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とある冒険者の手記 

 一一月某日、天気は晴れ。
 時刻は正午。

 日が高い内に、『希望の都』と評されるフォーチュン=ベルへ到着した。
 初めて訪れる都市だが、街が活気付く様子はどこかリューンにも似ている。

 オレたちはこの都市の地理には暗い。
 それ故、今晩厄介になる宿屋は大通りに面した『運命の呼鈴亭』に決めた。

 どうやらそこは冒険者の宿でもあるらしい。
 小奇麗な店内の壁に、不釣合いな程年季の入ったコルクボードが掛けられている。
 ちらりと見てみたが、やはりどこの宿も余る依頼というのは決まっているみたいだった。
 掃除の手伝いだのといった、所謂『割に合わない依頼』という奴だ。

 時間が空いたので、女将と他愛もない世間話をして潰した。
 少し気になる内容だったため、書き記しておく事にする。

 フォーチュン=ベルは海に面しているから、海賊の被害が後を経たない。
 なのだが、夏の終わり頃の襲撃を契機に、このところ落ち着いている。
 街では『海賊たちは懲りたんじゃないか』という噂が流れる始末だそうだ。

 最後の襲撃を受けたのはとある商船で、それには若手の冒険者が護衛として乗船していた。
 冒険者たちの活躍あって、商船にはさしたる被害もなしに退ける事ができた。
 (余談だが、その冒険者たちはリューンの『星の道標』という宿の専属冒険者らしい)

 聞くところによれば、何でもフォーチュン=ベルの港から出る大多数の船が、護衛として冒険者を雇う事にしているらしい。

 その界隈では有名な海賊『蒼き疾風』に襲われた商船が、冒険者に護衛を依頼しており、それが功を奏して無事に帰港した事に由来すると、女将は嬉しそうに言っていた。
 オレが興味を惹かれたのは、その商船を護衛していた冒険者が『風を纏う者』だったという事だ。
 『風を纏う者』の名がリューンのみならず、フォーチュン=ベルでも鳴り響いている事実は、同じ冒険者として驚嘆に値する。

 閑話休題。
 オレたちは昼食を摂りつつ、明日の昼前にはこの街を出る事に決めた。
 元々、ついでにと立ち寄った街なので、そう長く滞在する予定もないからだ。

 話し合いとくじ引きの結果、ミリアとバリー、チコが消耗品の買出しに出かける事になった。
 消耗品とは、ランタンの油や火口箱等だ。
 前回の依頼で灯りを使いすぎたし、半年間で火口箱は磨り減り、ロープもだいぶ傷んでいる。

 レンツォは賭場へ行くと主張していたが、ルナに窘められていた。
 反省を促すためと言いつつ、ルナは強引にレンツォを聖北教会へ連れて行く。
 少し可哀想ではあったが、あの状態のルナは手に負えないので諦めた。すまない、レンツォ。

 オレは単独で剣を探す事にした。
 見知らぬ街で相棒となる剣を見つけるなんて、不可能に近いだろう。

 それに、親父の剣でさえ折れてしまうのだ。
 もし再び吸血鬼と相対する事があれば、並みの剣では生き残れない。

 ヨーク村の吸血鬼との戦いは必然だったと、忌々しくも『吸血鬼の本能』とやらが囁いている。
 つまり、これからも吸血鬼と戦う運命になっているのだろう。
 血を飲む決意をしたあの日から、運命の歯車は廻り始めたのだ。

 だからこそ、準備は万全にしておきたい。
 仲間を危険に晒させないためにも、オレは倒れてはいけないのだ。

 ……少し、時間を喰ってしまった。
 そろそろ街へ出よう。
 この辺りで一度筆を置く事にする。



 結論から言えば、オレは剣を手に入れる事ができた。
 全長は以前の剣と同程度で、重量は少し軽い両手剣トゥ・ハンデッド・ソードだ。
 見た目を一言で表すなら『鉄塊』だろうか。
 剣に無くてはならない『鋭さ』が見えず、ただ鈍い光を返している。

 それでも、この剣を銀貨二〇〇〇枚で購入したのは、相応の理由がある。
 今思い返せば、安い買物をしたものだ。
 この剣は、『魔剣の雛』なのだから。


 街に出る前に『運命の呼鈴亭』の女将に事情を話し、腕の良い刀鍛冶か武具を売る店がないかを聞いてみた。
 結果、どうやらこの街には『神の鎚』と呼ばれる銘工が工房を構えているらしい。
 詳細な位置を教えてもらうと、どうやらその工房は街から少し外れた森の中にあるらしい。

