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『美女が野獣』 

 どうしてこうなってしまったのか。
 濡れた髪をかき上げ、くらくらする頭を整理した。

 今いるここは、洞窟だ。
 山賊退治の依頼を受けて、ここまで追い詰めたはずだ。
 隠し通路を見つけ、この泉まで追いかけたまでは良かった。

 山賊の頭領の、恰幅の良い女が妙な形の宝玉を持っていた。
 それが光ったかと思うと、冒険者たちの姿が獣のそれに変化していったのだ。

 今でも明確に思い出せる。
 全身の皮膚がざわざわとうねり、獣毛が生える感覚。

 気を失った後は、何かに追われていた気がする。
 あまり憶えていないが、恐怖の感情ははっきりと憶えている。
 ぞわり、と背筋に冷たいものを感じて、周囲に何物かの気配がないか再確認する。

(あれ、そういえばどうして僕は人間に戻ってんだ?)

 今は見慣れた、人間の身体に戻っている。
 はっきりした事は分からないが、時間差で戻るものなのだろうか。
 もしかしたら他の仲間も、人間に戻っているのかもしれない。

「どちらにせよ、みんなを探さないとね……」

 よし、と意を決し、レンツォは立ち上がった。
 最初に戻ったのがレンツォであったのは僥倖だったと言える。
 自分の装備が欠けていない事を確認し、それから周囲の調査を始めた。

「……あまり嬉しくない情報だなぁ」

 泉の中心には台座があり、そこにはあの宝玉の事が書かれていた。
 どうやら、あの宝玉は『獣占の宝玉』という魔法の道具のようだ。

 要するに、人間を性格に合った獣の姿に変える魔法らしい。
 その魔法を解くには、泉の水を飲ませれば良いのだそうだ。

 時間差で戻るのではないという事実は、面倒な仕事が増えるという事だ。
 レンツォは自然に水を飲んだお陰で戻ったようだが、他の仲間はこうは行かないだろう。

 ちらりと記憶している限りでは、肉食獣が複数いた気がする。

「説得は通じないだろうな」

 ふぅ、とため息をついて、調査を再開する。

 泉の部屋にはこれ以上の収穫はなく、隣の部屋へと移る。
 居住していた跡があり、ゴブレットが見つかったので、中を霊水で満たした。
 そして山賊の食料だったのだろうパンや干し肉を手に入れた。

「………………」

 ふと、気配を感じて背後を振り返る。
 そこには警戒しつつもこちらを伺うクリーム色の体毛を持つ動物、ヒツジがいた。

「……誰なんだ?」

 訝しげに呟くが、今はどうでもいい事に気づき、すぐに捕らえようとする。
 驚いたヒツジはその場を飛びのくが、レンツォが放り投げた外套に捉えられた。
 上手い具合に首に引っかかった外套は、あまり力の強くないヒツジには逃げ出せなかった。

「よし、暴れるなよ」

 レンツォはすぐに、先ほどの霊水をヒツジに飲ませた。
 しばらく抵抗していたヒツジも次第に大人しくなり、その身体から鼓動音が聞こえてくる。
 そしてざわざわと身体が変化していき、チコの姿となった。

「……あれ?」

「気がついた?」

 仲間の無事を確認し、レンツォは安堵した。
 半信半疑だったが、どうやら霊水の力は本物のようだ。

「おはよー、レンツォ。
 おかしいなぁ、私何してたんだっけ?」

 どうやら記憶が曖昧らしい。
 レンツォはかいつまんで今の状況を説明する。
 その話を聞いたチコはぎょっ、として自分の身体を見回す。

「へぇー、そんな不思議な事になってたんだ……」

「まだ他の連中は獣のままだ。
 捕らえるのに何かいい手段があればな」

「そーだね……
 ここって盗賊の根城なんだし、何か役に立つものがあるかもよ?」

 レンツォはチコを伴って、まずは洞窟内の調査を優先した。
 至るところにランタンやつるはし、ロープやネズミ捕りといったものが落ちていた。
 そして、彼らの入ってきた洞窟の出入り口の手前に、何やら巨大な影を見つけた。

「ん? チコ、隠れて……!」

 気づかれないように、レンツォは洞窟の暗がりに隠れる。
 チコもそれに従い、逆側の壁へと隠れる。
 そーっと出入り口の方を覗くと、そこには見た事もない生物が鎮座していた。

「あれは、山賊の成れの果て……?」

 それは奇妙な生物だった。
 身体は四足獣だが、獅子、竜、山羊の三つの頭を持っている。
 そういえば薄っすらと、あの化け物に追われた記憶が残っている気がする。

「あれをどうにかしないと、外には出られないわけか」

 逆に考えれば好都合である。
 動物となった仲間が外に出てしまえば、それこそ取り返しがつかない。
 なんとしても、この洞窟の中で彼らを元に戻さなければならないのだ。

