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『みえないともだち』(8/8) 

「それでは私たちは少し離れていますから、しっかりお願いしますよ。
 ……ルトラさんもこっちへ」

「あっ……ハイ。
 レンツォさん……神の加護を……」

「ありがとうルトラさん。
 そんな事を言ってくれるのは君だけだよ」

 本気で涙を流してしまいかねないほど、レンツォは感動している様子だった。
 しかし、観念したのか他のメンバーが離れた事を確認すると、真剣な表情を見せる。

「……頼むから呪ったりするのはカンベンな」

 ゴゴゴ、という石と石が擦れる音が響く。
 やがて半分ほどずれたところで、レンツォは目を見開いた。

「んなッ……!? メ、メアリ!?」

「えッ!? どうしたんですかレンツォさん!? メアリって!?」

 ルトラが飛び出そうとするのを、必死でルナが止めていた。
 まだ安全かどうかの合図が、レンツォから来ていないからだ。

「……いや、これは違う。
 みんな、大丈夫だからこっちに来てよ」

 レンツォの叫びと憮然とした表情が気になるも、他のメンバーも棺の中を覗く。

「――メッ……メアリ……ちゃん?」

 そこにはメアリそっくりの、それより少し顔色が悪く色素の薄い少女が眠るように横になっていた。

「いや、よく似てるけど別人だよ。
 その証拠にホラ、その娘が纏ってるのは死装束だ。
 普通の人間が着るものじゃないし、当然だけどメアリの服とも違う」

 それに、素人目に見ても分かる。
 この少女からは、全く命の気配を感じないのだ。

「間違いない……これが、グリグオリグが封印した吸血鬼『パメラ』だ……!」

 地下霊廟が、静寂に包まれた。
 誰もがこの事実に驚愕し、次に何をすべきかを考えられないのだ。

 ふと気づいたが、コヨーテの心中からあの声が聞こえなくなっていた。
 目の前の弱弱しい存在が、とても宿敵に値するとは思えない。
 これでは誰かの介護なしには存在を維持できないのではないだろうか。

「……で、どうするルトラさん。
 この吸血鬼、今なら楽に退治する事ができる。
 このまま退治してしまうか、それとも教会へ判断を委ねるか?」

「わ、わたしが決めるんですか?」

「それはそうだ。
 オレたちが決める事じゃ――」

「――ダメェッ!!」

 コヨーテの言葉に割り込んだのは、メアリだった。
 文字通り、棺とコヨーテの間に割り込んで、通せんぼをしている。

「――ッ!? 何だとッ!?」

 コヨーテが驚愕したのはメアリの突然の登場ではない。
 

「マズい、パメラが目覚めるぞッ!
 ルトラさん、決めてくれ、早くッ!」

「えっ!? ええっ!?」

「パメラを、パメラをいじめないでッ!!」

「迷ってる場合じゃないぜコヨーテ!
 早くしないと目を覚ましちまうッ!!」

「クソッ……!」

 一瞬の葛藤の後、コヨーテは選択した。
 蓋を閉じる。
 我ながら消極的な手段だ。

 メアリの声に反応するのなら、聞こえなくしてしまえばいい。
 仮に覚醒が完全なものでないのなら、これで一時的には収まってくれるはずだ。
 可能性は低いが、もう一つの選択肢を取れなかったコヨーテにはそれしかなかった。

「………………」

 しばらく経つも、棺が動く様子は無い。
 どうやら覚醒は中断されたようだ。
 だが、何も解決していないのは誰もが理解している。

 目下の悩みは、パメラの覚醒を促すメアリという存在だ。

「パメラをいじめないで……おねがい、そっとしておいて……」

「……メアリ、聞こえる? わたしの事が分かる?」

 嗚咽をもらすメアリを安心させようと、ルトラが優しく語り掛ける。
 できれば彼女が落ち着くまで待ってやりたいが、状況が状況だ。
 のんびりしていたら、時間経過でもパメラが覚醒してしまう可能性がある。

