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『凍える森のファシア』(2/4) 

 グリズリーはコヨーテに引き倒された後は、慌てて森の奥へと逃げていったらしい。
 足跡がずっと遠くまで続いている。

「うーん、グリズリーとのゴタゴタのお陰で森の出口が分からなくなってしまいましたね」

「しかしこのままじっとしていても仕方がない。
 ひとまず、本来の目的を果たす事にしよう」

 本来の目的は『ファシアを探す』事である。
 グリズリーの通った足跡を頼りに、奥へと進む。

「なぁコヨーテ、アレ何だと思う?」

 しばらく進んで、レンツォが何かを見つけた。
 前方の開けた場所に、大きな氷の塊が鎮座している。

「氷の塊だろう?」

「違う違う、中身の事さ」

 中身? とコヨーテは改めて目を凝らした。
 そして、気づく。

「……どう見ても人間だな」

 冒険者たちは息を呑んだ。
 目の前に氷漬けにされた女性のオブジェが存在するのだ。

「冷てぇし、本当に氷だな。
 だが、どうやったら人間をまるまる氷漬けにできるンだよ」

 バリーが氷に触れつつ一人ごちると、彼の魔力が何かに反応した。

『あなた方は……?』

「!?」

 直接耳に届くような声が聞こえた。
 誰も聞いた事がないような、女性の声。
 順当に考えれば、目の前の氷漬けの女性が発したものだろう。

「オレたちはリューンの冒険者だ。
 あんた、そんな状態で話ができるのか?」

『ええ、ご覧の通り動く事はできませんが。
 ――して、何用でしょうか?』

「オレたちはこの森に棲んでいるというファシアを探しているんだ。
 町長からの依頼でな、ファシアの森の異変を収めてもらうように交渉に来た」

『異変……』

 わずかに、女性の声がトーンを落とした。

「そう、町の方まで吹雪の影響が出ていてね。
 このままじゃ町中が雪だらけになって、人が住めなくなっちゃうんだ。

 ファシアは雪を操ると聞いたけど……君はファシアじゃないよね?」

 ファシアは男性だと聞く。
 では、目の前の女性は何者なのか。

『私はソフィアといいます。
 彼に幾百年も昔に捕われ、一緒にこの森を見守ってきました』

「捕われた?」

『そう……昔、ファシアの怒りをかってしまった際に、私は生贄として捧げられました。
 けれど、ファシアは生贄にされた私を憐れんでくれたのです。
 しばらく過ごす内に、私とファシアは互いに惹かれあい……不自由なく森の暮らしを続けていました。

 しかし……人間である私と森の守護者たる彼では、共に過ごせる時間は限られています。
 だから私は氷柱の中で生きる事を望み、彼は承諾してくれました。
 私は永遠にファシアの森に捕われる事になったのです……』