 『神の鎚』という名前に聞き覚えはなかった。
 知名度が低いという訳ではないだろう。
 単純に、オレが知らないだけだ。

 現に、フォーチュン=ベルの住人に工房の場所を尋ねると、間髪入れずに答えが返ってくる。
 道中に手に入れた情報では、『神の鎚』の打つ刀剣は『魔剣』と称されるという。

 『魔剣』といえば、『魔物じみた剣』『魔をも穿つ剣』という意味を持つ剣の総称だ。
 あまりにも強力な武具であるため、当然その値段は天井知らずである。
 仮に資金不足で入手ができなくても、刀鍛冶として横の繋がりがあるかもしれない。
 その時は、それに頼るしかないだろうと考えての行動だった。

 『神の鎚』の工房――『魔剣工房ヘフェスト』――へと到着したのは、夕焼けが目に痛い時間帯だった。
 ひとまず販売所の方へ足を運んでみたが、刀剣類の武具は『神の鎚』の許可が無ければ見せる事ができない、という返答を得るに到った。
 (余談だが、販売所で出迎えたのはサンディという工匠の夫人だ)

 『神の鎚』はこの時間帯、剣の打ち直しを行っているという。
 工房へ入ってみると、丁度それを終えたところなのだろう、『神の鎚』は葡萄酒を呷っていた。

 『神の鎚』はがっしりとした体つきの、五〇代くらいの老人だ。
 ぼさぼさの白髪は炎に当たりすぎたのか、熱で焼けていて灰色に近い。
 髪と同色の髭も、縮れてしまっている。

 事情を話し、剣を探しに来た事を伝えると、『神の鎚』は険しい表情でオレの両手を引っ張った。
 一通り眺めてから『神の鎚』曰く、「戦士の腕ではない」との事。

 オレは確かに、見た目は戦士として相応しくない。
 そもそも半吸血鬼なのだ、人間の治癒能力よりも数倍強いそれを持つオレは、傷痕が残る事は滅多にない。
 おまけに、無駄な筋肉をつけないように調整したこの身体も、戦士にしては細すぎるのだろう。

 補足しておくと、身体は細くても力は常人を遥かに超える。
 人間と吸血鬼では身体を動かす『燃料』に大きな違いがある。
 今の身体で充分な力を出せるのに、無理に機動力を殺してまで筋力を得る必要もないという考えだ。

 だが、目の前の人物にはそんな考えを吐露する事はできない。
 どこまでいってもオレは吸血鬼の呪縛から逃れられないらしい。

 『神の鎚』は折れた剣を見せるように要求するので、背負っていた剣を石の台に置いた。
 捩じ切られて二つになった剣は、今こうして見ても物悲しくなる。

 『神の鎚』は、断面を見て驚愕していた。
 何をしたらこうなるかと問われたので、ヨークの吸血鬼の件を掻い摘んで伝えた。
 最初は半信半疑だった『神の鎚』も、捩じ切られた剣が物語る事実に閉口せざるを得なかったようだ。

「ならば問おう」

 ここから先、『神の鎚』ことブレッゼンとの会話は、そのまま書き記しておく。
 オレが発した言葉が生きていられるのは、ほんの僅かな時間だけだ。
 オレは、オレが出した『答え』を忘れる訳にはいかない。


「貴様は何故剣を欲する?」

「剣は人間の『勇気』の象徴だからだ。
 オレはこれからも、吸血鬼と戦う運命にある。
 規格外の力を持つ奴らに対抗するには、一握りの『勇気』が必要なんだ」

「……ならばもう一つ問おう。
 貴様はどんな剣が欲しい?

 『絶対に折れない剣』か? 『吸血鬼を殺せる剣』か?」

「どちらも違う。
 折れない剣も何かを殺せる剣も、それを成す事がオレの目的じゃない。
 オレは吸血鬼が誰かを傷つける事が、反吐が出る程嫌いなだけだ。

 だから、オレが欲しいのは『誰かを守れる剣』だよ」

「……ふん、若造がほざきおるわ。

 だが、面白い。
 貴様が本当に吸血鬼と戦う運命にあるのなら、わしの銘が道を切り開くというのも悪くはない。

 選ぶがいい、小僧。
 これらの全てが、『絶対に折れない』『吸血鬼を殺せる』剣となる」



 冬の間はなるべく夜更かししてはならない。
 灯りを保つ為の油も、タダではないのだ。
 今日の間に仲間に調達してもらった油を早々に使い切る訳にもいかない。

「………………」

 ひとまず、今日のところはここまでにしておこう。
 剣を手に入れてからは、特に何かをした訳でもない。

 精々、強引に聖北教会へ連れて行かれたレンツォがやつれて帰ってきたというくらいか。
 何でも、長々と説法を聞かされたそうである。
 本当にすまない、レンツォ。

 ランタンの灯りを落とすと、案外月が明るい事に気がついた。
 とはいえ、文章を書くには少し暗い。

 最近になって知ったが、【夜目】は受動的に用いる力のようだ。
 『視る』と思って見なければ、力が発動しない。
 故に、最近は灯りを落とすまでその存在を忘れてしまう事がある。