「……ここで一体何をしていたんだ、メアリ。
 君は村長が止めるのも聞かずに、ここに来ていたんだろう?」

 それでも最大限に優しげな声を出したのは、コヨーテが甘いからか。

「……ともだちに、パメラにあいにきてた」

「やはり、友達というのはパメラの事だったのか。
 だが、会う……というのは?
 君は目が見えない訳だが、どうやってパメラと君は会っていたんだ?」

 目が見えない以前に、メアリでは石櫃の蓋を開けるだけの力はないだろう。

「パメラを見たことはないの。
 わたしがここにくると、いつもパメラがわたしにはなしかけてくる……
 村のひとたちがねむってるときだけ、パメラはわたしとお話ができるの……」

「……パメラは棺の中から、彼女に話しかける事ができたという事でしょうか?」

「吸血鬼の能力を考えれば、無理な話じゃない。
 精神感応テレパスに優れたヤツも稀に存在するし、もしかしたら彼女らの外見が似ている事も理由の一つなのかもな」

「だが、パメラはどうしてメアリの血を吸おうとしなかったんだ?」

「パメラとメアリが友達だから、じゃないんですか?」

「だから、何故吸血鬼が人間の少女と友達になり得るのか、って事だよ。
 そんな話、今まで聞いた事もねぇよ。
 コヨーテの言う通り、メアリとパメラが瓜二つな外見が関係しているのかもな」

「……そう、だな」

 意外なところでザックリと心を抉られた。
 バリーにとっては何気なかったのだろうが、堪えるものだ。

(今は、そんな事を考えている場合じゃない……か)

 そんな事、と断ずるには重いが、そうでもしないと心が壊れてしまうかもしれない。
 気を取り直して、メアリへの質問を再開する。

「パメラとは、どんな話をしていたんだ?」

「……よくおぼえてない。
 パメラはいっつもいってた。
 『わたしには、あなたとかれだけしかいない。そしていずれ、あなたもわたしだけになる』……」

「……?」

「……パメラもわたしとおんなじで、だれもいないの。
 おとうさんも、おかあさんも、おにいさんも。
 パメラのともだちはわたしだけ、パメラを守ってあげるのはだけ。
 パメラがいられるのは、ここだけ」

「……グリグ……オリグ……!?」

 聞き違いかと思ったが、どうやら違うらしい。
 他のメンバーも驚きを隠せないようだ。

「……でも、もうぐりぐおりぐもいない。
 パメラには、わたししかいない」

「待て、メアリ。
 その、グリグオリグってのは一体どういう事だ?
 グリグオリグとは誰の事なんだ?」

「……だれ? わからない。
 いつもパメラを守ってる、春にはわたしも守ってくれた。
 春に、村のひと、たくさん死んだ。
 ぜんぶ、ぐりぐおりぐがしたの」

「春……だって?」

「パメラが言ってた。
 『あなたいがいはゆるさない、そしてわたしはチがいるの』」

 村長夫人の言っていたのは、これの事か。
 春に起こったのは、グリグオリグによる村人の殺害。
 これが、呪いか。

 あの時、メアリを殴る村長を止めたのは決して彼女の身を案じた訳ではなかった。
 ただ、メアリが修道院に関わった為に起こった村人の大量殺人が、彼女を恐れる真相だったのだ。

「だから、ぐりぐおりぐはねずみをころすの。
 だから、春にここにきた村のひともぐりぐおりぐはころすの。
 ……パメラには、血がいるから」

「……い、一体どういう事なんですかバリーさんッ!
 グリグオリグはもう一〇〇年も前の人間ですよ?
 それが今になって突然、しかも村人を殺すだの血が要るだの……訳が分かりません!」

「まず落ち着け、ルトラさん。
 そして冷静に考えるんだ、いいか……?