「………………」

 聞く限りでは美談だ。
 人を氷柱に閉じ込めるという『手段』はともかく、愛し合う二人で永遠を生きようという『目的』は美しいものがある。

 どうも、ファシアが町へ被害を出すのは悪意あっての事ではない気がする。
 そもそも彼の領分は森の『守護者』だ。

「ではソフィア、君はファシアと一番近しい者なんだな。
 だったら聞かせて欲しい。
 何故ファシアは近隣の町へ被害を出してでも吹雪を強めるんだ?」

『それは――』

「そこで何をしている」

 背後から声がした。
 振り返ってみてみると、声の主は男だ。

 透けるような銀の髪、雪と同じような白い肌をしている。
 彼がファシアなのだろうか。
 真っ白な雪の上を、苦にすることなく優雅に歩いてくる。

「お前たち……さっき吹雪を強引に越えてきた奴らか」

 極めて事務的な挙動で、ファシアを右手を掲げる。

『ファシア!』

「止めるな、ソフィ。
 私の森を荒らす輩は、誰であろうと許しはしない」

 ファシアは掲げた右手を、冒険者たちへ向ける。
 すると、先ほどまで晴れていた空が一気に曇り、激しい吹雪が彼らを襲う。

「去れ。私は、お前たちに用はない」

「待て、こちらの話を――!」

「聞かなくても分かるさ。
 お前たちは町人が寄越したような連中だろう?
 だったら答えはノーだ。

 さっさとそれだけ伝えて、故郷に帰れ。
 もう二度とこの森には近づくな」

 ファシアが突き出した右手を、ぐっと握り締める。
 吹雪が更に勢いを増し、コヨーテたちの身体を薙ぎ払った。 

「うわあああああ!!」

 彼らの意識は、一時的に遮断されてしまった。


「くっ……ここは……?」

 気づけば、結界を破って進入したはずの森は遥か遠方に存在していた。
 どうやら強制的に森から弾き出されたようだ。
 再び吹雪の中へ放り出されたコヨーテたちは、改めて寒さに震える。

「くそ、寒いな。
 どうするコヨーテ、意外とファシアの意思は固いみたいだぜ」

「一度町まで戻ろう。
 ソフィアの話によれば、ファシアは数百年前から存在するみたいだ。
 もしかしたら町の図書館にでも彼についての資料が存在するかもしれない。

 まずはファシアについて詳しく調べるところから始めよう。
 あれだけ頑ななんだ、何か理由があるはずだ」

「ねーコヨーテ。
 吹雪のせいで分かりにくいけど、そろそろお昼だよ。
 ついでに腹ごしらえしとこーよ」

「よし、決まりだな。
 まずは宿へ行って、熱いスープでも啜ろう。
 資料の調査はそれからだ」

 こういう時の冒険者は素早いものだ。
 往路の半分の時間で町へ辿りつくと、依頼人から手配されていた宿へ駆け込む。

 腹が減っては戦はできぬ。
 まずは、一杯の熱いスープから。



「結局、この童話以外にはめぼしい情報はありませんね」

 ルナは手にした『ファシアの森1巻』をぺらぺらと捲り、情報を整理する。

「ファシアの涙が、ソフィアを守る氷柱になった……か。
 やっぱり美談じゃないか。
 ソフィアの話に嘘はないし、どうやらファシアも悪人じゃなさそうだね」

 『ファシアの森2巻』を捲るのはレンツォだ。

「ファシアは過去にも吹雪を強めた事があります。
 その時は森の動物を守るため、人間を阻みました。
 ……という事は、今回も森の動物を守るために吹雪を強めていると考えられませんか?」

「童話はウン百年前の話だろうが。
 当時はこの町もファシアの森に依存してたのかも知れねぇが、今は近隣の町村と交易してんだ。
 今更動物を乱獲するような真似はしないだろうよ」

「だったら、ファシアは『何』を『何』から守っているんだ?」

……」

 ぽつり、とチコが呟く。

「ソフィアが鍵だと思う。
 童話では最終的に吹雪を収めたファシアが、今度は問答無用で追い返すくらいなんだよ。
 たぶん、今回は吹雪を起こす事が『手段』じゃなくて『目的』なんだ」

「吹雪が『目的』?
 あ……? 何だこれ、何が引っかかってやがんだ?」

 何かを見落としている、とバリーは呟いた。
 こめかみに指をあて、必死に海馬からキーとなるワードを掘り出す。

 吹雪。結界。ファシアの森。ソフィア。氷柱の魔法。童話。数百年前。

「まさか……」

「何か分かったのか?」

 バリーは頷き、口を開く。

「……氷柱だ。
 童話にもあったろ、『ファシアの涙がソフィアを氷柱に閉じ込めた』と。
 こりゃ素人が見りゃ美談で終わるが、魔術師の目から見りゃ滅茶苦茶だ。

 まず魔力の元がファシアなのはまだ良い。
 だが、まるきり詠唱や掌相しょうそうの類が抜け落ちてやがる。
 これじゃ術式が脆く、不安定になっちまう。

 加えて、ソフィアが氷柱に閉じ込められたのはウン百年前。
 そんだけ時間がありゃ、術者であるファシアの魔力も衰退するし、不安定な術式の一つや二つは老朽化するだろうぜ」

「つまり、ファシアはソフィアの氷柱の魔法が解けてしまうのを恐れていると?」

「確証はないがな。
 だが、その可能性は十分に考えられるぜ」

「待ってください。
 どうして吹雪を起こす必要があるんです?
 仮にその考えが正しいとして、魔力が衰退しているはずの彼が未だに吹雪の結界を維持する必要性も分からないですよ」