「……急ごうっ!」

 互いに頷き、踵を返した。



「それぇっ!!」

 タヌキがパンに興味を示している隙に、手元のロープを引っ張る。
 すると先端に作った輪が縮まり、タヌキの足を見事絡め取った。
 タヌキは小柄な身体で何とか逃げようともがいている。

 チコが水を飲ませようとゴブレットを傾けるが、あまりに暴れていたため全て地面に零れてしまった。
 仕方なくレンツォは逃げられないように用心しながら、抱きかかえて泉まで走る。
 そこでふと、どうやって水を飲ませようかと悩んだ。

「……悪いね、少し我慢してくれよっ」

 レンツォはそう言ってタヌキの身体を水の中に沈めた。
 命の危険を察知してタヌキが一層暴れだす。

「いって! こら、引っ掻くな!」

 だが、その抵抗も少しの間だけだった。
 水を飲んだのだろう、タヌキの身体から鼓動が聞こえてくる。

 小さいタヌキはゆっくりと人間の身体を取り戻した。
 赤い髪に無精髭を生やした中年の男、バリーだった。
 バリーはしばらく呆けたように辺りを見回し、やがてレンツォとチコの姿を見つけた。

「……大丈夫かい?」

「レンツォ……お前、俺を殺そうとしただろ!」

「え?」

「憶えてるんだよ! お前が俺の身体を水に沈めてるところをな!」

「待て、話を聞いてくれ! 見てくれよ、そこの台座ぁ!」

 必死にレンツォは泉の中央にある台座を指さした。
 それを読んだバリーは、それでも不機嫌そうにレンツォを睨む。

「それにしても、もう少し方法ってモンがあるだろうが。
 動物だからって水に沈めようとするな、元は人間なんだぞ」

「それは分かってんだけどね。
 あの時はあんたが暴れていたから方法を思いつかなかっただけだよ。

 そんな事よりさ、バリーがいれば心強いね。
 眠らせる事ができれば、水を飲ませるのも容易いだろうしさぁ」

 いかに動物といえど、精神を持っているのであれば【眠りの雲】が効く。
 向こうから奇襲さえされなければ、ほぼ確実に仲間を元に戻せる。

「さぁ、残りのみんなを助けなきゃね。
 何か良い案はないの、バリー?」

 バリーは現在の持ち物を確認すると、口に手を当ててしばらく考えた。
 そして「うん」と呟き、

「獣が相手でこの状況なら、落とし穴が良いだろうな」

 道中で拾ったつるはしを指した。
 その提案に従い、十字路から少し離れた通路に仕掛ける事にした。
 さっきまで罠として使用していたロープも、落とし穴と同時に作動するよう加工する。

「さて、隠れよう」

 落とし穴の上にそっと、酒に浸したパンを置く。
 こうしてしばらく待っていると、周囲を警戒していたレンツォが口を開いた。

「……来た」

 十字路の方から獣が近づいてくる。

 黄褐色の体毛に鮮やかな黒の横縞。
 体長は約二メートルはある、王者の風格を備えたトラだ。
 鋭い眼光をあちらこちらに向け、髭をぴくぴくと動かして警戒している。

 後一歩。その距離まで近づいたところで、トラは立ち止まる。
 ぎろり、と射抜くような眼光を暗がりへ向け、レンツォと目が合った。

 トラは雄雄しく吼え、レンツォを威嚇する。
 びりびりと洞窟内にトラの咆哮が響き渡る。
 だが、一向に飛び掛る気配はない。

「……コヨーテか?」

 レンツォはそう呟いた。
 確信はないが、何故だかそう思えた。
 ざり、とトラは後ずさりして距離を取ろうとしている。

「《穿て》!」

 バリーの口が流麗に呪文を呟き、【魔法の矢】をトラの足元に放つ。
 警戒していたトラは一足飛びにそれから壁際へ離れ、落とし穴へ落ちた。

 そこでタイミングよくレンツォがロープを引っ張る。
 するとトラの足をロープが絡め取り、僅かではあるが宙吊り状態となる。
 さすがに大型の肉食獣であるため重く、チコも加勢する。

「……《眠れ》」

 更にバリーは【眠りの雲】を唱える。
 穴の中でもがいていたトラは次第に大人しくなり、眠った。

 それを確認したチコがグレイルの霊水を、トラの口に流し込んだ。
 さっきのバリーと同じ現象が起き、しばらくして人間の身体に戻った。
 くすんだ銀髪に病的に白い肌、それらを一層目立たせる漆黒の外套。