 まず、メアリが言う『ぐりぐおりぐ』と俺たちが知っているグリグオリグが同一人物であると証明する事はできない。
 そして、メアリは『もういない』と表現した……
 これは恐らく、さっきの『影』を指しているんじゃねぇか?」

 つまり、さっきの『影』がぐりぐおりぐだったという事。
 太陽の光を浴びて灰に還った吸血鬼としか思えない存在が、グリグオリグ。

「それと、『春』の事は……言わなくても分かるか?」

 村長が呪いと表現したのはその事か。
 或いはグリグオリグがパメラへ捧げる為、定期的に村人を生贄にしていたか。

「でも、ぐりぐおりぐはいない。そしたら、パメラは……」

 パメラはこれからどうやって力を維持していくのか。

 可能性は二つある。
 このまま力を失って、緩慢な滅びを迎えるか。
 それとも極限の飢餓によって、或いはグリグオリグの消滅により本能が目覚めてしまったら。

 理性が残されていればメアリは助かるだろう。
 だが、メアリ以外の村人がどうなるか、想像に難くない。

「ようやく繋がった……全てが、一本の線に……」

 得心したように呟いたのは、コヨーテだ。
 続くように、バリーも頷く。

「あァ、俺もだ。ようやく分かったぜ、事の顛末がよ」

「リスクブレイカーに感謝しなくてはな。
 アイツの情報がなければ、オレたちは真実に辿り着く事はなかった」



「覚えているか、セワードの言葉。
 没落後のメッカニア家がどういう末路を辿ったか」

 確かに、セワードは言っていた。
 メッカニア家は没落後バラバラになって落ち延びた、噂じゃ近隣の村落に身を潜めた、と。

「パメラの言葉はこうだ。
 『あなた――メアリ――以外は許さない』……つまり二人の外見が瓜二つなのも、そういう事なんだろう」

「??」



「そう、メアリ以外の村人は、異民族なんだよ。
 彼らはかつてメッカニア家からこの領土を奪った異民族の末裔なんだ」

「――あっ!」

 ぴったりと息の合った気づきだ。
 セワードの情報は、まさしく値千金だった。

「何故メアリがパメラの友達になれたのか。
 何故パメラはメアリ以外の村人を許さないのか……」

 全ての因縁は、大昔の異民族との戦争だった。
 そこまで根強い怨恨は、コヨーテたちには計り知れない。

「不可解だった点は、全て繋がった。
 だが、それで終わりという訳にはいかない。

 ルトラさん、決断してくれ。
 パメラを殺すか、否か」

「で、でも、パメラはこのまま放っておいても死んでしまうんですよね?」

「この娘がそれを聞いて黙っていると思うか?
 メアリはパメラが何を欲しているか知っているし、新たな『ぐりぐおりぐ』となる道を辿るかもしれないぞ」

 言葉の意味を理解したルトラはさっと顔を青くする。

「でも、村人を殺したのはパメラではないのでしょう?
 仮にメアリが第二の協力者となったとしても、それほど心配ないんじゃないですか?」

「……ここまでの情報を整理すれば、パメラには何の力もないとは判断できる。
 だが、現にパメラはグリグオリグを吸血鬼へと変えている。
 メアリにその牙が突き立てられないと、誰が保障できるんだ?」

 今度こそ、ルトラは何も言えなくなった。
 パメラを殺すか、放置するか。
 この二択は今や別物と化している。

 

「……あくまでも決めるのはルトラさん、アンタだ。
 俺たちは決定に従うだけだからな」

 冷たく聞こえるが、バリーの言葉は正しい。
 もちろん、ルトラが望むなら冒険者たちに選択を委ねる事もできるだろう。
 しかし、それが最悪の選択である事を、聡明なルトラは理解している。