「まぁ、俺は氷雪系の術式は専門外だから偉そうには言えねぇが、予想としては氷柱の術式の安定を図るために吹雪を使ってるってのが妥当だろ」

 バリーの考えはかなり説得力のあるものだった。
 実際に、火炎系の術式では小さな蝋燭の炎を大量に使って巨大な炎の塊を作る手法もある。
 氷雪系の術式でも似たようなものがってもおかしくはない。

「よっしゃ、それじゃ森へ行ってみようぜ」

「また弾き出されたりしないかな?」

「さっき操った吹雪すら魔力を食うんだぜ?
 ただでさえスッカラカンに近い奴が、『氷柱』と『吹雪の結界』と『局地的な吹雪』を同時に操ったりなんかしたら大変だぜ。
 俺ならとても立っていられない」

「今なら話くらいはできそう、って事か。
 ならば決まりだ、森へ行ってみよう」

 暖炉に後ろ髪を引かれつつ、冒険者たちは寒風舞う森へと歩き出した。



「へっ、やっぱり吹雪が弱まってやがる。
 おいコヨーテ、その辺で適当に剣を振り回してみろ。
 そこらじゅうに『歪』がありやがるから、すぐにヒットするぜ」

了解ヤー

 返答と同時に、レーヴァティンが空を裂く。
 以前と同じく強い光が辺りを包み込み、目が慣れれば森の中に立っていた。

「ファシアの居場所は分からないから、ひとまずソフィアの氷柱まで行こう。
 そこからファシアの行方を聞けばいいし、最悪そこで待っていればいつかは会えるだろう」

 あんな状態でも、レンツォは氷柱の位置を把握しているのだという。
 とりあえずは障害もなく進めると思ったのだが、トラブルは向こうの方からやってきた。

『ちょっとちょっと、そこの人間たち!』

『お願い、ちょっとだけ手伝って!』

「よ、妖精ですね」

 眼前には、人間の頭の大きさくらいの身長の裸体の小人が浮いている。
 冒険者たちの間であまり驚きがないのは、例の『ファシアの森』の童話は妖精の話を元に書き上げられたものだと、奥付に記されていたからだ。

 そもそも妖精や精霊の類は、常人の目には映らない。
 感性が近い者は彼らの姿を視認し、声を聞く事もできる。
 中には『精霊術師』として、彼らの力を借りる者もいるのだ。

 当然、コヨーテたちにはそんな特殊な適正はない。
 色濃い精霊力が溢れる場所では、ミリアであれば視認できるくらいの適正は持ち合わせている。
 ファシアの森は魔力又は精霊力が溢れているのだろう、適性のない者でも視認できるようだ。