 油代の節約にはなるだろうが、乱用は避けたかった。
 吸血鬼の力を便利と思ってはならない。
 これは忌むべき力だからだ。

 ちらり、と壁際を見る。
 そこには『神の鎚』ブレッゼンから譲り受けた剣が立て掛けられている。

「……運命か」

 思えば、あの時にどうして運命という言葉を選んだのだろうか。
 そして、何故この剣を手に取ったのか。
 もしかすると、これも運命なのか。

 オレは剣を手に取り、鞘から引き抜く。
 月明かりを浴びた黒い刀身は、鈍い光を湛えている。

 剣の名は、『レーヴァティン』。
 神話に語られる北方の魔剣であり、世界を焼き尽くしたとされる剣だ。

 オレは、北方で語られる神話が好きだ。
 その神話では、神々が敗北する描写がなされるからだ。
 別に無敗の神が気に食わない訳じゃない、神に打ち勝つ側が存在する事が重要なのだ。

 そして、『レーヴァティン』は炎の巨人スルトの持つ、終焉の日ラグナロクにおいて唯一神に打ち勝った剣だ。
 主神オーディンを飲み込んだフェンリル、雷神トールを毒で蝕み殺したヨルムンガンド、軍神テュールを噛み殺したガルム等、魔獣が神々を打ち倒す話はあるが、スルトは巨人の身で豊穣神フレイを打ち倒した数少ない例である。

 神を殺すつもりはない。
 ただ、絶対の存在である神を殺す事のできる剣が、ここにある。
 斬るべきは、邪なるもの。

「よろしく頼むよ、相棒レーヴァティン

 神を殺した剣の再現物レプリカは、ひたすら静かに時を待つ。
 己の力の全てを解放する、その時を。



【あとがき】
今回はDjinnさんの「魔剣工房」(と「希望の都「F=ベル」」)です。
魔剣って素晴らしい響き……欲しくなっちゃう!
しかもそれが世界の神話由来の刀剣なんて、憧れますわぁ。

個人的に一番のお気に入りが『レーヴァティン』で、時点が『ミストルティン』。
……はい、北欧神話をすっごい贔屓してます。
効果としてなら『フツノミタマ』一択なんですけどね。

序盤で『星の道標』と『風を纏う者』という固有名詞出てますが、それぞれの著作権情報は下の方に書いてあります。
環菜さん、Y2つさん、すぺしゃるさんくす!

ちなみに、本文中の北欧神話を説明している部分は、間違いだらけだと思います。
多少かじった程度の知識なので、間違いがあればコメントください。
なるべく直します。スルトがレーヴァティンの所有者である事は譲れませんが。

ちなみに、ロキとヘイムダルも相打ちになってますが、あれはノーカウントで。
確かにロキは巨人の血を引いていますが、一応神々に分類されるし、色々と反則性能ですし。

あと、地味ーにフォーチュン=ベルでお買物してます。
ランタン・火口箱・ロープの便利キーコードを補完しました。

超スランプの結果がこれですよ。
難産にも程がある……!
大体、最後は諦めてるし!
本当に筆が進まず、いくつか別の形式もチャレンジしてみたんですけどね。

実はリプレイでの『手記』という形はやりたくなかったんですけどね。
この時代は紙が貴重品で、一般的には羊皮紙が使われていた時代です。
一冒険者が日記をだらだら書くほど、紙は安くないんですよ……

何故かこの形式が一番筆が進みました。
といっても、PC紹介編並みに短いんですけどね。
ショートエピソードだから別にいいんですけど。
でももうやりません。多分。


☆今回の功労者☆
おりませぬ。

購入:
・魔剣工房
【鉄塊】(レーヴァティン)-2000sp→コヨーテ

・希望の都「F=ベル」
【ロープ】-10sp→荷物袋
【火口箱】-50sp→荷物袋
【ランタン】-20sp→荷物袋

銀貨袋の中身→3347sp


≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『魔剣工房』(Djinn様)
『希望の都「F=ベル」』(Djinn様)

今回使用させて頂いたキャラクター・固有名詞
『星の道標』(出典:環菜様のリプレイより)
『風を纏う者』(出典:Y2つ様のリプレイより)
『ヨークの吸血鬼』(出典:『石の棺』 作者:おぺ吉様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。
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周摩

Author:周摩
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