「パメラ……」

 心配そうに棺を撫ぜるメアリ。
 その中で眠るパメラ。
 自身の選択を待ち続ける『月歌を紡ぐ者たち』。

「決め、ました……」

 それらを見て、悩んで、結論を出した。

「……して、ください」

 震えるその声は、蚊の鳴くよう。

「……倒してください、パメラを……お願い、します」

 苦しみ抜いて出した結論だ。
 二度問うようなマネはしない。

 コヨーテは一つ頷くと、【レーヴァティン】を抜いた。
 その鞘擦れの音で何をするのか悟ったメアリは、棺を庇うように抱き締めた。

「や、やめてッ! パメラをいじめちゃいやだッ!!」

「……さ、メアリちゃん、こっちへおいで」

「イヤ……パメラ、パメラ……!」

 優しく語り掛けても効果のない事を理解したのか、ルトラはとても哀しそうな表情で目をつぶり、メアリを棺から引き剥がした。

「イヤッ! はなしてッ! ――!!」

「――お願いします、皆さんッ!」

 棺の石櫃の蓋が、音を立てて開かれる。
 そこには相変わらずメアリとそっくりの、だが中身は全く違う少女が眠っている。

「パメラ――――ッ!!」

 コヨーテは【レーヴァティン】を逆手に、あたかも白木の杭のように構える。
 そしてその刃を少女の心臓めがけ――

「やめてェ――――ッ!!」

 ――欠片ほどの慈悲も、砂粒ほどの情けもなく、振り下ろした。


「メアリちゃん……」

「………………」

 地下霊廟を後にし、今は修道院の中庭に差し掛かったところだ。
 パメラは、死んだ。
 吸血鬼としての死だ、棺の中に死体はなく灰がどっさりと残っている。

 あれから、メアリは一言も口を利いていない。
 棺に駆け寄って縋りつこうとするメアリを引き剥がして地下霊廟の扉を閉じたら、まるで死人のような表情でとある少女の名を呟くだけになった。

「……もう、帰りましょう。
 調査するべき箇所は全て調べ終わったし、メアリも村へ帰してあげなきゃいけないし――」

「イヤ……村には、帰らない……」

 メアリの声はとてもか細いものだったが、何者をも寄せ付けない拒絶の意志を感じさせた。

「な、何を言ってるのメアリちゃん?」

 ルトラは困惑しつつも、盲目の少女へ手を差し伸べようとして、

「――イヤッ!」

 その手を払いのけられた。
 メアリは怯えるようにその場から後ずさる。

「イヤ……イヤよッ!
 ぜったいにイヤ! ぜったい、に、帰らない!

 パメラを返してッ! わたしの、ともだちを返してよッ!!」

「あ、あれは吸血鬼だったのよ?
 ……分かる? 吸血鬼っていうのは、とっても怖い魔物――」

「パメラは、こわくなんかないッ!
 わたしのこと……たいせつに思ってくれるのは、パメラだけ、パメラだけだったんだもんッ!」

 次々とまくし立てるメアリは、濁ったガラス玉のような瞳から大粒の涙を零した。
 嗚咽に途切れさせながらも、滔々と言葉を紡ぐ。

「パ、パメラはいつも、わたしのはなしを聞いてくれたもん……
 パメラがいなくなっちゃったら、もうだれもわたしの、はなしを聞いてくれない……
 もう、だれもわたしをたすけてくれない……」

「………………」

「……村には帰らない。
 ここでかみさまにおいのりをささげて、パメラのいるところに、つれていってもらうの」

 それは、つまり。

「――ばっ……バカな事を言わないのッ!」

 そんな捻じ曲がった覚悟を聞かされては、ルトラも黙ってはいられなかった。
 一体何が正しいのかも分からなくなった今、せめて彼女を生きながらえさせる為に、言葉を投げかける。

「パメラは……彼女は吸血鬼だったのよ!?
 魔物の魂は永遠に地獄をさまようのよ、決して許される事なくッ!
 あなたもそんなところへ行きたいって言うの!?」

「――じゃあッ!
 じゃあ、わたしはほかに、どこへ行けばいいの!?
 パメラのいないせかいの、どこにわたしはいたら、いいの!?」

 悲痛な叫びに、ルトラは再び黙ってしまった。
 一体、何をどうすればいいのだろうか。

 ルトラは、メアリを救いたかった。
 かつて手を引いてくれたお坊様のように、彼女に温かい手を差し伸べてやりたかった。
 だが、どうすれば彼女の心が救われるのか。

 堪りかねて、ルトラは後ろを振り返った。
 『月歌を紡ぐ者たち』の面々も、一様に表情は暗い。
 彼らに答えを求めるのは間違いかもしれないが、それでも聞かずにはいられなかった。

