋に触れた。
 コヨーテの力強い双眸は、少年の身動きの自由を奪う。

「……言い残す事は?」

 少年は額の第三の瞳をかっと見開いてコヨーテを睨み返した。
 ふと、何かに気づいたのか、少年は口元を歪ませる。
 それは狂人が浮かべるような、凄絶な笑みだった。

「フ、フフ……君は……何だ、同じじゃないか!
 僕たちと、君は同じだ……似たもの同士ってわけだ!」

 その言葉が意味するところを、バリーらは分からなかった。
 コヨーテだけは表情を変えずに少年を見ていた。

「フン。君は言ったね、ちっぽけな存在は人間全体には干渉できないと!
 なんて事はない、!!」

 その言葉にもコヨーテは表情を崩さない。
 コヨーテの態度が気に食わないのか、少年は更に声を荒げる。

「自分で自分の限界を知ったという事か?
 大多数に紛れてしまえば駆逐されないから、こそこそ隠れているというわけか!?」

 少年はコヨーテの正体を見抜いた。
 そして、さもつまらないといった感じに首を振る。

「……ああ悔しいな。
 こんな奴に僕たちは殺されるのか。
 ハン、せいぜい足掻けよ。僕らみたいになりたくなければね」

 そう言って、少年は三つの瞳を全て閉じた。
 コヨーテは表情を消したまま、剣を横に薙いだ。



「……こんなものかな」

 コヨーテは額の汗をぬぐいながら、スコップを地面に突き立てる。
 別荘から少し離れた丘の上に、三つの墓標が立てられた。

 コヨーテの希望により、彼らを埋葬しているのだ。
 元々、あまり自己を主張しないコヨーテの希望という事もあり、全員が了承した。
 ルナやミリアは手伝いを申し出たが、『オレの我侭だから』と断られた。

「でも、いいの? 勝手にこーんな事しちゃって」

 黙々と作業を続けていたコヨーテを、チコが心配そうに見つめていた。
 それに答えるように、コヨーテは口元に微笑を浮かべてチコの頭を撫でる。

「構わないさ。ここは別荘の敷地外だから……
それに、できるだけこの近くに埋めてやりたかった」

 そう言って、コヨーテは眼を細めた。

 魔族の少年は、自分と同じく世界に疎まれる存在だ。
 それに対して少年は自己を曲げず、頑なに自分の主張を貫こうとしていた。

 コヨーテにとって、それは少し羨ましいものでもある。
 自分は限界を知ってしまったから、諦めかけていたのだ。

 最後には互いの主張がぶつかり合い、結果として彼らが果てた。
 それでも、気持ちのいい生き方だったのかもしれない。

(お前たちの事は忘れない。
 世界に抗い、最後まで誇りを保ったお前たちを……)

 コヨーテは、自身が運命から逃げているものと思っている。
 正体を隠して自分を騙し、人間のように振舞う自分が卑怯だとも感じている。
 自分と他人を騙し続ける事は苦痛だったが、そうしなければ生きてはいけない。
 結局のところ、自分のためにしか生きてはいない。

(明日は我が身と、肝に銘じよう)

 魔族の少年の最期の言葉を、脳内で反芻した。
 彼らの思いは、これからコヨーテの中で生き続けるだろう。
 それこそ、コヨーテが死ぬまで。

 どこから持ってきたのか、ルナが丁寧に作られた墓標に花を添えた。
 そして聖北の流儀で祈りを捧げる。
 不器用ながらも、コヨーテはそれを真似た。

「……帰ろうか」

 そう呟いて、コヨーテは別荘の方を見た。
 眼を閉じてふう、と息を吐くと、宿へ向けて歩き出した。



【あとがき】
今回はアインさんの「ようこそ、別荘へ!!」です。
初めの内はコメディータッチで描かれていますが、魔族と対峙したときはシリアスの世界です。
人間のエゴを題材とした、最後の選択がとても考えさせられるシナリオです。
未プレイの方には是非おすすめしたいシナリオです。

少しだけ気になった点が、ベッドの下にそのまま財宝があった事くらいですかね。
ちなみに途中で入手できる【高級葡萄酒】は参謀役に持たせておくと、最後で回収されずに残ります。

あ、そういえば今回のシナリオをプレイする前に『交易都市リューン』でレンツォが【盗賊の手】を購入しました。
今回のシナリオで使うと思ってましたが、使いませんでしたねぇ……(笑)


☆今回の功労者☆
【渾身の一撃】を二度も命中させたコヨーテ。適正バッチリなのでゴリゴリ削れます。

報酬:
500sp(前金100sp)

戦利品:
【高級葡萄酒】
【財宝】→売却→+100sp

購入:
【盗賊の手】-1400sp→レンツォ
(交易都市リューン)

LEVEL UP
コヨーテ→2
バリー→3

銀貨袋の中身→3200sp

≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『ようこそ、別荘へ!!』(アイン様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。
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周摩

Author:周摩
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