「森の妖精は悪戯好きだって聞くぜ。
 止めとけ止めとけ」

『むきー! 行儀の悪いピクシーと一緒にするなよ!』

『ボクらは行儀も良くて優しいピクシーなんだから!』

「テメェらで言ってちゃ説得力ねぇぞ」

「待てバリー、とりあえず話だけでも聞いてあげよう」

 ファシアの魔力が回復するまでに交渉を進めなければならないのだが、魔力はわずかな時間で戻るものではない。
 下手に突っぱねて、妖精から邪魔をされるのも面倒な話だ。

『ついてきて、こっち!』

『大変なの、助けてほしいのよ!』

 いまいち要領を得ない妖精たちの話に首を傾げていると、痺れを切らした妖精は先導するように飛んでいく。
 仕方なく後をついていくと、そこには川があった。

『こっちこっち!』

『この子を助けてあげて!』

「この子……って! ちょっと待ってよ!」

「こいつ! さっきのグリズリー!?」

 見れば、少し前に死闘を繰り広げたグリズリーが川に落ちて暴れていた。
 どうやら巨体が過ぎて川の溝に嵌ってしまっているらしい。

「……どうしてこんな事になってんだよ」

『キミたち、さっきこの子をいじめたでしょ! 酷い怪我だったんだから!』

『この子は人見知りで、ちょっと驚いただけなんだからね!』

「う……その、悪かったよ」

 思わず、コヨーテは謝ってしまった。
 とはいえ、じゃれあったら確実にあの世逝きな巨体を持つグリズリーに襲われたら、平和的な解決は不可能なのだが。

『この子は怪我を治そうとして、こうなっちゃったんだよ』

『この川の先に湖があるんだけど、そこの水を飲むと森の住民は力をもらえるんだ』

『だけど、この子はきっと湖まで歩く元気がなかったんだよ』

『だから早まって川の水を飲もうとして足を滑らせちゃったんだね』

 恐らく、足を滑らせたのはチコの放った矢と、コヨーテが引きずり倒した事が原因だろう。

『このままじゃかわいそうでしょ!?』

『お願い、助けてくれる?』

「た、助けるったって……
 この巨体だよ、持ち上がるかな?」

「難しいな。
 持ち上げるには川の中に入らなきゃなんねぇのも面倒だぜ」

「つ、冷たっ! これまずいって! 入水自殺と変わんないって!」

『大丈夫、大丈夫! キミたちボーケンシャなんでしょ?』

『これくらい何とかなるって!』

「軽く言いやがって……!
 オイどうする?
 端的に言って、誰が川の中に入る!?」

「そりゃ力持ちが望ましいでしょ?
 コヨーテ、ミリア任せた!」

「ちょ、ふざけないでよ!
 吹雪でさえ初めて見るのに、寒中水泳まで体験したくないわよ!」

「えーっと……オレもできれば水の中は遠慮したいな……」

「だよねー! ちくしょう、ここは公平にコイントスで決めるか!?」

「待てコラ! テメェはイカサマすんだろうが!」

「コイントスならルナにやらせて!
 あの子ならイカサマする程の技術はないから!」

「失礼な! 確かにイカサマはしませんが、やろうと思えばできない事もありませんよ!」

「馬鹿、こんな時に変な意地張るな! 余計にややこしくなるだろうが!」

 ぎゃーぎゃーと騒ぐ『月歌を紡ぐ者たち』は、こんな時も平常運転だ。



 グリズリーの救助は困難を極めた。
 そもそも向こうも落ちまいと必死に両前足を岸に引っ掛けている訳だが、引っ張り上げるにはその前足を掴む必要がある。
 そうなれば凶器同然の爪が自由になり、向こうが暴れださないという保障があったとしても、危険極まりない。

 結局、彼らが出した結論は一つ。
 グリズリーを【眠りの雲】で眠らせてその間に岸へ引っ張り上げる、という荒業だ。
 眠らせてしまえば相手が暴れる心配はないが、その分だけ『持ち上げる』役目を負った者の負担も大きくなる。

 だが、そこはそれ。
 クジ運が無かったのだと諦めてもらうしかなかった。

『ありがとう! この子を助けてくれて!』

『ところで、そちらのお兄さんたちは大丈夫?』

「死ぬ……死んじゃう……」

 妖精が残念な視線を向けているのは、半裸で焚き火に当たるコヨーテとレンツォだ。
 どうやら今日ついていないのは彼らだったらしい。

「………………」

「ちょっとコヨーテ、起きてますか?」

「ん、あぁ……久しぶり、ルナ……」

「ええええ!? 記憶が飛んでる!?
 しっかりしてくださいコヨーテ、寝ちゃダメですよ!!」

 コヨーテがレンツォ以上に疲弊しているのは、吸血鬼の血が影響しているのだが、本人以外は知りえない。
 全身濡れそぼった二人を介抱するルナを尻目に、妖精は安堵からか饒舌になる。