「やっぱりコヨーテだ」

「ああ……」

 何者をも引き裂ける、鋭い牙や爪を持ちながら襲わない。
 それはコヨーテの、仲間を傷つけたくないという意思だったのだろうか。

「後はミリアとルナか……」

 ミリアはともかく、ルナが肉食獣になったとは思い難い。
 急がなければ、狩られるものになっているであろうルナが危険だ。
 レンツォは落とし穴を再びセットした。



 落とし穴の罠は大層効率が良かった。
 罠自体は同じ手段で、今度は餌を干し肉の炙りに変えてみる。

「いーい匂い……ねー、バリーおなかすいたー」

 洞窟内に肉の焼ける良い匂いが漂い、思わずチコは生唾を飲み込む。

「我慢しろ、ここにはロクに食料もねぇんだからよぉ。
 大体、ここの食料はちょっと危なそうだから間違っても口に入れるなよ」

「え? そうなの?
 でもこれ保存食だろ? 多少古くても大丈夫だと思うけどなぁ」

「いくら飢えてても山賊の食料に手を出すのはマズイと思うが」

「……お前ら、無駄話は後でしろよ。お出ましだぜ」

 バリーの視線の先には、オオカミが肉の焼ける匂いにまんまと釣られてやってきた。
 そのままコヨーテ同様落とし穴の罠に掛かる。
 流れ作業で【眠りの雲】で眠らされ、レンツォに霊水を飲まされた。
 ざわざわと獣毛が消え、長身のエルフへと変わる。

「っと、やっぱりミリアか。おーい、起きなさい」

「うう……ん、なんだかお肉が食べたいわ」

 ミリアは起きるなり開口一番にそう言って男衆を呆れさせた。
 チコはというと、

「分かる分かる。私も食べたいー!」

 妙なハイテンションでミリアの手をとって賛成していた。

「ともかく、一度泉へ戻ろう。
 今ので霊水もタネ切れだからな」

 まだ動きが鈍いミリアをコヨーテが支えると、泉の部屋を目指して移動を始める。
 その途中、十字路でコジカと遭遇した。

 コジカは驚き、すぐさま逃げ出そうとしたが、バリーの【眠りの雲】の方が早かった。
 眠ったコジカ抱いて泉の部屋まで連れて行くと、そこで霊水を飲ませる事に成功する。
 とはいえスマートには行かず、ばしゃばしゃと泉で暴れるコジカのお陰で全員がびしょ濡れとなってしまった。

「むむ? どうしてみんな濡れ濡れに?
 って、うわぁ! 私もずぶ濡れだぁ!?」

 ぎゃあぎゃあとわめくルナに、コヨーテが最初から説明する。

「コジカでも結構脚力あるんだな……本だけじゃ分からない事もあるもんだぜ」

「案外ルナの内に秘められた力かもしれないよ」

 バリーは左目に青痣を、レンツォは額に大きなコブをこしらえて呟いていた。
 さっきコジカが暴れた時に思い切り蹴られたのだ。

「……ともかく、全員無事で良かった」

 コヨーテはため息をついた。

 身体が動物になる、というイレギュラーな事態において全員が無事だというのは奇跡に近い。
 特にルナやチコは草食動物となっていたが、何物に襲われる事なく無傷だった。

「さて、残るは……」

、だよねぇ」

 苦々しい顔でチコが通路の先を見る。
 出口を塞ぐように、三つの頭を持つ例の化け物が居座っている。

 バリーによると、宝玉を砕いてしまった事による魔力の暴走なのだそうだ。
 本来の動物に変える魔法は、三人を纏めて一体の獣に変えてしまった。

「……そろそろ日の光が恋しいわね」

 ミリアが剣を抜いた。
 それに頷いてコヨーテらも得物を構える。

「こんなに巨大じゃどれほど水を飲ませれば元に戻せるか、分かったものじゃないな」

「諦めろコヨーテ。
 元々は奴らが引き起こした事だ。
 それに、奴らの退治は依頼の内容に入っている」

「……分かってる」

 コヨーテは剣を強く握り締めた。



【あとがき】
今回はDr.タカミネさんの「美女が野獣」です。
冒険者たちが性格に合った動物になる、という新しいPCを作ったらまずプレイしたくなる作品です。
動物になった冒険者たちの反応が可愛くて大好きです。

前回やらなかった、落とし穴+ロープの罠を実践してみました。
レンツォがノリノリで某仕事人の真似をしたりして、思わず笑いました。
今回初めてコジカとエンカウント遭遇したのですが、台詞が可愛かった…

ちなみにコヨーテはトラ、ルナはコジカ、バリーがタヌキ、チコがヒツジ、ミリアはオオカミ、レンツォがクロヒョウでした。
コヨーテはどちらかというとオオカミの方が似合ったかも。

そういえば最後のキメラは口移しで人間に戻す事も可能なようですが……
いくらなんでも山羊・竜・獅子にそれは憚られますよねぇ(笑)


☆今回の功労者☆
バリー。【眠りの雲】が大活躍。

報酬:
500sp

銀貨袋の中身→3700sp


≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『美女が野獣』(Dr.タカミネ様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。
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周摩

Author:周摩
しがないリプレイ書きのブログです。

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当ブログはリンクフリーです。報告は不要ですが、あれば相互リンクさせていただきたいと思います。

周摩のシナリオはこちらへどうぞ。

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