「わたしは……わたしは、どうすればいいんでしょうか……」

 返ってきたのは、沈黙だった。
 正確には風の音に混じってメアリの嗚咽が聞こえてくる。
 それに心を締め付けられるようで、かき消すように口を開く。

「――彼女の為には、パメラをそのままにしておいた方がよかったんでしょうか?
 わたしはメアリの大切なモノを奪ってしまったんでしょうか……?
 不確かな危険を恐れて……」

 それでも、答えは返ってこない。

 堪らず、ルトラは縋りつくように乞う。

「……教えてください、コヨーテさん。
 わたしには、主の御声は聞こえてきません……」

 完璧な答えじゃなくていい。
 ただ、道標が欲しい。
 一寸先も見えないこの暗闇の道に、一筋の明かりが欲しいだけだった。

「――ルトラさん」

 コヨーテが、口を開いた。



 後日、リューン聖北教会の『史跡局』はてんやわんやの大騒ぎだった。
 とある下っ端調査員がとある案件の調査で、とんでもない結果を報告してきたからだ。
 元々その結果を吟味して調査団を派遣する予定だったが報告内容があんまりな内容だったという事で、持ち帰られた資料の精査が優先される事になり、調査団の派遣が先延ばしになる程の衝撃だった。

 今現在はようやく資料の調査も進み、とうとう下っ端調査員が大切に持ち帰ってきた手記の解読を残すばかりである。
 その下っ端調査員と言うと、局長へ呼び出され、もっと上層のお偉いさんに呼び出され、手記の解読を進め、その他の資料の調査もしなければならず、ここ数日ずっとデスクを空けていた。

 最も、忙しい理由はそれだけではないのだが。
 下っ端調査員はリューンに戻ってから頻繁に教会が管理している孤児院に足を運んでいる。
 昔っから面倒見のいい下っ端調査員の行動に疑問を感じる同僚は少なかったという。

 ともあれ、明日には件の修道院に正式な調査団が派遣される。
 その段階になっても、下っ端調査員は現地の詳細な説明の為に東奔西走する。

「ううう~~あれだけ報告書作ったのに……書いても書いても終わる気がしません……」

 下っ端調査員ルトラ・マッカレルはペンを握り締めながらデスクに突っ伏した。
 最近は多忙で睡眠不足だ。
 目元を擦ろうとして、両手のインク汚れの酷さに気づいて止めた。

「マッカレルさん、修道院の見取り図の完成版はできましたか?」

「マッカレル、手記の解読の件だけどな……」

「マッカレルさん、最終報告書できました? まだなら手伝いますけど」

「は、はいはいはいはい!
 見取り図はもうできてますんで持っていってください!
 手記の解読はちょっと待ってください、報告書を優先で!
 最終報告書は未だに手付かずです! 手伝ってください!!」

 毎日このように目が回るように忙しい。
 しかし、それでも彼女の心は満たされていた。
 教会の思惑から外れてしまった事がではなく、自分の手で『真実』に辿り着けた事が。

 こんな充足感、リューンの温かい聖堂でぬくぬくと祈りを捧げるだけでは、絶対に手に入らない。
 嫌な事も、辛い事も、痛い事もあったけれど、グリグオリグ修道院の調査は彼女の人生を変えるまでに至る。

「マッカレルさん、こっちの羊皮紙は?
 最終報告書ってコレじゃないですよね?」

「あ、それは個人的なものです。
 ――ハァ。
 その手紙もいつになったら出せるのか……」

 ルトラは書きかけの手紙を、デスクの引き出しに押し込んだ。

「マッカレル、明日には調査団が出発するからな。
 午後の式典に参加しろよ?」

「あ、もうそんな日でしたっけ?」

「……当たり前だ。孤児院を訪問するのは悪い事とは言わんが、両立しろよ」

「うう、分かってますよ……
 しかし、あれもわたしの『責任』ですから」

「……お前、良い表情をするようになったじゃないか」

「え? そうですか?
 ――って、もう正午回っちゃってるじゃないですか!」

「まぁ、急げ。走れば間に合うぞ」

 うぎゃあ! とルトラはデスクの上を片付け始める。
 そしてあまりにも慌てていたせいで更に滅茶苦茶になってしまい、涙目で胸元の十字架を握り締めた。
 あの調査で破壊された十字架を新調したものだ。