『いやー、この子の事も心配だったけど、この川が止まるのもとっても困るんだ』

『この川って町と繋がってるからね。
 町にまで吹雪いた雪が溶けてこの川に流れてこないと、ちょっと困るんだ』

『そーそー、ファシア様の力が回復できないのよね』

「ファシアの……? どういう事だ?」

 思いがけない一言にバリーは聞き返すが、丁度その時グリズリーが起き上がって歩き出した。
 グリズリーが心配なのか、妖精たちはそれに付いていこうとする。

「オ、オイ待てよ!
 俺たちは吹雪を止めるためにこの森に来たんだ!
 何か知ってるってんなら教えてくれ!」

『………………』

 協力を仰ぐと、妖精は寂しそうな表情へと変わる。

『……ファシア様はソフィア様の事で、とても苦しがっているんだ』

「やはりソフィアが関係しているのか」

『うん、だから吹雪を止めるのは難しいかもしれないよ。
 ファシア様はとても真っ直ぐな想いで雪を降らせているのだから……

 正直ね、ボクたちはどうしたら良いのか分かんないんだ。
 ファシア様を止めた方がいいのかな……どっちだろう……』

 さっきまで陽気にお喋りしていた妖精とは思えない程、悩ましげな表情だった。
 正直、戸惑った。
 もしかしたらファシアとソフィア、双方の終焉が近いのではないか、と。

『約束してくれる?
 ファシア様を……ソフィア様を救ってくれる、と。
 そうしてくれるなら、ボクも協力するよ』

「………………」

 この妖精も一途にファシアとソフィアを慕っているのだろう。
 だから苦しむ二人の姿を見たくない。
 この森の住民が二人を救えないと理解しているからこそ、冒険者たちに約束を求めたのだ。

「あぁ、約束するぜ。
 きっと二人を救ってやる。

 そのために、詳しい事情を聞かせてくれ」

『……うん!
 それじゃ、ソフィア様のところへ行こう!』

「大丈夫か?
 俺たちはたぶん、ファシアに嫌われている。
 無理矢理追い出される事はないだろうが、何かと面倒じゃないか?」

『ファシア様は今の時間だと、いつも湖でお休みしているんだ。
 さっき歩いているところを見たからね。
 しばらく近づかなければ大丈夫だよ』

 ちょっとしたトラブルもあったが、結果的には森の住民たる妖精を味方に付けられたのは頼もしい。
 彼らなら森の方角も分かるだろうし、何より情報を得る事ができる。
 コヨーテとレンツォが身体を張る価値はあったのだ。


『あなた方は……』

「やっほー、また合ったねソフィア」

 しばらく歩いて、冒険者たちは戻ってきた。
 ソフィアが閉じ込められた氷柱の前に。

 そして、訊ねた。
 吹雪の原因がソフィアの氷柱ではないのか、という疑惑を。

『……あなた方の予想通りです』

 ソフィアは言い辛そうではあるが、肯定した。
 冒険者たちが予想した説は当たっていたのだ。
 魔力を食うにも関わらず吹雪を起こすのは、ソフィアの氷柱を維持するためには吹雪に含まれる微細な魔力でしか行えないから。
 そして、吹雪が段々と強くなっているのは、術式の崩壊が近い事を示している。

「だとしたらマズいよな。
 吹雪が強くなってるって事は、それだけ大量の魔力を放出してるんだろ。
 そんな事をいつまでも続けてたら、すぐに魔力が枯渇しちまうぜ」

『そうだよ。
 ファシア様は心配だし……
 でも、ソフィア様が死んじゃうのはボクたちもイヤなんだよ……』

『私の事は……良いのです。
 私自身が消える事よりも、ファシアが苦しむ方がよっぽど苦しいのですから』

 氷漬けのソフィアの表情は変わらない。
 だが、声色に表れた寂しげな色合いは、痛い程理解できた。

「ソフィア――」

『大変! 大変よ! ファシア様が……!』

 何かを言いかけたコヨーテの声を、さっきの妖精の片割れが遮る。
 余程慌てているのか、半ば錯乱状態にあった。

『落ち着いて。ファシア様に、何かあったの?』

『ファシア様が、目を覚まさないの……!
 湖の畔で、倒れているの!』

「もう魔力が底を尽きかけてるのかもしれないな……案内してくれ!」

『うん! こっちだよ!』

『――皆さん!』

 急いで飛ぶ妖精たち追おうとすると、背後からソフィアが声を張り上げた。

『お願いです……ファシアを、ファシアの事を頼みます……!』

「分かってる」

 コヨーテはそれだけ言うと、足早に妖精を追った。


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周摩

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