「そ、それじゃ行ってきまぁーす!」

 片付けもそこそこに、ルトラは走り出した。
 身嗜みの方は割と最悪だが、遅刻するよりはマシだろう。

 嵐が去った後のような『史跡局』の一角は、再び緩やかな日常を過ごしていく。
 主不在のデスクの引き出しには、書きかけの手紙と歪んだ十字架が入っていた。



【あとがき】
今回はFuckin'S2002さんの「みえないともだち」です。
低レベル帯の名作長編シナリオで有名ですね。
個人的に大好物な『教会と吸血鬼』要素がどっしり入ってて大変好みですっ!
重厚ながらもスピーディな展開が素敵です。
あと、右クリックの解説文が面白いので細かくチェックすると一層楽しめます。

リプレイを書こうと決心した当初から、このシナリオは絶対やろう! と思っていた一作でした。
……実は最初「所要時間一時間以上で、こんな複雑に絡み合った話書けないわー」とか思っていたのが懐かしい。
実際、書き上げた瞬間はものすごく感動というか、……感無量でした。
大好きなシナリオだけに細かいところを勢いで乗り切った感がありますが、どうか読み取っていただけると幸いです。

地味ーに、本当に地味ですが、コヨーテに変化が訪れています。
実は前回からも片鱗は見せていたのですが、仲間を頼るようになっているんですよね。
仲間に対する『信頼』の表れです。
こういう細かい場面でパーティの絆を表現していきたいんですよ。

早朝に道標を見つけて『アレンケ村まで一刻(約三〇分)』だったのに、アレンケ村周辺に到着したのは夜半。
そりゃ叩き折りたくもなりますわな!

『×××』はどう記載するか悩んだ結果、原文そのままの形に。
差別用語を記載する場合、今後はこの形で行こうと思います。
なので、別のリプレイで『×××』が出たからといって決して今回の意味ではないのでご注意。
一応、その時その時で意味は載せていきますが。

『親父の頭はハゲ頭作戦』ですが、これはずっと前からやりたかったんです。
というか『発光石』を入手した当時から、ずっと使って見たかったんですよう。
しかし、セワードとのギミックバトルで『発光石』が『灯り』のキーコードに反応しなくて焦りました。
この場面はこれで決まりだな、と思って実際にやって見ると無反応……
仕方がないので、実際のプレイではランタンで明かりを灯しましたとさ。

後半の会話部分、一部会話がおかしいと思ったのでエディタで確認したところ、一部のスタートコンテントのコールが間違っているような?
実際どこからコールすればいいのか分からないので、リプレイ上では少し話の流れを変えています。
支障がない程度にほんの少し、ですが。

最後の選択ですが、どれを選んだのかは実際にプレイしてみて確かめてください。
一応、リプレイ上にヒントはおいてあります。
明確に『コレだ!』と分かるものじゃないですけどー……


☆今回の功労者☆
ルナ。【聖霊の盾】は聖北教会の誇るドーピング戦術の守りの要ですね(攻めの要は【祝福】)

報酬:
1000sp

購入:
【茨針】-1000sp→チコ
(武闘都市エラン)
【聖霊の盾】-1000sp→ルナ
(交易都市リューン)

銀貨袋の中身→3347sp


≪著作権情報≫
今回プレイしたシナリオ
『みえないともだち』(Fuckin'S2002様)
『武闘都市エラン』(飛魚様)
『交易都市リューン』(GroupAsk様)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基に周摩が製作したリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。
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周摩

Author:周摩
しがないリプレイ書きのブログです。

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